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【書籍発売中】追放騎士は冒険者に転職する 〜元騎士隊長のおっさん、実力隠して異国の田舎で自由気ままなスローライフを送りたい〜  作者: 犬斗
第八章 真夏の大冒険

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第261話 見つけに行こう8

 飛空船に戻り、まずは風呂に入った。

 シャルクナ、ティアーヌ、ラミトワ、俺の順番だ。

 先に風呂に入ったシャルクナとティアーヌが、夕食の準備を担当してくれた。


 俺とラミトワは地図を取り出し、岬の入口を記して洞窟内の対策を練る。

 一度洞窟に入れば、攻略するまで飛空船には戻らない。

 必要な装備と、想定する滞在日数よりも多めの保存食を用意した。


 そして、食堂に集まり全員で夕食だ。

 早めの時間ということで、葡萄酒も開けた。

 いつものことだが、こんな秘境でも飛空船内では快適に過ごすことができる。


 隣に座るラミトワが、葡萄酒を飲みながら俺の顔を見上げていた。


「ねえ、マルディン。私がAランクの運び屋試験に受かったら、もっとたくさんクエストに行こうよ」

「受かったらな」

「受かるもん! せっかくこんなにいい飛空船を持ってるんだから、色んな場所に行こうよ」

「確かにそうだな。翠玉の翼(ルーディア)をもっと使ってやらないとな」

「私、行きたい場所がたくさんあるんだ! 私が翠玉の翼(ルーディア)を操縦するからさ! フェルリートも、アリーシャも、レイリアおばさんも、リーシュも連れてみんなで出かけよう!」


 ラミトワが満面の笑みを浮かべながら、俺に向かってグラスを掲げる。

 俺は「はいはい」と溜め息混じりに、ラミトワと乾杯した。


 ラミトワの言葉は一理ある。

 正直なところ、俺は飛空船を活用しきれていない。

 ここ最近は、夜哭の岬(カルネリオ)との因縁に目が向きすぎていたようだ。


「そしたら、私もついて行こうかなあ」


 ティアーヌが葡萄酒のグラスを持ち、顔の正面で小さく揺らすように回転させていた。

 グラスを回転させることによって、葡萄酒が空気に触れて香りが広がる。

 ティアーヌはグラス内の葡萄酒の動きを、両目を寄せて眺めていた。


「おいおい、お前は調査機関(シグ・ファイブ)支部長だろ?」

「そうなんですけど、こういう生活も楽しいなって……」

「お? やりたいことが見つかったか?」

「うーん、これがやりたいことかどうかはまだ分かりませんが、さっきラミトワちゃんが言っていたように、人生を楽しみたいなあって思うんです」


 ティアーヌの頬が仄かに紅潮している。

 葡萄酒に酔ったのだろうか。


「そうだよ! だからさ、ティアーヌさんもシャルクナさんも一緒に行こう!」


 ラミトワが立ち上がり、ティアーヌとシャルクナの間に入って二人の肩に手を回した。


「ふふ、いいですねー」

「私もいいのですか?」

「もちろんだよ!」


 この凄腕の諜報員の二人に気兼ねなく触れることができるのは、ラミトワしかいないだろう。

 そこら辺の男がやったら、今頃は腕を切り落とされているはずだ。


「おいおい、この飛空船はそんなに部屋数ねーぞ」

「うん。だからマルディンは船長室なんて立派な部屋じゃなくて、一階の倉庫で寝てね」

「お前が倉庫だっつーの。テントは貸してやるよ」

「なんでだよ!」


 俺の飛空船は個人所有用に改造しているため、個室を四部屋完備している。

 相部屋にすれば、八人でも乗船は可能だ。

 それに個室は広いから、一部屋を二部屋に分けてもいい。

 ラルシュ工業に持ち込んで、改造してもらうこともできるはずだ。


「まあでも、みんなで旅行も悪くないな」

「そうでしょ! そうでしょ! 行こうよ!」


 ラミトワが大騒ぎしながら葡萄酒を飲み干した。

 俺は葡萄酒の瓶を取り、ラミトワのグラスに注ぐ。

 そして、そのままティアーヌのグラスにも葡萄酒を注いだ。


「ティアーヌ、旅行と相性がいい趣味を探してみたらどうだ?」

「旅行と相性? 例えば?」

「んー、定番だと郷土料理巡りや工芸品集めとかだな」

「なるほど。確かにそうですね。各地の美味しい料理は食べてみたいですね」


 今回は宝探しだが、ティアーヌのやりたいことを探す目的もある。

 そもそもティアーヌは、旅行自体好きだと言っていた。


「マルディンさん、なんだか楽しいですね」

「そうだな。いい趣味が見つかるといいな」

「はい!」


 その後もどこへ行きたいかなど、旅の話で盛り上がった。


「さあ、そろそろ寝るか」


 片付けを終え、娘たちは二階の個室へ、俺は三階の船長室へ向かった。


 ――


 翌朝、洞窟の入口へ向かうと、擬岩蟲(ビボッタ)の死骸が荒らされており、外殻が散乱していた。

 どうやら内臓は食い尽くされたようだ。


「これは……」

「鳥たちが漁ったみたいだね。鳥類モンスターも来たみたいだよ」

「なるほどね」


 ラミトワが落ちていた羽を拾い上げた。

 羽の長さは五十セデルトはある。

 かなり大きなモンスターの羽だろう。


 俺は頭上に視線を向けた。

 生い茂る葉は空を覆い隠し、その隙間から強烈な日光が差し込む。

 

「僅かな隙間から、この獲物を発見したのか」

「鳥類モンスターは視力が良いというからね。アリーシャがいれば、この羽からモンスターの種類も分かるんだけどなあ」

「まあ、これから洞窟へ入るから、鳥類モンスターに警戒は不要だろう」

「そうだね。それよりも……」

「なんだ?」

「湿った洞窟内は、節足型モンスターが多いと思うよ」

「嘘だろ……」

「現に入口は擬岩蟲(ビボッタ)が塞いでいたわけだしね」

「そ、そうだよな……」


 あの気持ち悪い節足型が洞窟内にひしめいていると考えると、中に入ることを躊躇してしまう。

 そもそも北国出身の俺は、節足型モンスターを見る機会は少なかった。

 全くいないわけではないが、極寒の地にはほとんど生息しない。


 俺はランプに火を灯し、大きく息を吸った。


「さあ……、行くぞ」


 呟きながら洞窟の入口を見上げる。


「なに? マルディン、ビビってるの? 飛空船に帰ってもいいよ」

「マルディンさん、無理しないでくださいね」

「マルディン様のことは私がお守りします。ご安心ください」


 ラミトワとティアーヌ、シャルクナまでが俺を素通りして、躊躇なく洞窟に入っていった。


「う、うるせーな!」


 俺も覚悟を決めて、洞窟内へ足を踏み入れていく。

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