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4.こうなりゃあいつも巻き込んで

「おぉ、薫。なぁ、今仕事大丈夫か?」

『うん、まだ月末じゃないしね、大丈夫だよ』

それに前よりみんな動いてくれるしね、と薫は言った。そりゃそうだろ、会長の孫で未来の社長夫人(とは言え、仕事を辞めたくないと言い張りやがって、まだ結婚はしてないんだけどな)を率先して顎で使える奴がいたら見てみたい。

「じゃぁ、お前体調悪いとかなんとか理由付けて早退して応接室に来い、頼みたいことがある」

暇だと聞いてそう言った俺に、薫は当然? 不満の声を上げた。

『ええーっ、理由は?』

「理由は……言えない」

宮本が魔法使って、クライアントを赤ん坊にしてしまった? んなこと、電話なんかで簡単に説明できるかよ。

「緊急事態なんだ。頼む」

それに対して俺は、いつになく低姿勢で頼んだが、

『今じゃなきゃダメなの?』

と、薫からは心底ウザそうな返事が返ってくる。それを聞いて、

「ぐだぐだ言ってないで早く来いよ!」

とつい怒鳴ってしまった俺に、

『横暴男!』

と言葉を買い取って薫は乱暴に着信を閉じた。あちゃー、やっちまった。あいつ来なかったらどうしよう。俺の背中に冷や汗が流れる。ふと横を見ると、ビクトールがそれを見てニヤニヤ笑ってやがった。

「何がおかしい!」

「いえ、別に」

イラつく俺に、ビクトールは心底おもしろそうにそう返す。ったく、こいつなんでこんなに嫌味なんだ。ああもう、ムカつくっったらありゃしねぇ!!

 俺がイライラと中司ガキを抱きながら応接室を歩くこと15分、ノックの音がした。俺はすかさず扉に背を向けて、

「薫か?」

と聞く。薫だったらいいけど、他の奴の可能性もあるからだ。すると、

「うん、私。一体なにがあったの。一応気分が悪いからって言ってきたけど」

と言いながら、薫が入ってきた。

「まず、ドアを閉めろ」

「閉めたわよ、ちゃんと」

俺はその言葉を聞いて徐に薫の方を向いて、

「そうか。で、こいつがお前に来てもらった理由だ」

と、薫に中司ガキを見せた。薫は目を丸くして一瞬フリーズした後、満面の笑みで、

「かわいい~」

と、言いながら包んでいるスーツごと中司ガキを抱き上げて頬ずりした。

 薫はその後、

「ねぇ、宮本君ちょっと代わりに抱いててくれる?」

と言い、

「あ、いえ、私は……はい」

ビクトールは、すぐ横の床にぶっ倒れている宮本本人を横目で見ながら、自分が宮本ではないとなぜか言い切れずに、中司ガキを薫から受け取った。

 そして、薫は俺をキッと睨むと、

「この浮気もの! もう、婚約解消する!!」

と言いながら、俺をグーで思いっきり殴りやがったのだった。

 

 

 

 

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