第9話 第三部隊、その名は「サードステージ」
「ほほう、あのディミータが押されているとはね」
私の「金色の瞳」を持ってしても、ディミータを圧倒する斬撃を見きれなかった。
「風紀委員会も良質な戦闘員を保有している。ディミータでは勝てないだろう」
後ろ手を回し、直立不動で戦闘を見守るダークエルフの口から率直な意見が漏れる。まったく正直な部隊長だ。
二名の闘士が相対するすり鉢型の戦闘訓練場は、まるで臨場感たっぷりの小型コロッセオだ。いいなぁ、これは良い施設だ。特務機関にも欲しいなぁ。
貴賓席の椅子は柔らかで腰の座りが良い。手摺を揉んだり掴んだりしてみる。しっとりした天鵞絨の手触りも素晴らしい。
「ネイト君も座りたまえよ。もっふもふの、ふっかふかだぞぅ」
「断る。私は護衛だ。即時対応が出来なくなる状況を自ら作り出すほど愚かでは無い」
「あ、そう」
私とネイトはリングを見下ろす貴賓席で、我が「錬金術の騎士団」の副隊長と、風紀委員会公安課の隊員の模擬戦を見守っていた。
魔導院風紀委員会の本部ビルの地下にある、魔陽灯の灯りに照らされた舞台のようなリング上で行われている激戦を見物しているのは、我々を含めて数名しかいない。
リング上の黒猫ディミータと相対する、黒い目出し帽を被った戦闘員の表情は窺い知れない。
男の身のこなしは、猫人族のディミータの動きに良く似ているが、身体のキレは段違いだ。男女の違いなんて軽々しい物では無く、絶対的な戦闘能力の違いを感じる。
――男のナイフがディミータの胴をアッパーの様に斬り上げる。
――仰け反る黒猫が床を蹴り、後方に蜻蛉を切る。後方宙返りをしながら跳ね上げるような蹴り放つ。
――目だし帽の男は上半身を反らす最小限の動きだけでディミータの蹴りを避け、一気に間を詰める。
「おほっ! 今の見たかね? サマーソルトキック、って言うんだろう? カッコイイねぇ、見事だねぇ」
「今のは避けた男を褒めるべきだ。さすがは『サードステージ』といったところか」
魔導院風紀委員会公安課の対テロ対ゲリラ部隊である「第一部隊」、対諜報機関部隊である「第二部隊」、そして戦闘に特化した特殊作戦群たる「第三部隊」の三つの部隊は、風紀委員会の選りすぐりの人員で組織されたエリート部隊だ。
特に第三部隊は、大陸を暗躍する犯罪組織や広域暴力団と日夜、闘争を繰り広げる百戦錬磨の猛者共だ。
「模擬戦と言えども、こりゃあ双方、本気だね」
「当然だ。私は勝負とあらば、腕相撲にだって本気であたる。隊員たちにも徹底している」
「ネイトと腕相撲か……そりゃ気の毒になあ」
特殊清掃部隊の隊員たちに心底同情した。私が作ったとはいえ錬金仕掛けの腕が相手の腕相撲は骨が折れるだろう。文字通りに。
「決着が付いたな。ディミータの負けだ」
――着地した隙を衝かれ、無防備になったところにショルダータックルを受ける。
――マットに仰向けに倒れ込んだディミータの腹に、男の強烈な掌底が打ち込まれる。
――黒猫の身体が跳ね上がったが、そのままリングに沈んで動かなくなった。
リングサイドからだろうか。「こらーっ! ディミータ! たてぇー!」と、威勢の良い女性の声援が聞こえた。
リング上で身動ぎもしないディミータが、担架の乗せられ運ばれて行く。あれほどの格闘技術を持つ戦闘員が相手では、偵察、索敵に特化したディミータではミスマッチだったか。バックラーを連れてきた方が良かったかな。
「ところでルルティア君は、一体どこで何をしているんだい?」
「ルルティア主任は、リングサイドでセコンドに付いている」
「彼女、こういうの嫌いじゃなかったかい」
「模擬戦や格闘技は好きなんだ。知らなかったか?」
「知らなんだなぁ。よく分からないなぁ」
血の流れる正真の戦闘を厭う癖に、模擬戦は好きなのか。どうにも不思議な価値観だ。
パラパラと拍手が漏れる。風紀委員会サイドからだ。あちらの御偉方は、この結果に御満足なのだろう。
私の率いる魔導院清掃局特務機関特殊清掃部隊、通称「錬金術の騎士団」と魔導院風紀委員会は犬猿の仲とは言わずとも、あまり良好な関係とは言えない。我々の「仕事」は、風紀委員会の性質に合わないからだ。
魔導院にとって都合の悪い「汚物」を「掃除」するのが特殊清掃部の「仕事」だ。
魔導院法に基づいて「正義」と「秩序」の名のもとに「悪」を捕え、「法」で裁く魔導院風紀委員会とは似ている様で全く違う。
とはいえ、同じ魔導院の一機関である事には違いなく、今回の模擬戦は風紀委員会の要請を受けて行われたのだが、結果は当方の敗北だ。だが、良い戦闘データが取れた。ルルティア君が冷静に仕事をしていてくれたらの話だが。
「さぁて、帰ろうかね。ディミータの治療と調整もしなくちゃね。って、君、なんでジャケット脱いでるの」
「私も出る」
「あのねえ、ネイト。君が出ること自体が反則行為だよ。この場はアチラに花を持たせるのが得策だと思うがね」
「我々は戦るからには勝つ。それに、あの戦闘員は本気を出していない。もっと良いデータが欲しくはないか?」
そりゃあねえ、と言いかけたが、リングに向かう女闘士の背中に殺気に近い気配を感じ、肩を竦めるしかなかった。
「頼むよ。くれぐれもやり過ぎない様にね。後始末が大変だ」
私の苦言を聞いてか聞かずか、ネイトは制服の下に着込んでいた黒いレオタード状の錬金強化された戦闘服姿でリングに上がった。
錬金術で強化された私の目はゴーグル越しにもかなりの距離を見通す。研究主任のルルティア君と部隊長のネイト君が何やら話ているのが見てとれるが、何を喋っているのかまでは聞こえない。仕方ないなあ、私も行くか。ああ、面倒臭い。
***
「アイザック博士。良いのですか? 現在、『錬金仕掛けの腕』は調整中です。戦闘用調整は十分とは言えません。本来の六割程度の性能しか発揮出来ない状態です」
さっさとリングに上がった隊長の姿を、心配そうに見上げるルルティア主任が私に告げた。
「ルルティア君は心配性だね。まあ、ネイトにとっては、それ位はハンデのうちさ。それより相手の御都合はいかがかなあ?」
黒い覆面の男は漫然とストレッチを繰り返している。ストレッチの合間にコンバットナイフ振り回す体捌きは、見事なデモンストレーションを見ているような気にさせる。
準備体操を終えた戦闘員の覆面から覗く青い瞳、氷の様な視線がネイトを睨め付ける。私は溜息を吐くしかなかった。全く、この戦闘狂どもめ。
風紀委員会側の様子を窺った。あちら側のセコンドたちも皆、一様に呆れた顔をしている。目があったセコンドの一人が苦笑いを返してきた。私は大袈裟に両手を広げて肩を竦めて見せた。
「ネイト! 錬金仕掛けの腕を壊すなよ!」
私がダークエルフにかけた言葉が戦闘の合図となった。
――覆面の男のナイフがネイトの喉元を襲う。稲妻の如き速度。
――掌を突きだして受け止めるネイト。
――間髪を入れず、連続で突き出されるナイフを悉く鋼鉄の腕で弾く。
弾かれたナイフが、的を外れた矢のように飛んで来る。
「おおっと! 危ないなぁ!」
頭を下げて慌てて避けた。刃を潰したナイフと言えども直撃を受ければ大怪我をしかねない。
右腕一本で猛攻を防いだダークエルフが戦闘員に告げる。
「覆面を取れ。本気を出さねば私には届かん」
返答の代わりに鋭い上段蹴りがネイトの側頭に伸びる。長身の体躯からは想像し得ない柔軟性に舌を巻いた。
――ネイトは事も無げに錬金仕掛けの腕で鞭のような蹴りを弾く。
――男は弾かれた反動を利用して、逆脚の脛をネイトの腹部に叩き込む。
――その神速の蹴りをも鋼鉄の腕は防ぎ切った。
――隊員は、遠心力に振り回され一回転して距離を取る。
一連の動きは、さながら華麗なダンスのようだった。それは正に死の舞踏だ。
「踊れ、第三部隊。私を楽しませてみろ」
女闘士は両腕を下げ、顎をしゃくった。ネイトが挑発とは珍しい。いや、誇り高いダークエルフは小細工などはしない。純粋に戦闘を楽しんでいるのだろう。
男は覆面に手を掛け、引き剥がすように投げ捨てた。アルビノを連想させる白い髪。その髪に埋れた猫のような耳が、彼が獣人族だと物語っている。
青い瞳が印象的な端正な顔立ちだが、数々の修羅場を潜り抜けた者特有の、研ぎ澄まされた刃の様な雰囲気を青年は纏っていた。
「さぁ、私を満足させてみろ。気に入ったら見せてやる。私の本気を」
「錬金仕掛けの腕のネイト」が、ゆっくりと両腕を、五指を広げる。漲る闘気が錬金強化された鋼鉄製の両腕に伝達される。
場の空気が変わる。私のような非戦闘員でも感じる闘争の空気。
彼女こそ、闘技場の女帝。戦場の女主人。
素晴らしい、素晴らしい作品だ。あれこそ戦闘用の芸術品だ。
「たっ・いっ・ちょー! キャー! かっこいぃー! 痺れるゥ! 憧れるゥ!」
ルルティア君、雰囲気が台無しだよ。
白い猫が沈み込む様な態勢を取る。猫が獲物を狙う仕草を連想したが、そんな生易しいものでは無い。あれは捕獲者の動き。あの姿勢は豹か虎のそれだ。
虎? 虎か。あの若者、もしや「虎人族」か。
獣人族は、古代の錬金術が生み出した合成生物と考えられている。
例えば、愛玩動物である猫をベースに、失われた古代の錬金術で生み出されたのがディミータのような人猫族だ。
人猫族の他にも、犬をベースにした人犬族、熊がベースの人熊族、低級な竜がベースの竜人族など、様々な獣人族が存在する。
何の目的で獣人族が生み出されたのか議論は絶えない。ベースとなった獣の特性を生かした労働力と見做すのが有力な説だが、私には、そんな些事よりも失われた古代の錬金術に興味がある。
だが、どうやら錬金術によらず、大陸に古来から生息していた獣人族も存在していたのが分かってきたのだ。それが「純粋種」たる「人狼族」や「虎人族」だ。
彼らは自分の意思で、己の身体を「人から獣」、またはその逆に変えることが出来る。そこが錬金術で生み出された獣人族と大きく違うところだ。通常の獣人族は、自由意思で姿を変化させることは出来ない。彼ら普通の獣人族は、獣化深度の度合いで、その姿や能力に大きな影響が出るのだ。
ディミータの獣化深度は浅い。彼女の特性や知能は人間族に限りなく近いので、意思の疎通が容易で学習能力が高い。反面、猫科の獣特有の敏捷性や機動性は、獣化深度の深い獣人族に比べて一枚落ちる。
それが人狼族や虎人族の場合は、獣化を己の意思で自在に制御出来るので、相対する敵に対して特性を変えられるのは非常に有効であると考えられよう。
蹲るような姿勢のまま、戦闘員の姿が変化していく。
人から虎へ。人間から獣へ。白く強い体毛が全身を覆う。冷厳端正な顔は猫科の猛獣のように変化した。その姿は虎人。東洋の伝承に残る白き猛虎、「白虎」のようだ。
「第三部隊の白虎」対「錬金術の騎士団のネイト」の戦い。これは見物だ。
「ちょっと! 何なの? 何? この展開?」
「おや、これは負け犬のディミータ君。あ、失礼。負け猫だったかね」
「ドク……眼鏡割んぞ。メガネ」
医務室で手当てを受けたディミータが戻って来た。模擬戦程度で重傷を負う様な黒猫では無いが、時折、腹部を押さえている。まだ痛むのだろう。しかし口が悪い娘だなぁ。育て方を間違えたかなぁ。
「何でネイトが、あいつと闘りあってんのよ?」
「ディミータの戦いを見て、熱くなっちゃったのよ!」
ルルティア君が両拳を握りしめて、空気を相手にジャブを繰り出す。存外に熱い御嬢さんだったんだね。初めて会った時には、花も恥じらう内気な乙女だったのに。育て方を間違えたかなぁ。
「部隊の恥さらしィータ君の尻拭いに、仕方なく出てきたんだろう。無能な部下を持つと管理職は大変だ。気の毒になぁ」
「ドクゥ……メガネェ」
――半ば虎と化した若者が、着ていたジャケットをネイトに投げつける。
――視界を塞ぐジャケットを撥ね退けた女に虎人が襲い掛かる。
――弧を描いた鋭い右フックが鋼鉄の腕に叩きつけられる。
――錬金仕掛けの腕が攻撃を受けきったように見えた。
女闘士の身体が勢いのままマットに叩きつけられる。巨木が倒れたような轟音がコロシアムに響く。会場全体が揺れたかと錯覚させるような破壊力。
「おっ、おい! やり過ぎだ。加減しろ!」
風紀委員のセコンド陣が悲鳴のような大声を上げた。
私は観客席に座る風紀委員会のお偉いさん方を見上げた。彼らは立ち上がって何事か喚いている。
ネイトが叩きつけられたリングの床が崩落した。白虎が穴の下の女闘士を見下ろす。
「立て。錬金術の騎士団」
「ふふっ……良く言った。第三部隊」
――立ち上がった女が、自らが落ち込んだ穴の淵に手を掛ける。
――倒立した次の瞬間、腕立て倒立の状態から錬金仕掛けの腕を使い、驚くべき高度に跳ね飛ぶ。
――虚を衝かれた虎が女を見失う。血の色の髪が宙を舞う。
――虎の背に着地するかの様な両足蹴りを放ち、隊員の背を床代わりに前宙して着地。全体重を掛けた蹴りを一点に受け、堪らず床を舐める虎人。
――空気を切り裂くような追撃。鋼鉄の拳が床を這う隊員の背に打ち込まれる。
――致死的な打撃を横転で避ける虎。寸前まで虎がいた地点に、新たな穴が穿たれる。
大きく肩を上下させてマットに這いつくばる虎人を見下す、ダークエルフの宣告。
「気に入った。気に入ったぞ。では、見せてやろう。私の本気を」
仰け反るほどに身を反らし、右の「錬金仕掛けの腕」を手刀の形に整える。左の「錬金仕掛けの腕」を虎人族に向ける。殺意に輝く紅玉石の瞳。
「止めろ、ネイト! そこまで! そ・こ・ま・で・だっ!」
慌ててリングによじ登り、二頭の野獣の間に入った。割って入るタイミングを間違えたら殺されかねない。
「いやぁ、ホントにスイマセン。この野獣娘は頭に血が上り易くて。ここの修理代、清掃局が持ちますんで、どうか御容赦下さ~い」
私は両手を大きく振って、観客席のお偉方にも聞こえるように大声で戦闘終了を宣言した。
特殊清掃部隊の隊長が、口の端に流れる血を拭いもせず、冷たく燃える赤い瞳で私を睨んでいた。
「……アイザック。水を差したな。覚えていろよ」
「ネっ、ネイト……君は私の部下だぞぅ。覚えておきたまえよ」
不機嫌っぷりを隠しもせず、ダークエルフは観客席に戻って行ってしまった。凶暴我儘娘め。育て方を間違えたかなぁ。
「キミも大丈夫ですか? 失礼しましたね。ウチの娘、気性が荒くて困ります」
片膝を突いた状態で、虎から人間に姿を戻しつつある青年に声を掛ける。鍛え上げた肉体に走る無数の傷跡が、壁に入った亀裂を連想させる。
「……あの女の名を……教えてくれ」
井戸の底から響くような低く冷たい声だ。この声で脅されれば、どんな凶悪な犯罪者も恐れ戦くに違いなかろう。
私は一瞬、逡巡したが、コードネームなら問題あるまい。
「彼女の名はネイト。『錬金仕掛けの腕』のネイトだ」
無言で立ち上がった青年の逞しい胸筋が目の前に来た。切株を連想させる太い首から下がる認識票が目に入った。猛虎の首にドッグタグ。悪い冗談だ。
金属製のプレートに刻まれた文字は「C・R・A・C・K」だ。その肉体に刻まれた亀裂の如き傷のことを指すのか、それとも隊員が麻薬捜査官なのか。
特殊戦闘群の隊員は「覚えておく」と、一言だけ呟いてリングを後にした。その後ろ姿を見送ってから、私もリングを下りた。ああ、怖い怖い。
「ドク、あんた見かけによらず勇気あるねぇ。飛び込み自殺に行ったのかと思ったよ」
「前門の虎、後門の狼に同時に襲い掛かられる様な心境だったよ。人生は何事も経験だね」
嘯くにも体力を使う。一日分の精神力を使い果たしてしまった気分だ。この後は、確か学院都市の錬金化計画についての説明会だったな。あぁ、面倒くさい。
そうだ。ルルティア君に説明会を任せてしまおうか。うん。これは名案だ。
「ねえ、ディミータ。ルルティア君は何処に行った?」
「ネイトを追いかけて行ったよ」
あっさりと私の計画は根底から崩れ去ったわけだ。
「ふうん。あの二人の話が合うとは思えないけどね」
「ネイトとルルティアは六英雄の話だけで夜通し討論出来るんだよ。朝まで六英雄よぅ」
「ははぁ、六英雄マニアか」
魔導院最強戦力と魔導院最高頭脳の組み合わせ。奇妙な組み合わせだが、意表を突いた組み合わせが劇的な科学変化を齎すのは錬金術でも良くある事だ。
「仕方ないな。じゃあディミータ。護衛を頼むよ」
「えぇえぇえ!? 酷いわぁ! 私、怪我人よぅ。傷ついた可哀そうな猫なのよぅ」
長い尻尾がバタバタ揺れる。不機嫌指数が急上昇だ。
「だってネイトは機嫌悪くして帰っちゃうしさ」
「秘書官のメテオラはどうしたのよ?」
「彼女は先に会場入りしてるさ。ほれ、時間が無い。私に何かあったら困るのは君たちだぞ」
「うわぁ露骨過ぎるパワハラ。労基に訴えるぞ。動物愛護団体に駆け込むぞ」
魔導院の労働基準局なんぞ、私の政治力でどうにでもなるが、愛護団体は少々厄介だ。仕方ない。ディミータ用の奥の手を使う他あるまい。
「海王都市の魚の缶詰でどうだ?」
黒猫の耳が「魚の缶詰」という単語に敏感に反応する。尻尾の動きが緩慢になる。
「はうっ……つ、つなかん……。ふぅっ、二缶なら話に乗ろう」
「ようし。取引は成立だ。宜しく副隊長」
「なうぅ~」
ディミータの買収は成功した。さて、説明会場へ向かうとするか。