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第四話 暴食の悪魔

「ここだな。」

陸は言う。

「え? 原宿じゃん。人多いのになんでこんなところに……。」

白久が言うと、みつきは歩き始めながらこう言った。

「いや、むしろこういう人の多いところの方が悪い魔力はたまりやすいからね。それで、今回の任務は?」

みつきは陸の方を見る。

陸はその視線に気が付いたのか、視線を少し逸らしながらも言う。

「ああ、今回の任務は、Bランク相当の悪魔4体の討伐。」

「ひやぁ。重いね。」

「まぁ、敵が群れてない限りは問題はないだろう。」


そんな二人の会話について行けない白久は、何とか会話に混ざろうと、疑問を探しそして言う。

「そういえば、悪魔ってどこにいるの?」

「任務の情報は原宿周辺。それだけだ。つまりこっから俺達で探すんだよ。」

めんどくせ。

陸はそう続けた。


とそんな雑談をしていたその瞬間。

辺りは一気に暗闇に包まれた。


「な、なに?!」

白久は足を止め辺りを見回す。

その目には、半球状に真っ黒な何かが作られていて、それが原宿一体と言ってもいいほどの地域を包み込んでいるのだ。


「け、結界?! だと?!」

それを見た陸は自分の目を疑うかのようにこすり、上空や辺りなどを見回した。

そして少し間を開けて、確信をもってもう一度こう言った。

「やっぱり、これは結界だ。固有結界ではないとはいえ、こいつはBランクなんかが作り出せる大きさの代物じゃねー!」

「ってことは……大きさからしてSランクよね?! 任務の情報と違う!」

焦りだす二人に、唖然とする白久は尋ねる。

「結界? なに?! どういう事?!」

それを聞いたみつきは、焦りつつ早口で説明する。

「結界っていうのはね、魔力を消費すれば技術さえあれば誰でも作り出せるもので、結界内から結界外、結界外から結界内への干渉を遮断できるものなの。」

状況を把握し、自分を落ち着かせる陸は、深呼吸をしながらもみつきの説明に

「まぁ要は、逃げ道を塞がれた。」

と付け足した。

それを耳にし、やっと事の重大さに気が付いたのか、ここにきてやっと白久は焦りだす。

「ってことは大変じゃん!?」

そんな焦る白久をよそに陸は言う。

「今ここにいんのは、Bランク、Aランク、S-ランク。そして敵はおそらくSランク相当。宵街の戦闘技術にもよるが、まぁまともにいけば、よくても全滅がおちだろうな……。」

そしてチッっと舌打ちをすると小さな声で呟いた。

「これは、市民守るとか、そんななりふり構ってらんないぞ。」


それを聞いてか聞かぬかわからないが、みつきは携帯電話を片手に

「本部に連絡を取ってみる。」

といった。


***

~3分後~

「連絡は取れたよ、でも救援まで10分はかかるって。」

みつき携帯電話を耳から放すとそう言った。

それを聞いた白久は頷きこういう。

「ってことは10分間、何とか民間の人たちを非難させきればなんとかなるってことだよね!」

「ああそうだ、間違っても戦闘にはなるな。」

陸のその言葉に白久は頷く。

しかし、その瞬間だった。

白久の視界には、9mほど離れた場所にピンクの髪の人形を持った10歳ほどに見える女の子が、どろどろとした悪魔の手に背後から心臓をつき抜かれそうになっているその姿が目に入った。


それを目にした瞬間、白久は全速力で走りその子に手が当たる前に、抱き着くようにして女の子をかばった。

白久の後ろからは悪魔の腕が迫る。

彼女の背にはもう腕があった。


「あの馬鹿!」

陸は全力のスピードでホルダーから拳銃を取り出そうと腰に手をやる。

その時。

一瞬。白久から強烈なまでの悪魔の気配が漂ったとともに、白久の背後にいた悪魔は瞬時にして細切れになった。


「なんだあのがすくむような気配……! あ、あれがS-の要因……か?」/「どういう事?!何がどうなって……。」


遠目からみて、唖然として立ち尽くす二人をよそに、白久は抱き着いた女の子の肩に手を置き、

「大丈夫だった?」

と声をかける。


しかし。

女の子は、振り向くと、それは恐ろしいまでの顔をしてこう言った。

「お姉さん、魔女なの……?」

それを耳にした白久は若干の驚きはあったものの、笑顔を作り

「お姉さんも細かいことはわからないんだけど、魔女らしいんだ。」

そう言った。


その瞬間。

陸とみつきには寒気のような感覚が走る。

「宵街、そこから離れろ!!」

陸は瞬時にそう言いハンドガンを構える。


しかし、その時にはすでに遅く、白久は吹き飛ばされ、右にあった店のシャッターにひどく身をたたきつけられた。

「それじゃあお姉さん、アタシ、暴食の悪魔!一緒にアソボ!!」

女の子は不敵な笑みと、不気味な笑いと共にそう言い、たたきつけられ動けない白久に近づく。


「まずい!!」

それを見ていた陸は暴食の悪魔に向かい発砲し近づいていく。


暴食の悪魔はその銃声を聞き立ち止まりそちらを見ると、

「銃? つまんないことするね、お兄さん。」

と退屈そうな視線を送り、右手を竜の口のように変化させ、その手で弾丸をかみ砕く。

暴食の悪魔は残りの弾丸もそれでかみ砕こうと、右手は右に向けたまま目の前の白久に視線を移す。


その時。

弾丸の軌道は2度ほど折れ曲がり、暴食の悪魔の背後から彼女を襲う。

「うぐっ」

彼女はそんな、にぶい声を上げる。

その瞬間、みつきが自前の短い杖の先から緑色の炎を出し、その炎は暴食の悪魔へと向かっていく。

暴食の悪魔はその炎を数歩後ろに下がり避けた。

そこを狙いすましたように、陸が暴食の悪魔に射撃をしながら、走り白久に近づき、無理やりに手を引っ張り体を起こす。

そして、白久は陸と共にその場を走り逃げ去ろうとしたその時。

二人は壁にあたったように後ろに倒れた。

「逃げないでよ~。」

暴食の悪魔は言う。


一方何とか体を起こす白久に、陸は体を起こしながら言う。

「あいつは、原子の悪魔のうちの一体だ。まともに戦うわけにはいかない。逃げるぞ。」


しかし、それを聞いた暴食の悪魔は、先程までにやにやしていたのを止め

「お前うるさいよ。」

そう言って右手を陸に向け、握った。

その瞬間。


ペキペキ


枝の折れるような音がしたと共に、陸の左手が複雑に折れ曲がった。

そして、それを見て暴食の悪魔は

「次は首だよ。」

そう言って、また笑顔を取り戻しこう続ける。

「あ、そこの緑のお姉さんも。」


その声を暴食の悪魔が発したと同時に、みつきの杖と右手は折れ曲がり、体は近くの電柱へと吹き飛ばされた。


「ふ、二人、とも……?」

人間というものは不思議なもので、[大変だ]と感じたときには体を動かせるのに、真に[大変だ]と感じたときには体どころか、思考すら止まるに等しい状況に陥ってしまうのだから。

もれなく白久もそうだった。


左手を折られ、悶絶し起き上がれない陸と、右手を折られ、その上電柱に衝突し、意識のないみつき。この二人の状況を目の当たりにして、そして前から段々と迫ってくる圧倒的恐怖を感じて、彼女の思考は完全に停止していた。


「あれぇ? お姉さん?」

そんな、言葉の端々に悪意の困ったその声も、白久の耳には届かない。

白久は完全に硬直していた。


しかし、そんな中、たった一つ白久の耳に届いた音があった。

「に……げ…………ろ。」

それは、左腕をおよそ粉砕に等しいまでに折られ、その上でもはや体を起こすことしかままならないその痛みに、耐え続けている男からの一言だった。


白久の中で思考が巡る。

(に……げ……る? にげる? 逃げる? そっか、逃げて何もかも見なかったって思えばいいのかな。わたしなんて、そもそもつい最近まで一般人だったわけだし。…………。いや、そうじゃない。そうじゃない。もう、わたしは仲間。ここで逃げるなんてできない。それに、暴食の悪魔と戦う羽目になったのはわたしのせいなんだし……。)


それに気が付いたその瞬間。

白久は持っていた刀を抜き、走り目の前にいる暴食の悪魔に斬りかかる。


しかし、感情一つでここまで大きな力の差を覆すことのできるほど、人の感情は便利なものではない。


白久の斬りかかったその刀を、暴食の悪魔は左手で簡単にへし折ると、さらに右手を竜の形に変え、その手を伸ばし、白久の体を壁にまで吹き飛ばした。


「その程度? お姉さん。」

暴食の悪魔は言う。

しかし、それは白久の耳には届かなかった。

そう、背をコンクリートの塀に打ち付けられた白久は、すでに意識を手放していた。


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