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時を駆ける娘  作者: 来栖 傳
2/2

礼二の場合

エピソード2は、長めです。

何なら、これだけで一作出来そうな気がする脳内環境。

仕事してるじゃないですか~

パソコンの前で見積もりとか入力しているその時に、頭のどこかでっていうかバックグラウンドで常に、何かの創作がされているのです。毎日毎日。

その中で、記憶に残っているものをアップしてみます。

ヤツの葬儀に参列して、東京に戻った。公園の隣のワンルーム。これが我が家だ。

仙台で購入したマンションは妻の持ち物のようになっているし、娘たちも独立して気ままなものだ。


部屋の前になぜか若い娘が立っていた。

俺を見て、笑う顔に既視感が有った。

「おじさん、久しぶり」

彼女が声をかけてくる。ちなみに面識は無い…はず。

「阿久津の娘です」


て、言うか、さっきの葬式の本人の娘か??


「あれ?あやちゃんだっけ?君はママと一緒に暮らしていると聞いていたけど?」

ほとんど交流の無くなった友の家庭事情なんて、十数年前からアップデートされていない。

名前は、たしか合っているはずだ。何たって、俺がアドバイスしたんだから。

しかし、彩佳だったか?綾子だったか?彩芽だったかは記憶に残っていない…


「あ、やっぱ、おじさんがつけてくれたのね、私の名前。ママがあの人が思いつくはずがないって、いつも言っていたから、絶対に親友のおじさんがつけてくれたと信じていたわ」

彼女は屈託ない笑顔で話すが、そもそも葬式で見かけた記憶は無いし、それは複雑な事情もあるだろうから仕方ないこととして、父親の葬儀のその日に疎遠であった父の友人宅に訪れる意味が分からない。

「あ、いや、それはそれとして、本日はどうしたのかな?」



彼女は、恥ずかしそうに、足元のキャリーケースを見て言った。

「うん。わたし、天涯孤独になったから。パパの大親友を頼ろうと思って来ました」





「え?お母さんも…それは…」

「うん。なんか、アメリカとかメキシコとかの人と一緒になって、渡米してしまったの」


あ、存命なのね…そしてあやちゃん。渡米と言うなら、アメリカ国、一択だよ。

「いやいや、何をどう聞いているか、わからないけど、君のパパとつるんでいたのは10年以上も前だし、見ての通り君を受け入れれるような環境におじさんは居ていないんだ。申し訳ないけど…」

「うるさいよ、すずきーい」

「え?」


彼女が俺の言葉を遮ったのは、死んだ阿久津、奴の口調そのものだった。

「おまえ、あいかわず、ダサいことして生きてるんだな」

声域まで低くなり、彼女は半眼となって続ける。

「俺が、この俺様が娘の身体を依り代に復活してること、まだ気が付かないのか?」


その発想、それこそが阿久津のものだ。奴はヤバイことやらかすたびに、「死んでも誰かに乗り移って、すずきーの前に逃げてくるから、おまえ、その時は助けろな」なんて、ファンタジー小説みたいなことを言っていたっけ。まさか?


「久しぶりだな、すずきーの。貸しはいっぱいあるはずだから、しばらく世話になるぜ」


「うるせーよ。貸した覚えは有るけど、おめーに借りた恩はねーよ」

俺は自然にというか、自身から湧きあがる怒りに昔のように答えてしまう。

「だいたい、何だよ勝手に死んだりして。まだ、死ぬような…」


何だ?涙か?

声も出せなくなっていた。

「悪いな、勝手にリセットしてしまって。何か飽きたんだよ、売れない元アイドルってやつに」

彼女?は、嗚咽を続ける俺に自然に近づいては、背中を撫でながら言う。

本当にヤツのような、しぐさだ。


「でもな、貸しは有るんだな。すずきーの、お前が居ないから、俺、駄目になったのは、お前も知っているだろ。何で、あのタイミングで離れていったのかな~。夢だったメジャーデビューが決まったって時に」

背を撫でる、彼女?の手に、重さが加えられた。

ポンポンと叩いてみたりもする。

これは…


「わっかるだろ。すずきー。俺の頂点はデビューアルバムで後はじり貧だったって。それはそれは、1stアルバムは完成度高かったよな~。何たって、すずきーの、お前がアドバイスした曲ばかりだったものな~」

少女のまなざしに圧が加わった気がした。

「一発屋と言われながらも、その一作目のおかげで十何年って、あの世界でブイブイ言わせてもらえたんだから恨みはないけどな。何で、その後も手伝ってくれなかったん?あ?サラリーマンになって、嫁さんもらって、出来の悪い娘たち育てるの、そんなに楽しかったん?」


これマジで阿久津節じゃん。

学生時代から、口喧嘩になれば、誰も勝てなかったヤツの追い込み方…


「本当に、、お前なのか?」

「そうなのどうでも良いから、まずは泊まらせろ。ウチの嫁も娘も経済観念ゼロで、手持ち資金ではホテルに一泊も出来ないんだ」

何か、駄目なヤツと駄目な女が結婚すると、娘さんも大変なんだな…

あ、ウチと同じか…


そんなこんなで、自称親友の蘇りが、同居人となった。

偶然にも…いや、大谷翔平のMVPは、本当、何の関連も無かったな…

死んだ阿久津淳:元アイドル。一作目の著作権で、なかなかの暮らしをしていたはず。

あやちゃん:両親は離婚。母親は真実の愛をまた見つけて渡米。通帳を残して、ネグレクト。

すずきー:元BANDメンバー。メジャーデビュー前に離脱。その理由は…


ところで知り合いのお嬢様を家に泊めることは、コンプライアンス的にどうなんでしょ。

誓約書でも貰わないと、社会的に殺される気がします。

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