21話 ゴーレム育成開始
ゴーレムの身体をリアルタイムで操れる技術によるゴーレム育成が始まった。
私は手始めに、ゴーレムの身体でだだっ広い草原をランニングして回った。その結果……
「おおっ! なんか身体が軽くなって走りやすくなった気がする!」
次第に足が動くようになり、速度が目に見えて上昇していった。心なしか体重も減り、足がしっかりしてきているような気にさえなった。
(多分気のせいじゃない! と思う……)
全体的に動きやすくなったことで敏捷性も上がり、攻撃の手も速くなっていった。
(ここまで速くなれば、それなりの相手でも戦えるでしょ!)
ここで私は試しに、近くをうろつくゴーレムに戦闘を仕掛ける。私より少し大きな土製のゴーレムだ。
相手の大振りな攻撃を避け、隙だらけなゴーレムの身体に、走り回って鍛えた脚から繰り出すパワフルな蹴りをお見舞いした。
「!」
相手ゴーレムは一撃で砕けた。どうやら相手を仕留められたらしい。
土ゴーレムの残骸からマナが滲み出て、私の操るゴーレムの身体に吸収されていく。
(おぉ、なんか更に強くなったような気がする! 魔物ってこうやって強くなっていくんだ……)
私はこの調子で、その辺のゴーレムと相手して勝利を重ね、マナを吸収してゴーレムの能力を上昇させていった。
「結構強くなってきたかも!」
ある程度能力を上げた私は、更なる力の獲得の為に、そろそろ強敵相手に戦闘を仕掛けることにした。
周辺を下見して周り、簡単な作戦を立てたらいよいよ対戦相手の探索に入る。
(確かこの辺に大きなゴーレムが……あっ、いた!)
辺りを見て周っていた私のゴーレムの視線の先に、大きな木の下に居座る巨大なゴーレムを発見した。
見た目は岩で構成された、まるで大岩のようなゴーレム。巨大な両手は殴打に適した形状をしていて、まさにパワータイプのゴーレムといったところだ。
(あのゴーレム、弱いゴーレムしか相手にしないイジメっ子みたいな奴なんだよね……)
私がまだ弱かった頃、あのゴーレムは私のアイアンゴーレムを目掛けて突撃し、逃げ遅れた私のゴーレムを思い切り踏みつけてきた。
しかし、頑丈なアイアンゴーレムはその程度の攻撃には全く動じず、逆に巨大ゴーレムの足をへこませてしまった。
それ以降、あのゴーレムは私のゴーレムに一切関わってこなくなったのだった。
(今度はこっちから攻撃させてもらうからね!)
私は相手の注意を引く為に、その辺にいる小さなゴーレムを拾い上げて巨大ゴーレムに向かって投げつけた。
「…………」
ゴーレムはコツンと音を立ててぶつかった。が、巨大ゴーレムはびくともしないし反応すらしない。
(よーし、ならばお次は……)
私はその辺の地面のぬかるみから泥を掬い上げて丸め、巨大ゴーレムの目元らしき部分を目掛けて投擲した。
「!?」
目元に泥をぶつけられた巨大ゴーレムは身体を大きく揺らし、慌てて辺りを見回す。
「やったー! 命中!」
私はわざと大声を上げて飛び跳ね、大喜びするフリをする。
「やーいやーい! ここまでおいで〜! 私を踏んづけようとして返り討ちにあったヘンテコゴーレム〜!」
「……!」
私の挑発に反応したのか、巨大ゴーレムは大きな身体を起こして私のゴーレムを目掛けて歩き出した。
巨大ゴーレムが地面を踏み締める度に地面が大きく揺れる。
(パワフルだけど、足も動作も遅すぎて隙だらけ……!)
「こっちだよー! おいでー!」
私は相手を煽りながら逃走する。
対する巨大岩ゴーレムは私に追いつこうと、ドシンドシンと足音を立てて真っ直ぐ歩いてくる。
巨大ゴーレムは私を目掛けて時折拳を振り落とすが、私はギリギリのところで避ける。
「……!!」
攻撃をすんでのところで何度も避けられた巨大ゴーレムは、両手を握りしめてブンブンと振っている。無表情でも何となく分かる、あれはイライラしているやつだ。
「あはは! そんなのでよく私を倒そうとしたね〜!」
しばらく走っていると、遠くに大きな池が景色に現れた。
「…………」
巨大ゴーレムはその場で深くしゃがみ込んだ。
「……?」
ゴーレムが見せた新しい行動に、私はその場に停止して身を固めたその次の瞬間。
なんと巨大ゴーレムはとんでもない脚力で地面を蹴り、あの巨体ごと私の真ん前まで飛び込んできた。
「うわっ!」
巨大ゴーレムは私のアイアンゴーレムを片手でぶん殴り、池の方角に転がした。
「わととっ……!」
事前のガードでなんとか攻撃を防げた私は、転がったまま何とか体勢を立て直し、両足で踏ん張って池の手前で停止した。
私がギリギリで停止したその時、巨大ゴーレムは再び凄まじいジャンプを披露した。
巨大ゴーレムはいつの間にか私の前に立ち塞がり、大きな池の淵に立つ私を見下ろしている。
「いつの間に……!」
前方には巨大ゴーレム、背後には大きな池。
巨大ゴーレムは私を見下ろしながら徐に両手を組み、重そうな握り拳を天高く持ち上げた。
あの頑丈そうで巨大な拳に当たれば、私のゴーレムもタダでは済まないだろう。だが……
「甘いっ!」
巨大ゴーレムが組んだ両手を私目掛けて振り下ろすその瞬間、私は巨大ゴーレムの足元に向かって全力で駆け出した。
私が巨大ゴーレムの両足を素早く通り抜けると同時に、私が先程まで立っていた場所に巨大ゴーレムの凄まじい一撃が放たれた。
池の淵は凹み、巨大ゴーレムの身体は池の方に重心が傾く。
「今だっ!」
巨大ゴーレムが前のめりになった隙を私は見逃さなかった。
私が操るアイアンゴーレムは、巨大ゴーレムの背中辺りを目掛けて全力のドロップキックをお見舞いした。
鍛え上げた脚力により生み出された凄まじいキックは、傾きかけていた巨大ゴーレムを池へと後押しするには十分の威力があった。
「!?」
巨大ゴーレムはその場で大きくバランスを崩し、大きな池に頭から落下していったのだった。
「やった〜!」
巨大ゴーレムの下半身が池から飛び出しているが、もはや戦える状況ではない。足をジタバタさせる哀れなゴーレムに、私はトドメを刺すことにした。
「それーっ!」
私は脚に力を溜めると、その場で全力の跳躍をして巨大ゴーレムの丸い下半身を目掛けて全力のキックを繰り出した。
キックは池から飛び出した巨大ゴーレムの下半身に見事命中。巨大ゴーレムの身体は腹からひび割れていき、やがて粉々に砕け散ったのだった。
私はキックの勢いを利用して再び池のほとりに戻り、粉々に砕けた巨大ゴーレムを見守った。
「!」
しばらくして、割れた巨大ゴーレムから小さなゴーレムが飛び出した。小さなゴーレムは慌てて池の奥へと泳いで行き、やがて私の前から姿を消した。
「よし! 巨大ゴーレム撃破! 後はマナを回収するだけ……」
池の前でじっと佇んでいると、巨大ゴーレムが壊れた跡からお目当てのマナの塊が空中に飛び出し、私の操るアイアンゴーレムに触れた。
アイアンゴーレムは大量のマナをあっという間に吸収。すると、アイアンゴーレムの身体に唐突に変化が現れ始めた。
「あっ! 変化が始まった! この様子、引きで見れないかな……」
私がそう口にすると、画面が一気に引いて三人称視点に変化した。私が操っていたアイアンゴーレムの姿が視界に現れる。
アイアンゴーレムはミシミシと音を立てて膨らみ始めた。内側から新しい金属のボディが迫り出して手足が伸び、どんどん背が高くスタイリッシュな容姿に変化していく。
やがて成長が止まり、私の育てたゴーレムはまん丸の可愛い容姿から、全体的に背丈が伸びてシュッとした。
ウサギと人を合わせたようなスタイリッシュな、それでいてフルプレートアーマのようなデザインをした見事なフォルムに変化した。
「カッコいい〜!」
長い耳、細い腕、一番エネルギーを感じる大きな脚。私のゴーレムは中々カッコいい姿に進化したようだ。




