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7.これは現実だ、自分のやったことをソッコー認識しやがれ!

「おい宮本、いい加減起きろ!」

「う、うん、痛いですよ、先輩」

 僕は向こうずねに激しい痛みを感じた。起きろって、何で先輩が僕の部屋にいるんだろう。僕は重い瞼をむりやりこじ開けて辺りを見回す。あれっ、ここ僕の部屋じゃない。応接室だ。僕の目の前に先輩の足が見えた。どうせ、先輩に思いっきり蹴られたに決まってる。

「何で、僕が応接室にいるんですか」

確かに夢の中の僕は応接室にいたんだけれど。

「お前、夢オチにするつもりか! まぁいい、とっととこれを食え」

僕の言葉を聞いて先輩は不機嫌そうにそう言って、キウイ位の大きさのしわくちゃの物を僕に投げ落とした。何となく乾燥した果物っぽい。応接室で寝ているってことは貧血で倒れたのかな。それで鉄分補給ってことか。先輩、意外と優しいんだな。でも……

「何の実ですか、コレ」

確かに鉄分はたくさん補給されそうだけど、実はアブナい実だとか言いませんよね。僕がそう言うと、先輩は疑ってるのかとでも言いたげに一言、

「ガザの実だ」

と言った。

「ガザの実! ガザの実がこの地球にも存在するんですか?」

それとも……

「存在しねぇよ。それよりお前まだ夢の中にいるとでも思ってんのか。これは現実だ、現実っ!」

んで、自分のやったことをそっこー認識しやがれ!! と先輩はそう叫んだ。

「現実?」

僕は首を傾げながらガザの実をおそるおそる口に放り込んだ。実はこの実を僕は今まで2回食べたことがあるんだけど、そりゃもうハンパなく酸っぱいのだ。酸っぱくて身体が震えるという経験を僕はこの実で初めてした。

「あ、甘い。すっごく美味しい!!」

 だけど、予想に反して乾燥したガザの実はとろける様な甘さ。

「ああ、良かった。やはり乾燥させて正解でしたね。ガザの実は酸っぱいのが一番の難点ですからね」

すると、そこに聞き覚えのある声が聞こえた。ううん、聞き覚えがあるなんてもんじゃない。自分の声そのもの。

「お久しぶりです、美久」

驚いて声のする方を見ると、先輩の横には夢の住人だったはずのビクトール・スルタン・セルディオが立っていた。

「えっ、えええーつ!!」

「だから、最初から夢じゃねぇってんだろ。おいコラ、倒れるなっ、頼むから倒れるなよ! 現実逃避するんじゃねぇ!!」

あまりの衝撃の事実に、意識を手放しそうになった僕に先輩はすかさずまた蹴りを入れる。

「生きてたんですか……」

僕はセルディオさんにそう言うのがやっとだった。

「ええ、しぶとくおかげさまで。尤も、あなたがあそこでみまかっておられたら、私も無事では済まされなかったでしょうけど。お互い様です」

するとセルディオさんはそう言って笑った。

「それにしても、さっきから足蹴にばっかするなんてひどいですよ、先輩」

それから僕がそう抗議すると、

「ばっきゃろー、お前なんか足で充分だ。それに、俺の手はそのお前のせいで塞がってんだよっ」

先輩はそう言って、応接室の絨毯にぺったりと座り込んでいる僕の方にさっきから先輩の抱えているモノを僕の鼻先に突きつける。

 そこには、気持ちよさそうに指を吸いながら寝ている0歳児が!! 僕の中で、さっきの夢の出来事が瞬時にフラッシュバックされる。

 で、セルディオさんが夢でないのなら、もしかしてもしかすると、さっきの夢も夢じゃなかったの??

 じゃぁ、じゃぁ、この人って、僕が魔法でちっちゃくした中司さんってこと!?


 Oh, my God!! 僕、やっぱりもう一度倒れて良いですか、先輩……












 

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