第13話 サルベージと護衛クエスト2
冒険者ギルドに到着。
クエストボードを眺めていると、珍しいクエストを発見した。
「至急案件? 商人の護衛?」
「ああ、それな。さっき来たばかりのクエストなんだ」
背後から声が聞こえた。
ギルド職員のパルマだ。
「パルマか。おはよう」
「おはようマルディン。そのクエストはCランクだ。どうだ、やってみるか?」
「ふーん、隣街イレヴスまで隊商の警護ね」
「そうだ。商人は自前の警備隊を持っているが、対モンスター用に冒険者を一人護衛につけたいそうだ」
「なるほどね。イレヴスなら片道一日、往復で二日か」
早朝に出発すれば、夕方にはイレヴスに到着する。
整備された街道を進むため、日中にモンスターが出ることはないはずだ。
それでも対モンスターの護衛が必要ということは、高価な積み荷なのだろう。
「なあ、この隊商の積荷は知ってるか?」
「ん? 積荷? そ、そりゃあ、この地の特産物だろうよ」
「鮮魚を運ぶのは空路だ。魚以外の特産物は塩だが、塩にわざわざ冒険者の護衛をつける必要はない。で、その他に特産物なんてあったか?」
「ちっ。お前、もしかして積荷を知ってるのか?」
「あっはっは、サルベージだろ?」
「どこで知るんだよ! マジで地獄耳だな!」
情報は大切だ。
戦場では情報一つで戦局が左右される。
こんな田舎の冒険者ですら、どこでどう繋がるか分からない。
だから俺は普段から町へ繰り出し、町人とコミュニケーションをとっている。
「……まったく。マルディンの言う通りサルベージに関係する。依頼主は引き揚げ品の購入権利を落札した商人の一人。購入できた量はそんなに多くないから、陸路で商売しながら進むんだとよ」
「そうか。んじゃ、久々に護衛すっかな」
「このあとに商人と面談してもらうぞ」
「ああ、いいぞ」
「明日にはサルベージが終わるはずだ。で、明後日に引き揚げ品に値段がついて運搬や梱包作業だから、出発は三日後だな」
「了解」
「あ、そうだ。大方の引き揚げ品はすでに商人たちが購入権利を買ってるが、なんせまだ調査中だ。オークションも開かれるぞ」
「オークションか」
「マルディンは初めてだろう? 数年に一度、この町ではこういったサルベージが行われる。引き揚げ品のオークションはマジで面白いぞ。冒険者カードがあれば入場できる。明後日開催されるはずだ。行ってみろよ」
「そうだな。覗いてみるよ」
しばらくすると、依頼主の商人がギルドに来た。
護衛クエストは依頼主と面談する必要がある。
依頼主にとっても命を預けることになるため、面談によって判断するのが通例だ。
俺たちは面談用の個室へ移動。
「隊商を率いている商人のザール・マハールです」
「Cランク冒険者のマルディン・ルトレーゼです」
ザールは四十歳くらいの男性だ。
痩せ型で褐色の肌、身なりは良く頭にターバンを巻いている。
「イレヴスまでモンスター襲撃の護衛をお願いしたいのですが」
「はい。伺ってます」
「失礼ですが、マルディンさんの護衛経験は?」
「Cランクの護衛クエストを数回。全て問題なくクエスト完了しており、依頼主には満足いただいてます」
「そうですか。討伐スコアを見せていただいても?」
「ええ、いいですよ」
俺は冒険者カードに付随している討伐スコアを見せた。
討伐スコアには、これまで狩猟したモンスターの全履歴が記載されている。
「それほど多くないようですね」
「そうですね。冒険者になってまだ一年なんでね」
「なるほど。それでこのスコアなら立派です。分かりました。護衛をお願いします」
面談に同席していたパルマが一枚の書類を取り出した。
「では契約を進めます。こちらがクエスト依頼書です」
◇◇◇
クエスト依頼書
難度 Cランク
種類 【至急】護衛
対象 隊商
内容 ティルコアからイレヴスまでの護衛
報酬 銀貨五枚
期限 イレヴス到着まで
編成 Cランク一人
特記 詳細は契約書記載 冒険者税徴収済み
◇◇◇
依頼書に受注のサインをした。
ザールも依頼主の欄にサインをする。
「三日後の早朝に出発する予定です。当日の夕方にはイレヴスに到着するでしょう」
「分かりました。現地で解散ということでよろしいですか?」
「構いませんが、イレヴスの宿を押さえます。宿泊して帰還されてはいかがですかな? もちろん、宿泊費用はこちらでお支払いしますよ」
「いいのですか? ではお言葉に甘えてそうさせていただきます」
ザールと握手を交わし、正式にクエストを受注した。