第三話 1-2班、初任務
「これから行くところはね、君と共に任務をこなす仲間のところだよ。僕とあと、斯波透真君と言う奴が共に指導している、まだ君と同じ16歳くらいの子たちのいる場所だよ。ま、安心してよ人数は君も含めて3人だし。」
白久は歩きながらも尋ねる。
「なんでわたしそこに?」
その質問に桐谷は微笑み、
「まぁ、ここはいわば、魔法使い養成教室みたいなものさ。君にはここで、魔法使いの基礎を学んでもらいたくてね。仲間たちと共に任務をこなしてもらうよ。」
そう答えたと同時にそこで立ち止まった。
桐谷の右にはドアがある。
桐谷はそのドアノブを握りながら言った。
「今日からここは君の教室さ。となりに寮もある。引っ越しは済んでるよ。」
「はい?」
白久がそう言うと同時に、桐谷はドアノブをまわし、教室のドアを押した。
そのドアの向こうは、少しの廊下が続き、そして正方形の部屋があった。
その部屋では、全身黒で黄色の目だけが妙に目立つ男と緑と白の長袖に赤、緑のスカートの女がソファに座り二人の男女がテレビを見て、だんらんをしていた。
そこで桐谷は言う。
「はいそこ注目!」
それを聞いた二人は、桐谷の方へ視線を移したのち、白久の方へと視線を移し替えた。
その様子を確認した桐谷は満を持したというように白久の方を指し口を開く。
「今日から転校してきた、宵街白久ちゃんで~す!」
「そういうのいいから。」
桐谷の声を聞いた彼は面倒くさそうにそう言いつつ、腰をしを上げ、白久へとこう言った。
「逆海陸だ。今後の任務に関係あるだろうから言っておくが、Aランクだ。よろしくな。」
それを聞いた白久は首を傾げながらも言う。
「わたしは……ってさっき杉凪さんから聞いたよね。それより、Aランクって何?」
それを聞いた陸は、飽きれたように首を若干左右に振りつつ
「桐谷さん、説明してないんですか?」
その言葉を聞いた桐谷のいい加減な反応を受け、こう続ける。
「俺たち魔法使いにはランクってのが存在する。上から順にS+・S・S-・A+・A・A-・B・C・D・Eってなってて、Eは非戦闘員、Dは基本的に裏仕事、Cは戦闘員でも弱い言わば下級、Bはまぁある程度の実力、Aとはゾウと戦えば勝てるってレベル。+-は前後のランクとの間。んでSってのはこの日本に12人しかいないとかいう、災害レベルの悪魔を対処できる魔法使い。S+ってのは日本に一人しかいないやばいやつのことだ。んで、宵街のランクは?」
陸は桐谷の方を向く。
人というのは、予想外の質問には強くはないものだが、桐谷はそれを予想していたかのように、微笑みながら即答した。
「S-だよ。」
その返答に、おそらく自分よりランクは低いと考えていた陸は、驚きを隠せずに言う。
「なに?! S-ランク?! しかも魔法使いとしてここに来たばかりの宵街が!?」
その声に、桐谷は何故か嬉しそうに「ふはははは」と笑ったかと思うと、ピタッと笑うのをやめ、
「そうだよ。」
と言って頷いた。
「な、なぜ?」
すると、そう言って動揺する陸のその横から、陸をなだめるようにしてから一人の女性がこういう。
「まぁまぁ。にしてもすごいね白久ちゃんは! わたしの名前は符津端みつきっ! よろしくね! ランクはBだけど。」
その輝く笑顔に白久は少し圧倒されながらも、白久は笑顔を返すようにして言う。
「よろしくね、みつき!」
そうして二人が話していると、急に桐谷は手をたたく。
その瞬間、二人は静まり返り白久は首を傾げる。
「どうしたんですか?」
それを聞き、桐谷は満面の笑みに大声でこう言った。
「親睦会もかねて、みんなでバトル〇ームでもしよっか!」
「なんでですか!」/「なんでだよ!」/「なんで?!」
***
~翌日~
「おはよう……。」
白久は眠い目をこすりながらも、すでにみつきと陸のかけるソファに腰を下ろした。
「おはよう、白久ちゃん。」/「おー、おはよう。」
「……。おいしい……。」
「さてはまだ起ききってないな。」
白久の謎の一声を聞き、陸は言う。
「あ~、まぁ、目が開いてても頭って起きてないことあるよね~。」
そう、みつきの言う通り白久の脳は、今90%が寝ているのだ!
と、その時。
バタンッ
そんなけたたましい音と共に部屋のドアが開き、さらにけたたましい声が聞こえる。
「おっはよう、皆の衆!」
その後を追うように桐谷の声も聞こえてくる。
「朝からうるさいな、斯波君は。」
その斯波のけたたましい声に目を覚まされた白久はソファから立ち上がり、
「杉凪さん、そちらの人は?」
そう言う。
それを聞いた透真は、桐谷が口を開こうとしたとほぼ同時に自己紹介を始めた。
「やあ!俺は斯波透真だ~!よろしくなぁ!」
それに桐谷はこう付け足す。
「斯波君はアホだ。どうにもできない次元で。」
「はっは~、そんなわけでよろしくなぁ!」
白久は思う。
(この人、ホントに話聞いてるのかなぁ。)
とその時、
「1-2班、任務です!」
そんな放送が響き渡った。
「な、なんですか?! これ。」
白久が驚いていると、先程まで寝間儀でいたはずの陸とみつきは、既に更衣室から出て昨日テレビを見ていた時の服装、つまり制服に着替えている。
「1-2班ってのは俺たちのことだ。」
陸はそう言いながらも銃を腰にあるホルダに入れた。
「え? え?」
皆が着々と準備を進める中、一人混乱する白久。
まぁ、それもそうだろう。白久はこの機関に昨日所属したばかりだ。それどころか、昨日まで魔法などとは無縁の生活を送っていたのだ。かってなどわかるはずがない。
そんな白久の様子を見て、桐谷は自身も体をほぐしながら
「これっ。」
そう言って紙袋に入った何かを白久に投げ渡す。
そして、それを見ていた支度を終えたみつきは、タイミングを見計らったかのように言う。
「それ、昨日わたしが白久ちゃんに似合いそうな制服発注しておいたの。ほんとは本人がデザインするんだけど、いつ任務が来てもおかしくないのがこの業界だから、わたしがデザインして発注しちゃった!」
白久はそれを聞き、急ぎ手に持っているそれを開くと、中からは、黒のワイシャツと赤のネクタイ、白のかかとまである薄く袖など全体的に余裕のあるコート、白のチェック柄の入ったひざ下10センチほどのスカートが入っていた。
(これがわたしの……。)
白久がそんなことを考えながら紙袋の中身を覗いていると、その様子を見たみつきは更衣室を指しながら言う。
「あそこ、女子更衣室だからそれに着替えちゃって!」
「わかった!」
皆があわただしくする中、白久は更衣室に入り服装を着替える。
一方、部屋では桐谷が伸びをしていると、部屋のドアが開く。
「遅いですよ、1-2班! それと杉凪さんと斯波さんは別途任務があるのでこちらへ。」
いきなり部屋に入ってきた男はそう言うと、桐谷と斯波の腕を引く。
しかし桐谷は、つかまれた腕を自分側に手繰り寄せ言う。
「ちょっと待ってね。今回の任務難易度を教えてもらおうか。」
「Bランク相当です。」
「なるほど、そうか。」
桐谷は一度頷くと、陸の方を見て言う。
「今回の任務はBランクらしい。逆海君、二人のことも含め君に頼んだよ。」
それを聞いた陸が一つ頷いたのを見ると、桐谷と透真は部屋を去った。
それから少しして白久は急ぎ更衣室から出て、桐谷と透真がいないことに気が付く。
「あれ、杉凪さんたちは?」
「別の任務だ。今回は俺たち三人で任務にあたることになった。」
そして、陸は少しの間を開けると、どこからか刀を持ってきて白久に渡してこう言った。
「これを使え。」
それを見たみつきは笑顔で言う。
「そんじゃ、いこっか!」
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