了 結局、俺は何にも描かない
文章で伝える難しさを痛感しましたが、何とか短編書き上げました。
俺の名前は藤間。
藤間当麻…のはずだ。
駄目だ、酔っぱらいすぎて自分の名前以外あやふやになってしまっている。
「確か…あの後、やっちんともう一軒ハシゴして……痛っ!…やっちんは近くのホテルに宿泊してるって事で別れたんだったな…」
藤間の頭に痛みが走った
飲み過ぎである。
「あー、ちくしょう…二日酔い確定じゃねえか。まあ、明日休みでよかったわ…」
藤間はふらふらしながらも、確実に帰宅のルートに向かっていた。
途中、何本かの電柱に肩を預けつつも確実に。
5本目…いや、6本目の電柱だっただろうか、左腕を電柱に付けたままもたれ掛かった藤間は、今日の事を思い出していた。
「あー、クソ…楽しかったな…。やっちんとあんな熱い話できるなんて…」
心臓が早鐘を打っている。
熱い。
ネームですら、まともに描きあげたことのない、自分が凄まじく燃えている。
今なら…この瞬間なら描ける気がした。
「やべぇ…描きたくてたまんねえ…こんなとこでモタモタしてられっかよ!!」
今度こそネーム切って、ペン入れからトーン貼りまでやって…
藤間は酒のせいか非常にハイになっていた。
「俺にもこんな情熱がまだ残っていたなんてな…へへっ」
夜中にボソボソ呟きながら、フラフラと家路を急ぐ酔っぱらいが1人。
職質ものである。
ガチャン
家の鍵の開く音がした。
藤間は20分かけて帰宅の途についた。
靴を脱ぎ捨て、今はもう座る事のない漫画用デスクの引き出しを開けた。
「あった、あった。」
そう言いながら取り出したのは大量のコピー紙だった。
いずれも絵が描かれており、1つとして未使用のものはなかった。
自分の漫画の設定資料集みたいなものだろうか。
藤間にとってはかけがえのない宝物でもある。
それを大事そうに抱えると藤間はベッドにダイブした。
「ふふっ…こんなもん描いてたなあ。個人的にはいいアイディアだったけど、ひと月後ぐらいにデビューした作家と設定まるっきり一緒なのが分かって…ボツにしたんだよな。早い者勝ちの世界なんだって痛感したなあ」
仰向けになりながら、部屋の電灯に透かしつつ1枚1枚に目を通していく。
「よし、この中にも多少使える設定あるから、そっから構想練って…後は…」
駄目だ…瞼が重い。
酒が回りすぎたせいか、藤間の開眼時間はすでに限界をむかえていた。
「これから…俺は…漫画を描…」
言い終わる前に瞼のシャッターが閉店ガラガラしてしまった。
さよなら現実
そして、ハロー。夢の世界へ。
雀のチュンチュンと鳴く声が蝉の鳴き声に変わる頃、ようやく部屋の主は現実に舞い戻ったようだ。
「んん…ふわあ…よく寝た」
スマホの時計を確認すると、すでに12時ちょっとを過ぎていた。
「うわ、寝すぎた。いてて」
眉間を押さえながらベッドから起き上がる
見事に二日酔いである。
起き上がった拍子に、腹の上にあった資料が床めがけて滑り落ち、それは散乱した。
「ベランダで一服しますか」
そう言うと、すくっと立ち上がりベランダに向かう。
床に散乱した資料をその足で踏みしめながら。
ガラララ…
ベランダに出ると、すでに昼のせいか日差しが目に突き刺さる。
持っていたタバコに火をつけ、目覚めの一服を楽しむ。
「とりあえず、せっかくの休みだし外出るか。オープン過ぎちゃってるけど、スロットでも打つかな。」
二日酔いだろうが関係ない。
藤間は不敵な笑みを浮かべた。
昨日の情熱なんてものは明後日の方向に霧散し、今はギャンブルの事しか眼中にない。
そうして、いつもと変わらない日々を過ごす。
彼の名は藤間当麻
将来の夢は漫画家になる事
結局、彼は何にも描かない
とりあえず、表現は稚拙な部分、多々あるとは思いますが書きたいものは書けたのかな…っていう感じです。
次から長編にもチャレンジしていきます。
読んでくださった方々、1人…2人ぐらいかもしれませんが、(もしかしたら0かな
お付き合いいただき、ありがとうございました。
また次の作品で。