第3話 冒険者ギルドの試験
「ま、待て! こ、こいつ! 糸使いだぞ!」
「は? 糸使い? 糸使いって……。あ、あの騎士隊長か!」
「そうだ! 騎士隊長マルディンだ!」
三人の男が突然焦り始めた。
「糸使いって呼ばれてるか知らんが、騎士隊長は合ってるぞ。元だがな。あっはっは」
「たたたた、大変失礼しました!」
三人は勢い良く頭を下げ、ロビーに入っていった。
「冒険者にも名前を知られてんのか。面倒だな」
もしかしたら、国外追放は好都合かもしれない。
騎士称号を剥奪された元騎士に居場所なんてないだろうし、噂話の格好の餌食だ。
「ふむ。国外追放をポジティブに捉えるべきだな」
俺は腕を組みながら受付へ向かう。
「ちょっと訪ねたいんだが、いいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
若い女性が対応してくれた。
「国外へ出るのに冒険者カードが使えると聞いたんだ。詳細を教えてもらえるかな?」
「はい、かしこまりました。冒険者のランクはAからEまであります。国境を超えるためにはCランク以上の冒険者カードが必要です」
「Cランクか。それはどうやって取るのかな?」
「試験を受けていただく必要があります」
「試験?」
「はい。まず共通試験を受けていただき、その結果に応じた討伐試験を受けていただきます。こちらが料金表です」
女性から書類を受け取り、目を通す。
◇◇◇
○共通試験 受験料 金貨一枚
筆記 六科目
体力 五種目
○討伐試験 受験料
Aランク 金貨二百枚
Bランク 金貨百枚
Cランク 金貨五十枚
Dランク 金貨二十枚
○合格基準
Aランク 共通九十点以上 + 討伐試験
Bランク 共通八十点以上 + 討伐試験
Cランク 共通七十点以上 + 討伐試験
Dランク 共通六十点以上 + 討伐試験
Eランク 共通五十点以上
◇◇◇
「えーと、まず金貨一枚で共通試験を受けて、その後に討伐試験か。Cランクは……金貨五十枚。ご、五十枚! たっか!」
「冒険者は資金力も必要ですし、国際的な信用力がある代わりに、高額に設定されてるんです」
「なるほどね。しかし金貨五十枚は高すぎるな……」
この街では金貨二枚もあれば一ヶ月暮らせる。
俺は今、金貨百枚持っているが、ここでこれほどの出費は痛い。
とはいえ、今後のことを考えると取得した方が良いだろう。
「試験はどうやって受けるのかな?」
「今日はちょうど試験日なので、この後に共通試験が始まります。筆記と体力試験です。試験結果によって討伐試験が受けられます。なお、討伐試験は一人でモンスターを討伐します」
「一人で? じゃあ時間がかかるってことかい?」
「そうですね。Cランクの討伐試験で一週間はかかると言われてます」
「そんなに? 困ったな。十日以内に国を出ないといけないんだ」
「そうでしたか。これまでの最速だと……、確か五日でCランクの討伐試験を終わらせた方がいらっしゃいました」
「五日か。ギリギリだな」
「ひとまず共通試験だけ受けてください。共通試験の結果は一ヶ月間有効ですから、討伐試験は別の支部で受験も可能です」
「そうか。じゃあそうしようかな」
俺は冒険者ギルドの共通試験を受けることにした。
もしCランクの獲得が間に合わない場合は、通常の手続きで国外へ出ればいい。
それにしても、試験なんて騎士団入団以来だ。
「まあ何とかなるか」