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12/23

その名

【登場人物】

宮迫(みやさこ) 予久(かねひさ)

174cm 61kg

自身の問いに対する選択肢を導き出し、その答えまでも導く異能、《ゴッドノウズ》を使う少年。

便利な能力ではあるが、自身の能力に悩まされることもしばしば。

その能力のせいか、他人に興味を持つことなく育ってきており、交友関係はかなり狭い。


泉沢(いずみざわ) 未散(みちる)

149cm 39kg

B/W/H 83(E)/55/84

予久の幼馴染で天真爛漫な天才スプリンター。

騒がしくも予久と一番長く付き合ってきた腐れ縁もあるが、少し仲が拗れている。


宮近(みやちか)七実(ななみ)

152cm 39kg

B/W/H 91(G)/58/86

未散より前に知り合った予久の幼馴染。

超が付くお嬢様で、昔は屋敷を抜け出しては予久に会いに行っていた。

予久とは将来を誓った間柄ではあるが何やら秘密があるようで…?


天川(あまかわ)詩織(しおり)

155cm 41kg

B/W/H 89(F)/59/87

誰も詳細は知らず謎に包まれている少女。

予久が何かを感じ取ったようだが…?


桟道(さんどう) 凌太(りょうた)

175cm 62kg

中学時代から予久と未散と付き合いがある陸上部員。

交友関係が狭い予久の数少ない親友。

幼馴染の美月の事が好き。


鹿目(しかめ) 美月(みつき)

153cm 41kg

B/W/H 84(E)/57/87

凌太と幼馴染で予久と未散とは中学時代からの付き合いがある吹奏学部部員。

学園の理事長の孫で金持ちではあるが、あまりそういった雰囲気はなく凌太たちとバカをやって同じ学園に進学した。


放課後、図書室で用事を済ませようと思っていたが、思考がまとまらず夕暮れの廊下をぶらついていた。

先日の七実と凌太の話、そして未散の事。

俺は未散と付き合いたいのか、そのままでもいいのか。

俺が答えを出さなければ未散はいつまでも待つだろう。

だけど、去り際に凌太に言われた一言が気がかりだった。


『いつまでも泉沢さんみたいな可愛い子を世間の男子が放っておくかな?』


未散は確かに可愛いし、モテる。

実際何度か告白されたことがあるが、すべて断わってきた。


(でもいつまでも未散が待ってくれるとも限らない)


それに俺以上に魅力に感じる男性が出来たらどうなるかは明白だった。


「だからはっきりさせないとな」


じゃないと、きっと後悔する、一生引きずって生きていくことになる。

それに……


「未散に甘えてばかりじゃダメだよな」


凌太みたいに一歩踏み出して踏ん張る。

そうでもしないとカッコ悪すぎる。


今日も未散は走っている、凌太も鹿目さんも互いに一度は決着をつけた。

そして天川さんも毎日満足することなく漫画に向き合っている。


「俺だけカッコ悪りぃ……」


天を仰いでもすぐそこに天井が見えるだけだった。

勿論真っ白で空っぽな、ペンキで塗りつぶされた白い天井が答えるはずもない。


「はぁ……」


己の不甲斐なさにため息をつきながら廊下を歩いていると、何やら話し声が聞こえる。


(この声は……)


部活動熱心なこの学校で校舎に残っている生徒は文化部くらいだが、その声の主は階段の渡り廊下だった。


「別に悪いことをしているわけじゃないんだけどな……」


それでも足音を殺して階段を登っていき、聞き耳を立てると声がはっきりと聞こえる。


(七実の声……?)


「だから(わたくし)はそんなことをいたしませんわ!」


『――――――であるから―――ない』


「だからって!! 私は!」


『―――たまえ。もう―――ない』


七実は何やら電話で言い合っているのか、珍しく声を荒げていた。

所々電話の相手の声は聞こえないが全く知らない男性の声だった。


「もう知りませんわ!!」


その言葉で電話を切り、らしくもなく歩を早めて階段を下りてくる。


(まずい!!)


このままじゃ間に合わずに七実と鉢合わせてしまう!

だが今更逃げようにも足音が立ってしまう。


(七実の会話に夢中だった!)


だが、今更回避できず降りてきた七実と鉢合わせてしまう。


「あっ……予久。」


「よ、よう七実」


「……図書室に行ったのではなくて?」


「気分が乗らなくてさ。ぶらついていたんだ」


俺はなんとか動揺を隠そうと努力するが明らかに動揺していた。

しかし、それは七実も同様か、表情に焦りが出ていた。


「……今の聞いていましたの?」


「………聞いてはいた」


「っ!!」


その瞬間、七実の顔が青ざめるが俺は慌ててフォローを入れる。


「でも何を話しているかまでは聞こえなかった」


「そ、そうですの。それじゃあ私はこれでっ」


最後まで動揺を隠せず、逃げ去る様に七実は去って行った。


(七実は誰に何を拒んでいたんだ?)








七実の件で考え事が増えていたが、やることはやらねばならず観念して図書室に入る。

そこにはいたのは


「天川さん……」


相変らず人気のない図書室で今日も天川さんしかいなかった。

それでも天川さんは集中して何やら紙に描き込んでいた。

あれは……漫画の原稿だろうか。

今時、漫画を紙に描くものなのかは分からないが、原稿に向かう姿は様になっており、黒く長い髪を弄ることなく原稿に意識を集中させている。

集中しているところに声をかけるのは気が引けるが、俺も用があるため声をかける。


「今日も頑張ってるね」


「っ!!!」


俺が入ってきた事に気付いていなかったのか、声をかけると天川さんは驚いて肩をすくませる。

だが、程なくしてこちらに体を向ける。


「ご、ごめん。驚いちゃった?」


「……宮迫くん、何の用かしら?」


先程の事は失態だったのか、平静を装って仕切り直す天川さん。

いつもの私です、といった体のようで俺もそれに付き合う。


「特に用ってわけじゃない」


「それじゃあ何の用なの? まさかナンパしに来たわけじゃないでしょう?」


「勿論だ。俺は天川さんと話しに来たんだ」


そう、未散の事もだが天川さんの事もはっきりとさせておく必要がある。

そこで初めて未散と向き合ったと言える気がしたからだ。


「それで、話しって?」


「大きなお世話かもしれないけど、君の漫画の感想を書いてきたんだ」


「結構変なことするのね」


「えっと………迷惑ならいいんだ」


「そんなことないわ。ただ直接渡すなんて面白いって思っただけよ。よければ、見せてちょうだい」


俺はカバンから今まで読んだ天川さんの本の感想を書いたノートを出して渡す。

それを受けると天川さんは早速ノートを開いて読み始める。


「………」


天川さんは真剣に1ページ1ページ感想に目を通していく。

しばらくして、すべて読み終わったのか顔をあげると眉をひそめていた。


「な、何か気に障ったかな?」


「……この感想はあなたが書いたの?」


「そうだけど……的外れだった?」


「そうじゃ無いわ。ただ文章センスがいいなって思っただけ」


「そっか」


「あなた結構鋭いのね。編集とか経験とかあるの?」


「特にないよ。陸上と勉学しかないつまらない人間だ」


「………そう、筋がいいのね」


「ど、どうも?」


何やら的を射ているような射ていないような会話だが、天川さんは熟考すると何かを閃いたようだった。


「そうね、あなたって今度の土曜日ヒマかしら?」


「特に予定はないけど……」


「そう、それじゃあ付き合ってもらってもいいかしら?」


「あ、ああ。でも何に?」


「少しあなたとしたいことがあるの。場所は追って連絡するからそれでいいわね?」


「それは構わないが……」


「ありがと。それじゃあ」


それだけ確認を取ると天川さんは荷物をまとめて図書室を出て行ってしまった。

だが素朴な疑問が一つ残る。


「………何をしに来たんだ?」


漫画を描いていたんじゃないのか? それならここで描いていけばいいのに。

まさか俺が来るまで待ってたとか?


「そんなわけないか」


「なーにをニヤニヤしているんですの?」


「うおっ!! 七実!!?」


変な妄想を膨らませていた俺だが、背後から七実に声をかけられて飛び上がってしまう。

先程の事もあり、かなり動揺してしまった俺だが七実は平常心を保っていた。

落ち着いた上品な所作はいつもの宮近七実だ。


「図書室は静かにするところですわよ?」


「わ、悪い……いつからいたんだ?」


「そこは些細なことですわ。それで、何か天川さんのヒントはありましたか?」


「いや、さっぱり。強いて言えば……ん?」


「どうしましたの?」


床に目をやるとピンクのハンカチが落ちていた。

拾い上げてみるも俺の物でもないし、俺を含めて三人。


「これ、七実のハンカチか?」


「違いますわね……もしかして」


「天川さんのかもしれないな……」


広げてみても名前は書いていないが、明らかに女子が使うようなものだ。


「ちょっと待ってくれ……」


こんな時こそ能力の使い時だ。

ハンカチに視線と意識を集中させる。


(このハンカチは誰のものだ……?)


『1.実は未散のパンツ』

『2.実は七実のパンツ』

『3.天川さんのハンカチ』


………当然三番の天川さんのハンカチが正解だ。


「うん、天川さんの物…っ!」


「予久!!?」


能力を使った後、急激な頭痛に襲われる。

頭を抱えて机に突っ伏すが意識が朦朧としてくる。


(意識を持って行かれるっ!)


「か…さ! しっかり……ですの!?」


心配そうに声をかける七実の声が遠くなっていく。

視界も暗闇に包まれ、まるで世界が回転しているかのように三半規管がぐちゃぐちゃになる。


(くっ……!)


気持ちが悪い、視界がぐちゃぐちゃになる、何も聞こえない。

抗う事の出来ないその痛みに俺は飲み込まれていくのみで、意識は急速に落ちていった。







『ねえ、これうまくできてるかな?』


『うん、――はすごいな!』


視界は真っ暗だ。

ただ、この声はどこかで聞いたことがある。

そう、以前見た夢と同じ少年少女の声だ。


『えへへ、私天才かも!』


『そうだな天才だ』


『でも――も凄いよ』


『そんなことないよ。そっちの方が凄い』















『な、しおり』




今回もお読みいただきありがとうございます。

ここまで読んでくれだけでも本当にうれしいです……。

色々考えながらなんとか書いていますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。


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