説明と告白。
「なっ……名前は思い出したら教えるよ。それより、ここまでの経緯を話してくれないか……?」
と、俺はショックを隠し、誤魔化した。
「分かりました」
「……多分あなたとは長い付き合いになるので、敬語は使わなくても……いいかしら?」
アルテミアは緑の瞳を真面目な色に変え、話す準備をする顔で俺に聞いた。
「ああ。全然いいぜ!何かわからないけどよろしくな、アルテミア!」
俺は堅いのは慣れなかったので二つ返事でOKした。
ーーまた会う日まで。ハルト。
あの言葉が頭をよぎった。
…………!
「名前はハルト!風野ハルトだ!」
俺は思い出した名前をアルテミアに伝えた。
「うん。よろしくね!ハルト」
アルテミアは天使のような笑顔をして見せた。
ここに来て良かったと思ってる自分がいる。
何故だろうか。そう言えば俺はずっと寝っ転がっていた。そろそろ起きようか。
……ってずっと膝枕だったじゃないか!!!
起きないでおこう。紳士として。……という切なる願いは無かったことにし、起き上がってアルテミアの言葉に耳を傾けた。
「で、ここまでの経緯だけど、今 ルーメンで思い出させた通り、あなたは人に会いに行ったわ。誰にお願いされて訪ねたかは覚えてる?」
「……覚えてない」
覚えていないのだ。誰に頼まれて、誰に会いに行ったのか分からないのだ……。
そんな無力な自分を知りたくなかった。
「まあ、無理ないわね。それで、屋敷に誰もいなくて、引き返そうとした所を老婆に引き止められたわ。そしてーー」
アルテミアは少しだけ口篭り……
「老婆はあなたに、エナジードレインという呪術をかけた。握手をした時にね」
「呪術!? ひっ……」
俺は純粋な恐怖をそのまま口から出した。
「もう大丈夫よ。私が治したわ」
「エナジードレインっていう魔法は、呪術の部類に入るの。まあ難しいんだけど、即効性の魔法と違って、呪術は時限爆弾みたいなものかな?」
なるほど。わかりやすい。
「ーーそれで エナジーについてなんだけど、エナジーっていうのは人間が生きていく力の事。人間はエナジーを使って日々、生活しているわ。エナジーは睡眠によって回復できて、エナジーが無くなると死ぬか、瀕死になるかの二択ね」
「じゃあ、アルテミアにも、エナジーはあるのか?」
と、聞いた。……いや、聞いてしまったの方が正しいか。でも、この質問は今後のことを知るには避けては通れない道ではあった。
「……いいえ、私にはエナジーはないの。人間ではないから」
「えっ……じゃあ……」
俺は隠したかった動揺を隠せなかった。
「私はエルフ。人間と契約をして人間を守る生き物」
「ハルトがいた世界では、ハルトはあと少しで死んでしまうわ。普通はそのまま死んでしまうのだけれど、選ばれた人間は、人間とエルフが繋がる意識世界に飛ぶの」
「え? それじゃ、俺は……」
次の言葉は誰もが男なら誰でも夢見る言葉だった。
「そう。選ばれた人間よ。そしてーー」
「私と契約して、新しい世界に行くことになったわ。」
え……。
俺は絶句した後……
「ええええええええぇぇぇ!!!!」
と、大きく叫んだ。