婚礼
グラブゼルを卒業すると同時に、兄の結婚、オルデンブルクの継承、次々に人生の節目を迎える。新しい世界に踏み出すことが出来るのだろうか?!
この5月に16歳になった。
これを期に、兄は王に、私はオルデンブルクを継ぐ。
生まれてこの方、住まう場所は違っても、片時も離れた事が無かった私達が違う者に成り、別離の時だった。
“マーヴが良いって言うまで傍に居るよ。約束する“
“本当だね?!宜しくね。アウル“
私という元凶のせいで、両親は私達双子を遺してこの世を去った。
“これからは、私が親代わりをしよう。安心して良いのだ“
そう言った先王も、既に亡い。
兄1人を遺して逝けなくて、今日まで来た。
死に場所を探して彷徨っていた私を拾い、命を繋いでくれた人に報いるためにも。
今日まで…
礼拝堂での式を終え、花嫁の手を引いて、兄が私の前を通りすぎる。
笑顔の一瞥と、花嫁の会釈に目礼を返しながら。
もうこれで、大丈夫と胸を撫で降ろす。
資質を備え、何より善良な兄で有れば、この後は、何の苦難も無いように思う。
兄嫁となったゾフィーの父、カーライツ伯爵も、貴方を支えてくれよう。
義弟となったアレンも、何れ、伯爵の跡を継ぎ、この後も長く貴方の治世を支えてくれる。
…もう…良いよね?!一人でも大丈夫だよね?!
国王夫妻が、礼拝堂の戸口に立つと、待ちかねていた人々が歓声を上げた。
歓呼に応える彼等が、射し込む光に解けて見えなくなってしまった。
目の前にリネンのチーフが差し出された。
余りに唐突で、意味が判らない。
「泣かないで下さい。困ります」
右手でハンカチを差し出して居たのは、私と同じく、礼装に身を包んだアレンだった。
私も同様だが、まだ、軍装を着熟せる程の体躯は無いものの、上背は同じくらいに…少し超されて終ったのか…
「…お前が困ることは無いと思うが?!」
そう言った自分の声が、涙声に成ってしまっていて、仕方なく、ハンカチを受け取った。
返そうとすると受け取らない。
「持っていて下さい。また、必要になるかも知れない」
「うるさい。泣くなと言ったのはお前だろうが!!」
悔し紛れに言って、抱えていた軍帽を目深に被って、視線を避けた。
隣で同じように帽子を被り、前を見詰めたまま、不機嫌な声で言う。
「ええ。泣かれると、義兄とは思えなくなる」
「思って貰わなくて結構だ。義姉上と結婚したのはマルグレーヴだからな」
「失敬」
話している内に、切羽詰まっていた感情が無くなってしまっていた。
死すべき私が居なくなって、日常が訪れていた。
アレンが、私の運命られた人で有るのは、疑問の余地は無かった。
だが、私の命と引き換えに、アレンの未来を奪うことなど、私には出来なかった。
お読み頂き有り難う御座いました。アウルも大学生になります。新しい出逢いが彼に何をもたらすのか…ご期待くださいませ。




