第八話 作戦開始
タクシーの中、助手席に座る白久は言う。
「魔法特別課は、専用タクシーまであるんですね。杉並さん。」
桐谷は、微妙な顔で言う。
「まぁ、そうだね。それより、後ろ、狭いんだけど。」
「仕方ねぇだろ。男三人なんだ。」
瑞人は、外を見ながら言う。
そんな中、陸が口を開いた。
「そういえば、なぜ俺がこのSランクとS-ランクの少数精鋭の隊に配置されたんですか?」
それを聞き、桐谷は微笑みながら言う。
「まぁそれは、着いてのお楽しみだよ。」
***
-午前9時34分-
白久一行現地着。
「な、なに……これ。」
白久の視界に映るのは、大量のCランク程の悪魔だ。町中にいる。
(人が見当たらない、もうみんな非難したのかな。)
白久がそんなことを考えていると、陸はその光景を見て言う。
「ああ、なるほど。俺が連れてこられたのはこういうこと。」
それを聞き、桐谷は言う。
「そう、陸君のその魔法で、その辺の雑魚は始末しておいて。」
「わかりましたよ。」
陸は一つため息をつくと、うまく動かすことのできない左手はポケットに入れ、右手で連射式のハンドガンを撃ち始める。
その弾丸は、直線ではなく、多彩な方向に軌道を曲げ、視界内の悪魔たちを粉砕していく。
それを見ていた白久は首を傾げる。
「そういえば、陸の魔法って?」
それを聞いた、桐谷は「ここは彼に任せて走るよ。」そう言って、白久、瑞人と共に廃ビルに向けて走り出したと共にこう言う。
「陸君の魔法はね、視界内の十四か所まで同時に気体を半径3㎝の大きさの反射するフィールドに変えることができる魔法さ。知らなかったのかい?」
「だから弾丸の軌道を変えてたんですね。」
白久はそう言う。
***
そうして走ること十分。
「あれがビルか?」
瑞人がそう言うと共に、白久と桐谷は廃ビルを視界にとらえる。
「そうだね。」
廃ビルを確認した桐谷がそう言った。
その瞬間。
ドーーン
そんな低い音と共に、あまりの暴風に一行は立ち止まり、顔を下げる。
「なんだ?」
桐谷がそう言い、顔を上げると、そこには青く肩までの髪の、身長が割と高い桐谷と同じくらいの背の女性がいた。
暴風は止み、顔を上げた白久は言う。
「もしかして、魔女?!」
それを聞いた青髪の彼女は言う。
「よくお分かりですね、そうですとも。わたくしは、5魔女同盟、怠惰の魔女、ルイですの。」
とその瞬間。
桐谷は既にルイの背後に、瑞人は既にルイの首に二本のまっすぐな刀の刃を向け今にも掻き切ろうとしている。
え?
白久がそんなことを言う間もなく、桐谷の蹴りと瑞人の刃は今にもルイの体に届く。
その時。
「無粋な!」
ルイがそう言ったと同時に、先程の強風が巻き起こる。
が。
桐谷、瑞人の攻撃は止まらず、ルイの攻撃を受けた刃曲がり、ルイの右肩をそぎ落とし、その後すぐに桐谷の蹴りを受けたルイは、白久から見て左側の建物のコンクリートでできた外壁に打ち付けられた。
~~~
一方、章一行は、章の船頭に従うように動いていた。
「Bランク、お前らはその辺の雑魚の相手をしろ! Aランク魔法使いは俺に続け!」
章のその声を聞き、Bランク魔法使いは章と共に走るのをやめ、散り、その辺の悪魔の相手をし始める。
それを見た章は走りながらも言う。
「よし、次はAランクだ。Aランクには……。」
章がそう言ったその瞬間。
身長172㎝の章の目の前には、黄色の長い髪を揺らし、額に円形の赤い跡がある身長150㎝ほどの無表情な女の子がいた。
章はそれを目にし、瞬時に5歩ほどうしろに下がると指示を出す。
「Aランク、お前たちには、俺が戦闘をしたときの町への被害を抑えてもらう。くれぐれも加勢はするな。死ぬぞ。」
それと共に章はこぶしを突き出した。
その時、彼の左こぶしからは魔力を実体化した太いビームのようなものが出る。
そのビームは女の子へと向かう。
しかし、女の子はそれを瞬時にして右へかわすと、ひと時で章へと近づく。しかし、それを視界にとらえた章は笑みを浮かべながらも右手で腰に携えていた短剣を取り、それを彼女に振る。
彼女はそれを炎をまとわせた右手で払う。
その時、章はその短剣の刃の向きを彼女の腕を斬るような向きにし、振った。
それと同時に、彼女の右手は地面へ落ちた。
すると、彼女は4mほど後ろに下がり、距離を取るとこうつぶやく。
「なぜ腕が……? 普通の剣なら、私の腕に当たった時点で溶けて蒸発していくのに……。」
それを聞いた章は笑みを崩さずに言う。
「それはすごいな! だが、この剣はその程度じゃ溶けないさ。この剣の名は『神官』。」
それを聞いた彼女は、少しの驚きの表情を見せた。
それを見て、章は話を続ける。
「その表情からして、君も知っているようだね。これはSランク魔法具『神官』。あらゆる魔法、魔法具の術式、契約をすべて無効化できる、言わばこの世界では珍しい、反魔法具だよ!」
「なるほど……。」
彼女はそう言いながらも、当たり前のように右手を再生させる。
それを見た章は言う。
「やはり、お前は魔女か。」
彼女はそれを聞いたか聞かぬかはわからないが、
「まぁ、今回はいい。少し分が悪い。」
そう言って消えていった。
(気配を感じない。逃げるのは早いな。)
章はそう思いつつも、先へ進み始めた。
~~~
一方透真一行は現在交戦に至っている。
「くそっ! 現れて数秒で俺以外は全滅か……。その上俺も左肩が外れて動かねぇ。いつもみたいにフワフワしてらんねーな。」
彼はそう言って右足を踏み出す。
するとそこからは氷が発生し、その氷はあたりを巻き込みながらも敵へと向かっていく。
その向かっていく先にいるのは真っ黒な髪を一つに結び、その髪は腰のあたりまで伸びていて、真っ黒な服を着ている、身長170㎝程度に見える女性だった。
彼女は言う。
「このアキヌをなめるな!」
その瞬間、アキヌへと向かっていたその氷はすべて弾け飛び、さらには周りのビルにまでひびが入り、道路のコンクリートはことごとく割れ、さらには透真の体は10mほど吹き飛ばされる。
氷で足を固定し、10mの時点で止まった透真は氷を溶かし、今度は氷で槍を作り、それを持ち、アキヌに投げる。
しかし、アキヌはそれをもろともせずに払うと、言う。
「私こそが、5魔女同盟最強、憤怒の魔女だ! 貴様を殺し、私の強さを証明してやろう!」
それを聞き、透真は少し呆れた風を装い言う。
「お前、別に最強じゃないだろ? 強欲の魔女が最強なんじゃないの?」
「なに?!」
アキヌはさらに怒りをあらわにする。
それを見た透真はさらに追い打ちをかけるようにこう言う。
「まぁ、そもそも俺が最強だから。」
その瞬間。
「貴様ァ! なめてくれるなよ!!!」
アキヌのその声と共に、あたりのビルは透真の方へと倒れる。
が。透真はそれを氷で止め、こう言った。
「奥義・氷剣江」
その瞬間、透真とアキヌの周辺にはたくさんの氷でできた剣が生成される。
透真はそのうちの一つを持つと、走りアキヌに近づき、その剣を振り下ろす。
しかし、アキヌはそれを難なく破壊し、透真に蹴りを入れ、吹き飛ばし、さらに電柱にあたった透真を殴る。
電柱は壊れ、透真の体は後方へと吹き飛ぶ。
「こりゃまずいな……。」
透真は呟いた。
~~~
「よし、先に行くんだ、白久君。そして瑞人君。」
桐谷はそう言った。
そんな桐谷の視界には、斬られた腕は完治し、余裕の表情すら浮かべるルイがそこにはいた。
桐谷のその言葉を聞いた瑞人は言う。
「んじゃ、いくぞ宵街。」
「でも、杉並さんが……。」
そう言って迷う白久に桐谷は言う。
「僕なら何ら問題はないさ。それよりも、この作戦は君が『聖界』に触れない限り死傷者が出続けるんだ。君は瑞人君と共に行くんだ。」
白久はそれを聞き、迷ったうえでこう結論を付けた。
「わかりました……。生きてくださいよ?」
「ああ、もちろんだよ。」
桐谷は言った。
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