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プロローグ
本格的な仮想世界へのフルダイブが可能となった、HMD型VRゲーム機――通称FVRハード――の最新型が発売されて、二年の月日が経過したが、日本での普及率はあまり芳しくない。その証拠に、全世界で配信されている二百以上ものタイトルの中で、国ごとに開発・配信されたタイトルの数の比率を海外と日本で比較すると、8:2と少ない。それ以前に、日本の比率が2もあるかどうかも、怪しいかもしれない。そう断言してしまえるほど、今の日本のFVRゲーム業界には、活力が存在しなかった。
もっと言えば、衰退の兆しが見えているようだった。一部では『日本でFVRゲームが覇権を握るには十数年を要するだろう』と言われているくらいだ。
相変わらず十数年前と変わってないな――
そんなことを思いながら、男はハードを頭に装着し、仮想世界の中へとダイブした。