礼二の場合 その2
さすがに寄ってきたよ
目覚めた時に彼女は、窓枠に座り下町の喧騒を眺めていた。
「お、すずきー、起きるのおっせいな」
そのしぐさといい、話し方といい、若いころの奴にそっくりだった。
「まだ、ギターは持っているんだ?」
彼女?が笑う。
ギタースタンドには、あの頃使っていたモーリスが弦を錆びらせることも無く、南向きの窓の脇に鎮座していた。
「ああ、たまには弾いているよ。隣の奴に怒鳴られない程度にはな」
俺は、そう言って笑った。
って言うか笑うしかなかった、安アパートの窓に座ったヤツの前で出来もしない夢を語った朝を思い出していたから、
「まだ、コネは残っているんだよな?」
彼女は知っているぞとばかりに微笑んだ。
確かにデビュー前、それこそ俺はデビュー自体を辞退したわけだが、かなり世話になった担当者が何と今ではレコード会社の社長をしているらしい。
いつも金欠な俺らに、いろいろとメシの方面で便宜を図ってくれてたっけ。
「口説いて撃沈したって、パパは笑っていたけど」
違う。勘違いして撃沈したのは、君のパパだけじゃないんだ。
「で?」
わかっている言葉、それを俺は尋ねる。
「阿久津の娘として、デビューさせて。不運の歌姫でも、父の朋友に育てられた原石でも何でもいいから、売れたいのわたし」
彼女の眼差しはブレることなく、俺を射抜く、バンドに誘ってきた日のあいつのようだ。
「悪いけど、俺には自信はない」
「へえー、たった半年の在籍で、一生食べていける著作権を持っているはずの男がそれを言うか~?」
「デビューに付き合えなかったお詫びに、すべての楽曲はおまえの作品にしたはずだが?」
そりゃさ、子育てで精いっぱいの頃は、あの歌の印税の数パーセントでも入ってきていたらって考えなかったわけも無い…
「お前は作る才能が有る。俺は歌う才能が有る」
確かにあいつの表現力は凄かった。
男の俺が惚れてしまうほどに…
可笑しいな、あの頃言えなかったことを言ってみるのも一興かな…
「俺はお前の居×所とg¥¥¥¥、好きすぎてm、あの頃一緒に居たら駄目だったんだ」
まじい、嚙みまくりだ。
「知ってたし知ってる。だってパパも、あんたのこと好き過ぎて、いつもあいつだったらなんて言うから、ママだってさ、もう諦めるよ。この人たちの世界には入れないって」
かれいhgpつl




