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優しいスライム  作者: アッサムてー
3/7

 「帝都までの間には、たくさんの観光地があるんだよー。

 リンゴは、寄りたいところとかあるー?」


 リンゴの頭の上にポヨンと乗っかって、のほほんとスポンジが言う。

 帝都というのは、数ある魔族達の国の中でも一番大きい国、帝国の中心都市のことだ。

 リンゴとスポンジがいるのは、帝国のお隣にある国だ。


 「へぇ、たとえばどんなところがあるの?」


 「うーんとねー。ここから一番近いのは港町かなぁ。

 お魚が美味しいんだー。リンゴはお魚、生でも食べられる人ー?」


 「生? あぁ、刺身があるのか」


 「そうだよー。冷凍保存の技術が開発されてねー、だれでもお腹を壊さずに生のお魚、お刺身を食べられるようになったんだってー。

 焼き魚も美味しいけどねー。

 そうそう、前に寄った時はお土産屋さんで働かせてもらったんだよー」


 「前言ってたアルバイトのこと?」


 「そーそー。あ、でもその前に」


 そこでリンゴの頭からピョンッと飛び降りて、スポンジはリンゴを見た。

 リンゴは足を止めて、不思議そうにスポンジを見つめる。


 「どうしたの?」


 「リンゴ、新しい服を買ってあげるよー。

 靴もボロボロでしょー?

 ついでに温泉入ろ、温泉」


 と、スポンジは言ってきた。

 リンゴは自分の服をあらためて確認する。

 あちこち擦り切れて、薄汚れている。

 スポンジに助けられてから、数日が経過した。

 ここまでの道中、たまに水場に案内してもらって水浴びや洗濯もしているが、やはりどこか汚い印象を受けてしまうのだろう。


 「温泉? 温泉があるの?」


 「そう、港町の手前にね、火を噴く山があるんだけど、あんまり大きくはないけど、温泉の町としては有名なんだー。

 大きくないのは、なんだったかなぁ?

 あー、そうそう、環境保護のためにあんまり町を大きく出来なかったんだってー。

 そこはねー、お饅頭と温泉のお湯で茹でたタマゴとー、山菜の料理が美味しいしー、あ、内陸だから、豪華なお刺身が出てくるんだー」


 「?

 内陸だから、お刺身が出る?」


 「うん、ドラゴンさんから聞いたんだけど。海がない場所で、そこでは採れないものを出すのは、最上級のおもてなしなんだってー。

 だから、その温泉の町でもたくさんお刺身が出るんだよー。

 今だからこそ、保存方法もしっかりしてて、道もしっかりしてるから新鮮なお刺身が食べられるんだってさー。

 あとねあとね、お刺身も美味しいんだけどね、お酒も美味しいんだー」


 「お酒」


 「あれ? リンゴはお酒嫌いー?」


 「いや、嫌いとかじゃなくて、まだ未成年だから飲めない」


 「???

 みせーねんって、なーにー?」


 「子供ってこと。ニンゲンの子供はお酒が飲めない決まりなんだ」


 「そっかー。うーん、じゃあ僕の方がお酒が飲めるから、リンゴより大人ってことだねー!」


 「そうなるね。スポンジ君は俺より大人だ」


 そんな会話を交わしながら、街道を進む。

 整備された道は、歩きやすい。

 時折、馬車が通り過ぎる。行き違う。

 乗り合い馬車や、行商人の馬車である。

 乗っているのは、傍から見ればニンゲンとそう変わらない外見の魔族。

 スポンジから聞いてわかったことだが、どうやら魔族だけでなく鬼人族をはじめとした亜人族やダークエルフ、もちろんエルフもこの大陸には存在しているらしい。


 「じゃあ、僕が大人だからリンゴの保護者ってことになるね!」


 誇らしげに言うスポンジに、リンゴは微笑んだ。


 「そうなるね。だからスポンジ君。

 大人な君に、俺はたぶん、ものすごく迷惑をかけると思うんだ。

 さっきの、服や靴を買ってくれるって話もそうだし。

 もちろん、これから寄る場所で仕事も探すよ。

 スポンジ君にばかり甘えてられないしさ」


 「そーなのー?

 でも気にしなくていいよー。僕もドラゴンさんと一緒にいた時は、ドラゴンさんにたくさんたくさん、迷惑かけたからー。

 なんて言うんだっけ?

 持ちつ持たれつ?

 だから、気にしなくていいよー。

 僕もリンゴにたくさん迷惑かけると思うしさー」


 リンゴの足が、また止まった。

 そして、うっすらとその瞳に水が溜まっていることに、スポンジは気づいた。


 「どうしたの、リンゴ? どこか痛いの?」


 「あはは、ううん。

 どこも痛くないよ。

 そう言ってもらえて、ホッとしたんだ。

 俺、スポンジ君に会えて良かったって心の底から思うよ。

 ありがとう」


 「そう? どういたしましてー」


 そうしてまた、リンゴは歩き出す。

 歩き出したリンゴの頭に、またスポンジはポヨンと乗る。


 「かっこいい服と靴、あるといいね!」


 「うん、そうだね」


 スポンジの楽しげな言葉に、リンゴはうなずいた。

 

 


 



 

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