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20話 転生したらゴーレムでした体験

 太い胴体、やたら大きな足、光沢のある身体。


 マスコットのように愛嬌のありそうな金属質な身体を見て、私はようやく理解した。


「私……ゴーレムになってる!?」


 あまりにも突然の出来事に動揺し、私は大草原のど真ん中で大声を上げた。


「突然すぎるって! いくらなんでもこれは……あっ!」


 ここで私は、廊下でのルートの発言を唐突に思い出した。



『ゲームよりもメタバースが近いかもしれません』



 メタバース。つまりこの世界は、現在進行形で操作しているゴーレムを通して見た景色ということだろう。


「自分の手足を動かすようにゴーレム操作してるんだ……」

『その通りです』


 私の独り言に言葉が返ってきた。


「誰?」

『私です』


 声のした方角を向くとそこには、私より小柄で器用そうな手を持つ鉄製ゴーレムの姿が。


「……ルート?」

『部分的にそうです』


 曖昧な返事だ。


『ジギさんの言う通り、この景色はゴーレムと視覚を共有しているのです』

「このゴーレム、自分の手足のように動かせるんだけど……」

『ジギさんの指示をリアルタイムで反映しているからです。この技術さえあれば、自身の手足を動かすようにゴーレムを育成できます』


 手足を動かすように指示を出せるのなら、自分の経験を元に戦闘ができるだろう。


『ジギさん、とりあえずしゃがんで話をしましょう』

「えっ?」

『周囲にどのような相手がいるか分からない状況です。下手に目立っては、どんな凶暴ゴーレムがやって来るか……』

「あ、そうだね」


 ルートがしゃがんだのを見て、私も身を屈める。まだ力の無かった頃を思い出して、何だか懐かしい気持ちになった。


「もうゴーレム育成は始まってるんだね?」

『その通り。生まれたてのゴーレムはまだ未熟、そこそこ強いゴーレムにとって格好の的です』


 最初のうちは辺りに警戒しながら戦うのが基本となるだろう。


「今回は移動に適したゴーレム育成だったね……」

『とにかく駆け回り、反射神経を高めたりして、ゴーレムの速度を上げてみるのがいいかもしれません』

「駆け回るのかぁ……」


 今操作しているゴーレムは行動次第でも姿が変化していくらしい。もうゴーレムの育成は始まっていると言っても過言ではない。


『……とりあえず、この場には乱暴なゴーレムは居ないようです。試しに身体を動かしてみましょう』

「分かった!」


 私はその場で立ち上がると、手足を大きく動かして思い切り走り出した。しかし……


「重っ!」

『当然、その身体はアイアンゴーレムですから』


 アイアンゴーレムの体は思ったように動いてくれなかった。全身に重りをつけて走っているかのようだ。


「ぐうう……!」


 それでも私は必死に身体を動かし、草原を駆け回る。


「ルート、私以外の仲間もゴーレム育成始めてるの?」

『他の方はアシスタントゴーレムの指導の元、ゴーレム育成を開始しています』

「へぇ〜。でも、私のアシスタントゴーレムはさっきから何も言わないね」

『私と交代しました。アシスタントゴーレムより私が口を出した方がいいかと思いまして……』

「……まさか私、信用されてない?」

『ジギさんは放置しておくと本来の目的から外れてしまいそうなので……』


(図星……)


 ルートの言う通りだ。現に私は、速さとは関係の無いパワフルなゴーレムを作ろうとしていたのだから。



 パキッ!



 唐突に、私の足元で何かが割れる音がした。


「な、何……?」


 罠を踏んだかと焦り、そーっと足を持ち上げる。踏んだのは罠ではなかった。


「うわっ!?」


 私が踏み締めた地面に、身体が割れた小柄なゴーレムの姿が。どうやらランニング中に巻き込んでしまったようだ。


(な、なんか罪悪感……)


 私は何だか申し訳なく思い、小さなゴーレムを両手で掬い上げる。だが、そんな小さなゴーレムの割れた身体から、これまた小さなゴーレムが飛び出したのが見えた。


「?」


 粒サイズのゴーレムは慌てて両手から転がり落ち、穴を掘って地面に潜り込んで私の前から姿を消した。


「どっかいっちゃった……」

『このダンジョン内のゴーレムは基本的に不死身です。倒されても核は残り、どこかに身を潜めて再び地上に姿を現します』

「そんな話してたね……でもこれなら、ルートの作ったダンジョンから生まれた魔物だからって遠慮しなくても大丈夫そうだね!」


 私は拳を振り上げ、改めてゴーレム育成を再開したのだった。


 今はとりあえずこの壮大な草原を走り回り、走りに適したゴーレムになるよう念じることにしよう。

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