あの日の色は
眠たい
施設では初めての、静かな目覚めだった
いつもより1時間くらい遅く(7時前?)起きて、目の前に置いてある服を着た。
真っ白のワンピースだ。
隣の女の子達の前にも同じような服が置いてある。
これは昨日リンバさんが言ってた「まともな服」だろうか
それにしても、ここに来てからずっとブカブカのTシャツに作業ズボンで生活していたから、こんなヒラヒラした服を着るのは初めてだ。なんなら、前世合わせても初めてだ。
着方が分からずしばらく悪戦苦闘していたら、隣の子が起きてきて教えてくれた。ありがとう、メイアちゃん。ええ子や。
「今日はロスくんとデートなんでしょ?がんばってねー」
どうやら、女子の間でいけないお噂がたっているようだ。
私は女子トークへの入り方がイマイチ分からなかったので、前世で呼んだ絵本の話(シンデレラetc.)等で会話を繋いでいる。
というか、やっぱそうだよな
私は気持ち的にまだまだ自分を男だと思っているけれど、ロスくんはおそらく...
「いいや、考えないでおこう。じゃ、いってくるね」
寝ぼけてる女子達を尻目に部屋のドアを勢いよく開けた
ガンッ
「あいたっっ!」
ロスくんだった。
ーーーー
「ひっでーよなー、わざわざ朝から待っていたってのに」
施設をでて、街への街道を2人でとことこ歩いていると、ロスくんがさっきのことを蒸し返してきた。
「ごめんって、でもさ、私のかわいい格好が朝一番に見れただけでも良かったでしょう」
悪い笑みを浮かべながら冗談ぽく言った
「そりゃ...まぁ...うん...ええ?」
なに一瞬納得しかけているんだ君は
ロスくんも割とちゃんとした格好をしている
いつもの作業着ではなく、ずぼんに黒いベルトを締めて、シックな上着を羽織っている
「それで!今日はどこへ行くんですか?ミスター。」
話題を戻されると面倒なので話を進めることにした。
「あ、おう、今日はこの後街の外れにある丘に行こうと思ってる。この時期になると綺麗なんだ。」
なにが、綺麗なんだろう。
花?それか芝生が青々としている、とか?そんなプロゴルファーみたいな視点で丘を見たことはないけれど...
そんなこんなで、街道を脇道に入って少し行ったところの、小さな丘に到着した。
「エンラ、丘の上まで登ってみて」
なんだろう?言われるまま登っていく
「ほら着いた、下を見てごらん」
天気のいい晴れた空から、視点をずいっと下に持っていく
「うわぁ...すごい!」
街だ。もっと言えば城下町、石作りの家々が立ち並び、それぞれにとてもカラフルな装飾が成されている。
街の中央には大きな噴水が湧き、キラキラと様々な色を反射している。
それは雨無くして生まれた虹のようで、とても美しかった。
「この街はね、この時期、つまり王の誕生祭が近付くと、建物をいろんな色に塗ってお祝いするんだ。
精霊の力を借りているから、一時期的なものだけど、きれいだろ。
これが見せたかったんだ。」
なんだろうロスくん、日を追う事に女子キラーになっている気が...最初の頃のイタズラキッズはどこへ...
そして、聞き捨てならない単語が...精霊...だと...?
これについては後で聞こう。
それにしても、美しい。
この世界に来て、こんな気持ちになったのは初めてだ。
自分の性格が徐々に体に引っ張られていく感覚や、これからどうなるんだろうと不安だけど、この景色だけはずっと忘れずに居ようと思える。
「ありがとうロスくん!」
自分でも驚くほどの笑顔...だったと思う。
「そんなに喜ばれるとは...」
少し照れくさそうに頬を掻いたあと、ロスくんはポケットから何かを取り出した。
「これ、パン。リンバがよそ見してるうちに厨房から取ってきた。朝ごはんまだだし、食べよう」
そうだ、今日は朝ごはん食べる前に出てきてしまったのか
そう意識するとお腹がぐぅ〜と鳴った
こらこら、待てだよ待てだ。
「あ、ありがとう...」
流石に恥ずかしかったが、背に腹は変えられないので受け取った。ロスくんはニヤついていた。
「「いただきます」」
P.S いただきますは教えたら真似しだしただけだよ!
寝る。