始まりの予感2
前の部の後半を移動しました。現在改稿中です。(2023/6/15)
午前の授業が終わり昼休み。
今日は天気も良く、中庭のベンチでお昼を食べることにした。
昨日のように刺すような視線はなくのんびり過ごすことが出来るだろうと考えていると、ちょうどそこに藤崎さんが通りかかった。
「あ、檜山くん…」
「あ、藤崎さん、ひとり?」
「は、はい…」
「一緒にどう?」
僕はそう言って隣の空いてるスペースを軽く叩く。
「いえ…迷惑をかけると思うので…」
「迷惑って?」
「えっと…その…」
「あれぇー?フジサキじゃーん、何でこんなところにいるのぉー?」
そこで、藤崎さんの背後から声がかかった。
「し、新城…さん…ご、ごめんなさい…!」
藤崎さんは肩を大きく震わせ、声の主に深く腰を折ったと思ったらそのまま立ち去ってしまった。
「あ、ちょっ…はぁ…」
その状況をただ眺めていることしかできなかったが、なにやらため息を吐いていた新城さん?は僕に気づいた様子で今度は僕に声をかけてきた。
「あ、檜山じゃん、もしかしてフジサキと話してた?」
「話してたけど…何で僕の名前を?」
「去年同じクラスだったっしょ?」
「そういえばどこかで聞いた名前だと思ったら…体育委員の新城さん!」
「なにその覚え方…いや別にいいんだけどさ…」
「えっと、それで…藤崎さんに何か用があったの?」
「あー、うん、そうなんだけど…いつも声かけるとすぐどっか行っちゃってね…」
「えーっと…何か代わりに言っておくこととかある?」
「うーん…それはありがたいけど自分で言いたいかなって」
「そっか、わかった。事情はよくわからないけど何とか話聞いてくれるように説得してみるよ」
「あ、うん、ありがと。あと…何か相談してきたら話、聞いてあげて」
「う、うん、わかった」
新城さんは藤崎さんについて何か知っていそうだと思ったが、詳しく聞くのは気が引けたためやめておくことにした。
「それじゃ」
新城さんはそう言って校舎内に戻って行った。
気になることはいくつもあるのだが、今のところはゆっくり昼食にしようと思った。
■□■□■
午後の授業も終わり、放課後。
先生の手伝いを終え、ゴミ袋を持ちゴミ置き場へ向かう途中、数人に壁際まで追い詰められている小さな人影を見かけた。
そっと近づいてみると初めて見る顔ばかりだった。おそらく皆1年生だろう。
入学から一週間も経っていないのに問題を起こすところを黙って見ているわけいもいかないので、声をかけてみた。
「おーい、君たちこんなところでなにやってるの?」
傍から見れば明らかにカツアゲ紛いのようなことをしようとしているのがわかるが、とりあえず確認してみると追い詰めていた全員がバツの悪そうな顔をして、「別に何も…」と言って去って行ってしまった。
壁際に居た男の子が一人その場にへたりこんでいたため話を聞いてみることにした。
「大丈夫だった?ケガとかしてない?」
「は、はい、大丈夫です…」
男の子はそう言って勢いよく頭を下げた。
「あ、うん、それならよかったけど…君、名前は?」
「はい…自分は姫川 洸太っていいます…」
「姫川って…もしかしてこの学校にお姉さんいる?」
「…!!います!もしかして姉のお知り合いですか?」
「あ、うん、同じクラスだけど…」
「そうなんですね…姉がいつもお世話になってます」
「いえいえこちらこそ…ってそうじゃなくて、どうしてあんなに状況に?」
「あ、はい、それはですね…その…同じクラスの子を仲間はずれにしてたので注意したら…」
「なるほどね、でも、ダメなことをダメだと言えるのはいい事だと思うよ?」
「ありがとうございます…あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか…?」
「そう言えばまだ自己紹介してなかったね、僕は檜山 紫苑だよ、よろしくね」
「檜山先輩…。よろしくお願いします!」
「僕はもう帰るけど…洸太くんは?」
「ぼ、僕は部活の見学とかしたいので…」
「そっか、今は部活勧誘の時期か…それじゃあまたね」
「はい!」
僕はそのまま踵を返しそ 校門へ向かった。
そしてしばらくして家に着き、いつも通り1人で夕飯の支度をしていると、『ピンポーン』と、インターホンの鳴る音がした。
時刻は午後6時。
新聞の集金かなと思ってテレビドアホンの通話ボタンを押そうとすると、カメラには藤崎さんが映っていた。