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【書籍発売中】追放騎士は冒険者に転職する 〜元騎士隊長のおっさん、実力隠して異国の田舎で自由気ままなスローライフを送りたい〜  作者: 犬斗
第八章 真夏の大冒険

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第268話 見つけに行こう15

 宝探しから帰還しても、俺とラミトワとシャルクナは、ティアーヌの長期休暇につき合うことにした。

 フェルリートやアリーシャ、ジルダやグレクたちも予定が合えば一緒に休暇を楽しんだ。


 釣りをしたり飛空船で景色を見に行ったりと、のんびり過ごす。

 おかげで、俺にとっても心と身体を休める良い機会になった。

 思いがけない休暇を与えてくれたティアーヌに感謝している。


「そろそろ到着だな」


 長期休暇終了を目前にして、俺はティアーヌたちを連れて、州都レイベールへ向かっている。

 移動は俺の飛空船翠玉の翼(ルーディア)で、操縦はラミトワだ。


「着陸するよ!」


 ラミトワが、翠玉の翼(ルーディア)をレイベール空港に着陸させた。

 停泊の申請はしているため、手続きはすぐに完了。


 娘たちと約束した通り、レストランを予約している。

 それもレイベール州で最高と呼び声高い高級レストランだ。

 さらに高級宿も押さえた。


 今回は散財だが、いつも世話になっているティアーヌにとって初めての長期休暇だ。

 金額は気にしない。

 こういう時こそ、思い切り金を使う。

 金なんてあとで稼げばいい。

 そう思っていたら、どこで噂を聞きつけたのか、あのウィルが俺に金貨を送ってきた。

 同封された手紙には、ティアーヌのために使うことと、ウィルの名前を出さないことが記されていた。


「あいつ、いい上司やってんじゃねーか。かっこいいぜ」


 今度ウィルに会ったら、飯を奢ろう。


 ――


 空港からレストランまでは、貸し切り馬車を用意した。

 今回は格式の高い店ということで、服装にも気を使う必要があるからだ。


 俺は黒いスーツを着用している。

 六人の娘たちは、社交界に出るかのように美しく着飾っていた。


 ティアーヌは深緑色、シャルクナは紺色のタイトなドレスだ。

 二人のドレスには大きくスリットが入っており、大人の魅力が溢れ出ている。

 当然美しいのだが、二人はスタイルのよさから、どちらかというと凛々しさが際立つ。

 ちなみに、スリットは戦闘になっても動きやすいという理由らしい。

 どんな時でも警戒を怠らない二人だった。


 ラミトワは貴族の男児が着るような半ズボンのスーツだ。

 白いスーツに、赤い蝶ネクタイというセンスがラミトワらしい。

 さすがはティルコアの彗星だ。


 今回はリーシュも誘っている。

 宝探しで糸巻き(ラフィール)が役に立ったお礼だ。

 リーシュは真紅のドレスに膝上の短いスカートという、最も若いのに最も色気のある服を選んでいる。

 普段の作業服とは大違いなのだが、こういう時だからこそ目一杯お洒落を楽しむそうだ。


 そして、フェルリートとアリーシャだ。


「マルディン、誘ってくれてありがとう」

「宝探しのお話もまた聞かせていただきたかったので、楽しみです」


 フェルリートは薄紅色のシンプルなドレスながら、スカートの裾のレースが可愛らしい。。

 フェルリートの魅力を最大限引き出していて、とても似合っている。


 アリーシャは黒色のロングドレスで、少しだけ胸元が見えるデザインだ。

 美しいが、おっさんとしては目のやり場に困ってしまう。


「うん、みんな似合ってるじゃないか。今日は遠慮せず、心ゆくまで楽しもう」


 レストランは個室を予約しており、大きなテーブルに七人で着席。

 不思議なことに、給仕たちは俺たちのことをまるで貴族のようにもてなしていた。

 有名な一流調理師による、最高級の食材を使った料理を堪能。

 信じられないほどの旨さに、俺はただただ感動した。


 フェルリートは緊張しながら、アリーシャは優雅に、ラミトワは自由に、リーシュは慣れた手つきで、シャルクナは上品に、そしてティアーヌは心から楽しそうに食事をしていた。


 俺の隣りに座るティアーヌが、葡萄酒を口にする。

 ほのかに頬が紅い。

 ティアーヌはあまり酒が強くない。

 酔ったのだろう。


「マルディンさん、今回は本当にありがとうございました。初めての長期休暇はとても楽しかったです」

「そりゃよかったよ。ところで、ティアーヌ。やりたいことは見つかったか?」

「ふふふ、どうでしょうねえ」


 俺の顔を見つめながら、笑みを浮かべている。


「このままずっと、マルディンさんと……」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ……。私も絵画をやってみようと思います。ですから、今度また景色のいい場所へ連れていってください」

「お、いいぞ。趣味を持つことはいいことだ。海でも山でも好きなところへ行こうぜ」

「やったー!」


 俺はグラスを掲げ、ティアーヌと乾杯した。


「はい! 私も行く!」

「もちろん私も行きますよ」

「操縦は私だ!」

「整備は任せてください!」

「私は部下ですから、どこへでもお供します」


 娘たちがグラスを掲げた。

 高級店なのに、ギルドの食堂のようになってしまったが、みんな楽しそうで何よりだ。


「お前たち、今日は遠慮しなくていいぞ」

「今日『も』だ! 私はおっさんに一度も遠慮をしたことがない!」


 ラミトワが立ち上がり、両手を腰に当て胸を張る。


「お前は少し遠慮しろ」

「しない!」

「まあいい、もう好きに飲め。この後は宿に泊まるしな。あっはっは」

「「「あっはっは」」」


 俺の笑い方を真似する娘たち。

 それぞれ好きなように美酒に酔いしれた。

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