第二話 魔法特別課
***
~現在~
白久は今までの記憶を整理し終わるとともにいう。
「味方? そうじゃない? それってどういう事? そもそもあなたは誰? あなたが追いかけていたあのくらいのは何?」
それを聞いた彼は困ったような微笑みで言う。
「質問攻めだね。まぁ、それもそうか。」
そして十分に間を開けてから彼は口を開いた。
「取り合えず、自己紹介をしていなかったね。僕の名は杉凪桐谷。まぁ、気軽に桐谷様とでも呼んでよ。」
白久は首をかしげる。
「様?」
桐谷は、静かに笑い、こう言う。
「おっと、間違えた。桐谷さんとでも呼んでよ。」
「絶対わざとですよね?」
白久は顔をしかめる。
そんな白久に桐谷は笑いかけるようにして「まぁまぁ」そう言った後に、今まで崩さなかった微笑みを崩した。
「それで、味方かそうでないかって話なんだけど。その様子だと、どちらでもなさそうだ。」
そして桐谷は面倒くさそうに言う。
「なら説明が必要だ。話は長くなるけど、我慢してね。」
その言葉に、白久が頷いたのを確認すると、桐谷は微笑みを取り戻し、話始める。
「まず、ここで言っていた『敵』『味方』の定義は簡単。僕達にとって利益になる存在か、不利益にある存在か。それだけだったんだけど、君はまだ僕の所属する組織のこと自体を知らないようだから、説明するよ。ちょっと待ってね。」
そう言って彼はどこからか椅子とナイフを持ち込み、いすに腰掛け、ナイフを片手に話を続けようとする。
そこですかさず白久は言う。
「ちょっと、だいぶ自然ですけど、なぜナイフを片手に持っているんですか?」
それを聞いた桐谷は言う。
「まぁ、気にしなくていいよ。それより、人の話を途中で途切れさせない。」
「途切ったのは杉凪さんですけどね。」
白久は呆れた顔をしてそう言った。
桐谷はそんなことは気にも止めずに、杉凪さんって呼び方にしたのかぁ、程度に考え、話を進める。
「それで、僕の所属する組織は『魔法特別課』と言う、まぁ、行ってしまえば警察組織の一つのようなものだよ。でも、警察とは大きく違う点がざっくりと2つある。一つ目は、君も見た通り、敵が違う。普通の警察は強盗、詐欺、一番難関で殺人と言った程度が裁く範囲だろう。でも、僕達の相手は、魔法を使い殺人を犯す魔法殺人犯、はたまたテレポートで万引きをする見た目は不可能犯罪、そして、最重要なのは悪魔だ。」
白久はここで横槍を入れる。
「悪魔って?」
桐谷は微笑み、「今から説明するよ」そう言って話を続ける。
「悪魔とは、君の見た通りのアレだよ。人々の嫉妬、憎悪、嫌悪そう言ったものが魔力として人から漏出し、それが集まった塊があれだよ。言ってしまえば、クソの塊さ。でまぁ、2つ目は、君もある程度想像が付いているだろうけど、魔法特別課に所属している人間はみな魔法使いだ。」
桐谷がそこまで話したところで、白久は再び横槍を入れる。
「あの、魔法があることを前提に話しているみたいだけど、そういう類の話、わたしあまり信じてるタイプじゃですよ?」
桐谷はそれを聞き、ここぞとばかりにその話へ返答する。
「ああ、まぁそうだろうね。でもそんな何も知らない君になぜ僕が『敵か味方か』なんて聞いたと思う?」
「さぁ?」
白久はあまり興味がなさそうに首をかしげて見せた。
それを見た桐谷は微笑みながら言う。
「君が悪魔と契約してるから。」
白久はそれを聞き、首を傾げたまま言う。
「それってどういう……?」
それを聞いた桐谷は、いっそう微笑みを強め、
「話してもわからないよね?それじゃあ、試してみようか。」
そう言ったと思ったその瞬間、桐谷は白久の心臓へ向かって右手に持っていたナイフを突き刺そうとする。
その瞬間。
桐谷の体は後方へと吹き飛び、コンクリートに打ち付けられた。
コンクリートにはひびが入る。
「えっ? 嘘?!」
その光景は白久の眼には、一瞬の出来事がゆえに、はっきりと映りきっていなかった。故に混乱する白久に、桐谷少し苦しそうな表情に反して、落ち着いた声で白久に言う。
「落ち着いて。そしてゆっくり振り返ってごらん。」
白久は指示通りに、一度深呼吸をして心を落ち着かせた後、ゆっくりと後ろを向いた。
その瞬間。白久の目には、どろどろとしていたあの時の悪魔とは違う、大きく、そして明確な形を持ち、黒の服に身を包み、レースで顔が見えず金の髪のみが見え、片手に刀を持っている上半身のみがある大きな何かが映った。
再び混乱する白久を見た桐谷はコンクリートに打ち付けられ、壁に埋もれていた状態から立ち上がり、こう言う。
「それが君と契約をしている悪魔だよ。君の命の危機を察して出てきたんだろう。ただ困ったなぁ。それは君の言うことしか聞かない。このままでは僕が倒れてしまう。」
そんな桐谷に、悪魔は容赦なく攻撃を仕掛ける。
桐谷はそれをかわし、天井に立つが、そこへ向かってきた斬撃によって桐谷は再び後方へ吹き飛ばされる。
それを見て、白久は慌てながらも制止するが、悪魔は白久の制止を聞かずにそのまま攻撃を続ける。
(わたしの言うことを聞くんじゃなかったの?!)
「やめなさい!」・「やめて!」
白久がそんな言葉を放ち続ける目の前では、依然として悪魔の攻撃をかわし続ける桐谷がいる。
(どうしたら……?)
そんなことを考える白久の脳裏に、ふと一つの言葉が入り込んできた。
それは、どこかで聞いた言葉でもなければ、誰かに言えと言われたわけでもない言葉。しかし、その言葉が白久の頭の中にふと浮かび、そして離れないのだ。
その言葉を白久は言う。
「静まりなさい。月の影のもとへ!」
その瞬間、今まで猛攻を繰り広げていた悪魔はその攻撃をぴたりとやめ、白久の影へと溶け込むように消えていった。
「よくできたじゃないか。」
ボロボロになった桐谷がそう言いながら白久の前へと立った。
白久は、今自分の中で起こったことを嘘偽りなくこう説明する。
「今、悪魔を止めようとしていたら、急にあの言葉が頭に流れ込んできて……。」
それを聞いた桐谷は、肩を上げ、
「それについてはわからない。」
そう言った後に、少し間を開け、こう言った。
「でも、今ので分かったことは2つある。」
「な、なんですか?」
白久がそう言うと、桐谷は人差し指を立て、こう言う。
「一つ目は、君が魔女だってこと。魔女っていうのは、原始の悪魔と言われる強力な悪魔と契約した者のことをいうんだけど、どうやら君はその類のようだ。」
桐谷は二本目の指を立てる。
「二つ目は、見た目からして君の悪魔は『月の悪魔』だ。」
白久はそれを聞いてもピンと来るはずがない。白久は首をかしげ
「月の悪魔?ってどういうものなんですか?」
と言うと、桐谷は歩き出し、いつの間にか白久の背後にできていた出口へと向かいながらこう言った。
「さぁ? 僕にもそれはわからないな。わかるのは名前だけ。ただ、それをしまう方法が君に分かったなら、君にはこれから魔法特別課の一員として働いてもらおう。拒否権はないから。さ、ついておいで。」
桐谷はそう言って出口から出て、歩き始めた。
それに白久はついて行く。
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