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夢へ

死んだと思ったか、ところがどこいッ!!

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 赤い感情。

 怒り、嫉妬、怨み、憎しみそのすべてを、目の前の人間にぶつけろ。

 何者かが、自分にそう囁く。

 逆らうことは出来ない。

 身体が言うことを聞かない。

 そうして育成は、真理愛へと駆け寄った。


「育成!! 何してるのよ!?」

「…へ? 俺は、何をして……」


 育成は理解する。

 自分が何をしたのかを、いやでも理解した。

 まだ生ぬるい、あまり触りなれていないモノの感触。

 涙を浮かべながらも、感情を読み取ることもできない虚ろな目が、自分を見つめる。


「う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


育成は、真理愛から手を引き抜き抱きかかえる。


「真理愛!? おい、真理愛!!」

「な…んで…どう……して…」


 彼が必死に問いかけるも、真理愛は、何度も何度も何度もただひたすらに同じことを、呟き続ける。


「ニャハハ、完全に壊れたみたいだニャン。 まぁ~無理ないニャン、実の兄に殺されるなんて、最凶のバットエンドだニャン」

「お前…何をした…」

「何をって、アンタがしたことだニャン」

「…? どういう……ことだ…」

「う~ん、しょうがないなぁ、特別に教えてやるニャン。 そこの死にかけも、聞こえてるかわからニャいけど、よく聞いておけニャン。 簡単に言えば、お前を操たのニャン」

「操った…?」

「そうだニャン。 私の能力[チアポンポン]は、私のダンスを視認した生き物や男を、操ることができるんだニャン」


 ―――2年前

 燦々と照りつける、真夏の太陽。

 青く澄んだ空を、クジラの様な雲が悠々と漂う。

 その限りない空に響き渡る、青春の音。

 シャルロ・テイマーは、ここ開晴高校の地に立っていた。

 私立開晴高校は、様々な分野の特待生を歓迎しており、数々の大会で、輝かしい成績を、収め続けている学校だ。

 そのため、部活動が盛んな学校でもあった。学校側も部活を推奨し、この学校で部活に入らない=灰色の青春と語られれるほどだった。


「あの! 私をチア部に入部させて欲しいんです!!」


 シャルロは、深々と懇願する。

 一年生の時、シャルロは吹奏楽部であった。

 彼女の両親は、音楽界では、知らぬものはいないとされる天才夫婦であった。

 父は、ギター、弦楽器、管楽器、鍵盤楽器、打楽器、etc、彼に奏でられない楽器はない、もし奏でることが出来ないのならそれは、楽器ではない。

 まさに、「多彩ジ・天才オールマイティー」!!

 母は、天才ピアニストだった。フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクールなどで、幾度となく頂上 に君臨していたが結婚後、今までの栄光を王の座をいとも簡単に譲り愛する人の隣に立つことを選んだ。

 そんな天才と天才から生まれたシャルロもまた、天才であった。

 小学生のころ、鍵盤ハーモニカで、ベートーヴェンの「トルコマーチ」を演奏し、中学では、ほとんどの楽器の奏で方を取得していた。

この学校にも推薦入学での進学、当然誰もが本人を含めて吹奏楽部への入部が当たり前だと思っていた。

 しかし、一年前の大会の中、彼女は運命の出会いを果たす。

その試合に、応援として吹奏楽部として参加していたが、そこで彼女はチアガール魅了された。

統率のとれた動き、キュートなコスチューム、そしてそれを観ている人々の笑顔、士気の上がっている選手たち。


(こんなにも人を笑顔にできるものがあったなんて…!)


 シャルロが、今まで音楽を頑張ってこれたのは、頑張ることで両親が、喜んでくれたからである、しかし、両親以外に笑顔を与えることが少なかった。シャルロの才能をよく思わない人間が、部活には多く、孤立気味だった彼女は驚き、感激した。

 それからというもの吹奏楽部を退部したシャルロは、チア部の入部試験に向けて、ただひたすらに努力をした。青春を、才能を捨て練習に明け暮れた。

 元々運動神経が、良い方ではなかった。そんな彼女が、躍動的な動きが出来るようになるまでに一年近くかかった。

そして、今日その試験を受けようとしている。


「お願いしますです!!」

「君は2年生か、去年は一体何をしていたんだい? まさか無所属なんてことは、ないだろうね?」


シャルロを優等生の女子が、下賤な話をしているバカな男子たちをさげすむような、どこか冷めた目で、見つめてくる部長らしき少女は問う。


「はいです! 前は吹奏楽部に所属していたです」

「ほお~ じゃあの、一年前に吹奏楽部を去った神童とは、君のことだったのか。 まぁ~あまりどうでもいいことか…」


彼女は、余りシャルロに興味がないないようにうかがえる。


「あ、あの~」


シャルロと部長は、後ろから聞こえた、弱々しい声に振り向いた。


「お、すまないすまない、九重君だったかな、彼氏のためにも頑張ってくれ」

「は、はい! よろしくお願いします!!」

 

 九重と呼ばれた少女は、少しオドオドとしている。

 彼女もまた入部試験の参加者で、野球部員である彼氏の応援をするために、入部を希望している。


「……」


 シャルロは、部長の九重へのあたり方が、自分とは違うことに少し腹立たしさを感じたが、実力で見返そうと自分を鼓舞する。


「それでは、始めようか。 先ずは、九重君から」

「は、はい!」


CDレコーダーから音楽が鳴り始める。

 ナウでヤングなミュージックは、聞いているだけで踊りたくなるような、そんな音色を奏でていた。


「よ、あらりゃ? あわわ!!」


 しかし、九重は軽快な音楽とは、逆に油が切れかけたブリキのようなダンス(?)を行う。

 そう、圧倒的練習不足。


(何なんですかあのうごきは、ホントに受かる気あるのかです)


 シャルロは、こみ上げてくる怒りを飲み込んだ。


「……」


 何も語らず部長は、只々九重をみる。


(こんな奴は、早くやめさせるべきです。 踊っている方も見ている方も得しないです)


 しばらくすると、音楽がフィニッシュを迎えた。


「ふぅー」


 額にかいた汗を腕で拭う彼女からは、成し遂げた感だけが強烈に伝わってくる。


「いやいや中々にいいものを、見せてもらったよ」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ、これからも頑張ってくれ!」


賑やかな二人を見てシャルロは困惑していた。


(な、何故あれで受かるんです? わけがない分からないよです!)


 彼女の合格に納得のいかないシャルロの頭の中を疑念が飛び交った。

 あのダンス…否、ちんちくりんのどこに合格の要素があったのか、彼女には理解ができなかった。

 困惑しているシャルロへ、部長が呼びかける。


「さ、次は君の番だ」

「え、あ… 頑張ります!!」


 この試験の基準は謎に包まれている。その恐怖は計り知れない。

 しかし、シャルロの中にある「今までの全力を出し切る」という強い意識いし、自信が恐怖を殺す武器となる。

 彼女は今暗闇の荒野に刃を突き立てる。


忙しくて投稿できませんでしたすんません。Orz

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