表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/35

1.ライセンス契約のはずが……

「じゃぁ、幸太郎君頼むね。ホント感謝してるよ」

俺は、電話口で拝み倒しているのが判るような口調のタケちゃん(対外的には社長という)との電話を終えてため息をついた。

 タケちゃんは今抱えている原稿を落としそうになってて、編集者の野郎にカンヅメにされているらしく、身動きがとれないらしい。てな訳で、新製品のライセンス交渉をいきなり俺と宮本の二人でしてくれと言うのだ。そりゃ、市原健と言ゃぁ今や押しも押されもせぬ流行作家様だけどさ、言っとくけどこっちが本業だぜ、編集者さんよ!

 こんな時、本来なら俺らなんかが出なくてもタケちゃんの父親である会長が応対すりゃぁ済むんだが、あいにく会長は奥さんの実家リヒテンシュタインに旅行中。帰国するのは一ヶ月先だと。まったく、あの親子は揃いも揃ってどうやって会社から逃げ出そうかと算段してやがるんだからな。

 交渉相手の中司彰教なかつかさあきのりと言う男は29歳、その会社の社長の息子で次期社長だという、俺たちは姻戚関係だけど、なんか似たような立ち位置の奴だ。

 ただ、かなりのイケメンなのにもかかわらず、大の女嫌いだという。タケちゃんが、

『お茶も美久君が運ぶように頼んであるから』って言うんだから相当だ。

 ま、交渉自体には何の支障もないだろうけどと思いつつ応接室に向かう。すると、中からものすごい怒号が聞こえてきた。応接室は元々、音が漏れにくい構造になっているはずだから、それを超える声ってばどんだけ怒鳴ってるかって話だ。俺は慌てて、

「宮本、お前いきなり客を怒らせてどーする!」

と、言いつつ応接室に飛び込んだが、一歩遅かった。

宮本は、真っ赤な顔でプルプルと小刻みにふるえながら、

「あなたみたいな分からず屋は、もう一度赤ん坊から教育し直したらいいんです」

と言って両手を緩く開いて胸の前に出し、

<汝その命の歩みを遡らせよ、Reverse>

と、中司氏に何かの魔法を詠唱しちまったのだ。

 そして、その次の瞬間俺が見たものは、大魔法を使って伸びちまった宮本と、中司氏のスーツにくるまってきょとんとしている一歳にも満たないだろう赤ん坊だった。


 


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ