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13話 ビーハイブ城の後始末

「やったー! 大魔将の魔力核ゲット〜!」

「この核さえあれば、良質なダンジョンを作成できることでしょう」


 大魔将ビーハイブを討伐した後。私とルートは今現在、ビーハイブ城のバルコニーでビーハイブの討伐を喜んでいた。


「いやぁ、大魔将とか言うからもっと長引くかと思ったのに、こうもあっさり終わるなんて……」


 何気なく空を見上げれば、大地を埋め尽くしそうなほどに巨大なダンジョンゴーレムが見える。

 とんでもない光景だが、魔法が存在する世界だからこそあり得る景色なのだろう。


「さてと……ルート、これからどうする?」

「城に閉じ込めたビーハイブの部下からも力を奪い取り、彼らを全員地獄に連れて行きます」


 私が空からルートに視線を戻すと、両手を構えながら城内に目を向けるルートの姿が。一体、何をするつもりなのだろう。


「今度はビーハイブの部下かぁ……」

「ええ。城内にいるビーハイブの部下も全員、数えきれないほどの天使殺しに加担しているので……」

「つまり、ビーハイブと同じように魔力核を奪い取って、マルがしたように地獄に連行するってことだね」

「その通りです」


 私の言葉に返事をするルートは、構えた両手をわさわさと動かす。


「じゃあ私も手伝おっか? 魔物相手なら私も……あ、そうだ! 新しく作ったゴーレム投入してみる?」

「いえ、相手を傷付けず魔石……魔力核を引き抜きたいので、今回は私一人で向かいたいと思います」


 そう言うとルートは、目にも留まらぬ速さでバルコニーから城内へと飛び込んだ。


「速っ! ちょっと待って! どうやって戦うのか見せてよ!」


 私も慌てて駆け出し、バルコニーから城内へと移動した。


「あっ居た!」


 妙に禍々しい世界観を放つ城内を駆け抜け、すぐさまお目当てのルートを発見した。

 ルートの向かう先には、ドラゴニュートのような魔物の兵士が三体。彼らの装備の一部には、ほんの少し悪魔の素材が使用されているようだ。


「おわっ!? 悪魔!?」


 兵士が身構えるより先に、ルートが真っ先に動いた。


 ルートが兵士の間を縫うように通り過ぎると、兵士を守っていた魔神防具が全て外れ、兵士の体内にあった筈の魔力核が消えた。


「うぅっ……」

「がぁ……?」


 魔物共は何が起きたのかも分からず、そのまま床に倒れてしまった。


「うわっ!?」


 魔物は分からなかったようだが、私はこの目でしっかり見た。ルートが兵士から核を取り出す様を。


 ルートが兵士を通り過ぎる寸前、懐から洒落たナイフとフォークを取り出した。ルートはナイフとフォークを器用に使い、兵士の重装備を器用に解体していたのだ。

 食事風景と見間違えるほどに優雅に、かつ繊細な技術だった。


 相手の鎧を全て落としたルートは、私の目でも捉えきれない速さで魔物から魔力核を抽出。



 そしてフォークに乗せた宝石のような魔力核を流れるように口に運んで飲み込んだ。



「何してんの!?」


 魔力核は素材になるのに、何故この男は貴重な素材を食してしまったのだろうか。


「……あっ、いつもの癖でつい」

「癖とかそれ以前に、ルートがナイフとフォークで相手に攻撃するとこ、初めて見たんだけど……」


 それでもルートは気を取り直し、改めて魔物の解体作業を再開した。


「おっ? 何だアイツ……」

「料理人か……?」


 いつの間にかシェフの衣装に着替えたルートは、手にした調理器具を用いて兵士の解体をしていく。


「ギャア!?」

「何だぁ!?」


 ルートが通り過ぎた後の道には、謎の料理が並んでいた。


[魔鉄鋼パスタのボンゴレ〜魔力核添え]


[ミノタウロス革ステーキ]


[魔力核のコンポート]


 どうやらルートは、防具を解体して料理に作り替えているようだ。

 料理を見るに、一応彼は魔神素材を避けて調理をしている様子。調理されてはいるが魔力核も無事だ。


「妙な料理ばっか作ってる……ん?」


 私の背後から何者かが迫って来ている。


「あ、ゴーレムだ」


 ルートのゴーレムが巨大なワゴンを押しながら走っていた。


 ゴーレムは床に落ちている謎料理と魔物共を次から次へと回収していた。



「たっだいま〜! ……って何これ!?」


 大魔将ビーハイブを地獄に送り届けてきたマルが現場に帰って来た。


 床に並べられた謎料理、それらを魔物ごとワゴンに押し込んで運ぶゴーレム、明らかに事の元凶であるコック姿のルート……


「ねえジギ! この城内で何が起こってるの!? 」


 現場の惨事を目の当たりにしたマルは大声で叫ぶ。


「城内に沢山居た近衛兵は!?」

「えーっと……ルートが調理して回ってる……かな?」

「現場にいたジギですら分からない現象がこの場で起こってるの……!?」


 私も出来るだけ理解はしたかった。


(でもまあ、仕事はきっちりこなしてるから別にいっか……)


「ジギさん、マル様。終わりました」


 やがて、城内を全て掃除し終えたルートが戻ってきた。彼はいつの間にかいつものスーツ姿に戻っており、手には謎のスイッチが。


「お二人とも、外にお集まりください。楽しいものをお見せしましょう」

「この光景以上に愉快なものがあるの?」

「……マル、とりあえず外行こっか」


 ルートに促され、私とマルは速やかに外に脱出した。

 城からある程度離れたところで、私達は荒れた大地の上に着陸した。


「ジギさん、マル様、前方に見えるお城をご覧ください」

「?」


 私とマルはビーハイブの禍々しい城を見つめる。ルートの巨城と比べれば見劣りするものの、それでも見事な城であることに変わりはない。


「失礼します」


 ルートは断りを入れ、手に持っていたスイッチを軽く押した。すると、目の前のビーハイブ城が大きく揺れ、形が変形し始めた。


「ま、まさか……」


 城はみるみるうちに姿を変えていき、やがてドラゴンの姿をした巨大なゴーレムに変化した。


「ビーハイブの城がゴーレムに化けた……!」

「彼は私の街、ダンジョンゴーレムの上に飾ります」

「戦果として持ち帰る感じ?」


 何はともあれ、ダンジョンの素材は手に入った。ついでに城まで入手できた。


 ビーハイブから根こそぎ奪った結果、荒地からビーハイブの痕跡は完全に消滅したのだった。

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