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10.時限爆弾を背負った脱出作戦 2

 歩くほどにしっかりと食い込んでくる、だからといって、荷物みたくその辺に放り出せない。それはまさに『命の重み』そして、僕のしたことの『責任の重み』に他ならない。とは言え、僕も自分が魔法が使えるとちゃんとわかっていたら、迂闊にこんな大魔法なんて詠唱しなかったに違いない。

 違う、知らなくて良かったのかもしれない。もし知っていたら、僕は時々見ているオラトリオの夢の中でセルディオさんが使っている大魔法をきっちりチェックして、その効果も考えないで、もっと取り返しのつかない魔法を詠唱していたかも。

 どっちにしてもこの今が現実なのだから、とりあえず急ごう。中司さんにとっても、この時期にこんな化繊のテントみたいな所に長時間入れられているのはイヤだろうし。

 そう思いながら会社の廊下を歩いていると、後少しで通用門を出ると言うところで、谷山先輩が立ち止まる。僕が慌てて彼女の顔をのぞき込んだとき、

「おう、薫ちゃんどうした?」

と、廊下横のブースから声がした。守衛の村井さんだ。彼は僕らの環境が一瞬にして変わっても態度をぜんぜん変えなかった人の一人。彼は社員みんなの良きおじさんなのだ。

「うん、何でもないです」

すると、そう言いながら谷山先輩は僕に目配せした。ああ、一応伏線引いておく訳ね。

「何でもないですじゃないですよ。谷山先輩、すぐに我慢しちゃうんだから」

だから、僕は彼女に合わせて一芝居打ってことさらに谷山先輩の体調不良をアピールしてから、

「じゃぁ僕、谷山先輩を送ってきます」

と言って彼女の肩を抱く。

「そう言ゃ、薫ちゃん顔色良くないな。んじゃ、お大事にな。宮本君頼むな」

村井さんはすっかり真に受けてそう言って手を振ってくれた。

「ありがとう、じゃぁお先に失礼します」

「失礼します、村井さん」

僕たちはそう言ってやっとこ会社を出た。そこで改めて谷山先輩の顔を見る。外の日差しに照らされたその顔はいつもより白い。

 もしかしたら、谷山先輩は本当に気分が悪くて立ち止まったのかも。


 それから車にたどり着いた僕は、まず後部座席のドアを開けて中司さんを降ろした。そして、

「谷山先輩、助手席だと丸見えだから、後ろに乗ってください」

と言った。

「えっ? お店わからないでしょ、私が運転するわ」

「何言ってるんですか、送られる人が運転したら、シャレにならないでしょ? まだ、100%会社を出た訳じゃないんですよ」

「あ、そうね。じゃぁ、鍵貸してくれる?」

谷山先輩はそう返して、僕から車の鍵を受け取った後、助手席に座り、財布から何かを取り出すとエンジンをかけて、ナビをいじくり始める。

「これで、OK。宮本君、ここに行って」

と言うと、僕が中司さんを降ろした方とは反対のドアから車に乗り込み、中司さんを簡易キャリーから出し、抱き上げる。それを見届けて僕は、ドアを閉めて運転席に乗り込んだ。

 僕は『ナビ様の言う通り』に走り出した。谷山先輩が打ち込んだ目的地は『赤ちゃんキャッスル〇〇店』赤ちゃん洋品の大型専門店だ。

「谷山先輩、何でこんな店知ってるんですか?」

(会員証まで持ってるみたいだし)

「私この店の会員なのよ。あ、何か変なこと考えてない? 絵梨紗やデビ君の物を買うのによ」

その質問に、谷山先輩は少々ふくれっ面でそう答えた。クラウディアさんに日本語の読み書きは荷が重いし、でも絵梨紗ちゃんはまだ会員登録出来る歳じゃないから、谷山先輩がサポートしているという事だった。でも、何でそこで怒らなきゃならないんだろ。

 そして、ナビ子さんが美しい声で

「目標が近づきました。これでナビを終了します」

と言った直後だった。

「ふぐっ、ぐすっ、おあっ、おんぎゃぁ~!!」

中司さんがけたたましい声で泣き始めたのだ。


-た、タイムアップだ……-






 

美久たち、無事に社外に出ることが出来ました。


しかし、お店に着く前に時限爆弾はあえなく爆発。


次回は、涙との闘い?

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