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悪女から聖女に育て直します!  作者: 久世千景


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第12話 私のお友達は、この中にはいないもの。

次の日クリスティナが教室へ向かうと、クリスティナの机が端に寄せてあった。


戸惑っていると、クスクスと笑う声が聞こえてくる。


「あの人が隣だなんて、可哀想ね」


「本当に、私あの人のせいで何かあったら本当に嫌だわ」


隣の席のクラリスだった。


クリスティナは机を元の位置に移動させる。


「あーあ、戻しちゃった」


「そこに座ってなさいよね」


クラリス達は4人でかたまって、クリスティナを見て笑っている。


教室内になんともいえない澱んだ雰囲気が流れる。


今まではみんな無視するだけで、嫌がらせや悪口を言ってくることはなかった。


さすがに見逃せず、クリスティナは4人を見た。


「それって、私の事?」


聞くと4人は反応を返されると思っていなかったのかびくっと肩を震わせた。


「なあに、私たちあなたのことだなんて一言も言ってないじゃない」


「そうよ」


4人の中で1番背の低いポリーン・エジャートン子爵令嬢が意地悪そうに言うと、みんなそれに続いた。


「だったら、どうして私の行動とあなたたちの言動が一致しているの?」


言い返せず顔を見合せている4人に、クリスティナは我慢できず言い募る。


「どうして私にこんな意地悪するの?!言いたいことがあるなら直接言ったらいいじゃない!」


クリスティナは息を荒げて目に涙を浮かべて言う。


そんなつもりはなかったのに、感情が高ぶってしまっていた。


ポリーンはクリスティナを見て白けたような顔をした。


「気持ち悪い」


そう吐き捨てると4人とも教室を出ていってしまった。


残されたクリスティナは涙を拭う。


暫く立ち尽くしたあと席に着いた。


心配そうに見てはいるが、誰もクリスティナに声をかけてくることはなかった。


一人でいることに少しずつ慣れては来たが、そこに居るのに居ないように扱われるのは孤独感を募らせた。


昔、シャルパティエに来る前まで自分の受けていた扱いを思い出す。


悪口を言われたり蔑まれたり、それが物心ついてからの日常だった。


それが、ユリシスに受け入れてもらってから全てが変わった。


自分は愛されているのだと心から感じられるようになった。


クリスティナはローズとユーフェミアの席を見た。


2人は今日も学校に来なかった。


(昨日今日じゃ無理よね)


クリスティナは項垂れて机に突っ伏した。





クリスティナの通う学校では今日からある噂が流れていた。


ユリア・フィラネンス伯爵令嬢が第1王子妃に内定したという話だ。


久しぶりに見たユリアはまるで女王のようだった。


「あら、久しぶりですわねクリスティナさん。ご機嫌よう」


「……ご機嫌よう」


1番会いたくない人に出会ってしまい顔が引き攣るのを感じた。


「あら、今日はお友達はいらっしゃらないの?」


ユリアはわざとらしく周囲を見渡した。


ユリアの取り巻きたちがクリスティナを嘲るように笑った。


「体調が悪いようですの」


「そうなの。ご自愛なさってとお伝えくださいな」


「ご丁寧に」


クリスティナはスカートを両手で持ち上げ軽く挨拶をするとその場を去ろうとした。


その瞬間、取り巻きの1人がクリスティナに声をかけた。


「あなた、ユリア様に楯突かない方がいいわよ。この方は第一王子妃となられるお方なんだから」


再び嘲笑がクリスティナを包むが、クリスティナは眉を顰めた。


「……それは、誰が言っていましたの?」


「誰って……、周知の事実でしょう?」


ねぇ?と令嬢が聞くと周りも頷く。


「私はユリシスからそんな話、一度も聞いたことがないわ」


クリスティナがそう言うと、周りに緊張が走った。


クリスティナが第三王子のユリシスの元で養育されているのは周知の事実だ。


しかもユリシスは第一王子派として知られ、王子でありながら第一王子の側近中の側近と

言ってもいい。


「あなたがまだ子供だから知らされてないだけよ」


「そうかしら。ユリシスは私にはなんでも話してくれるもの」


それは嘘だ。


正直ユリシスが何を考えているのかクリスティナであっても分からないことがある。


それにユリシスは人の心配はするくせに、あまり自分の話はしたがらなかった。


でも、令嬢にはある程度効果はあっただろう。


元手の分からない話しより、王族がした話となれば別だ。


「ユリア様も覚えておいてください。私は結構、ユリシスに大事にされてますから」


クリスティナの指先は少し震えていた。


確証は無い。


でも、ユリシスとの日々に嘘があったとは思わない。


ーーーユリシスはクリスティナを大切に思っている。


「バウスフィールドの人質が何を言ってるんだか」


心無い一声が周囲から上がる。


「そうよね、この方を大事にするメリットなんて、第一王子様側にはありませんもの」


「ユリシス様だって、この方を引き取られた頃はまだお子様でしたもの。きっと後悔されてるに決まってますわ」


クリスティナとユリアの周りには人が集まってきていた。


好奇心と軽蔑、嘲笑が混じっていた。


ユリアはクリスティナを見るとにっこり笑った。


いつか見た背筋の凍るような微笑みだった。


「そんなこと言ってられるのも今のうちよ」


ユリアはクリスティナに聞こえる声で言うと、取り巻きを引き連れて帰っていった。


その様子を物陰からクララがじっと見つめていた。




クリスティナが今日の授業を終え校門へ近づくと、人だかりができていた。


黄色い歓声のようなものも聞こえてくる。


クリスティナはピンと来て急いでその場に向かった。


そこには令嬢達に穏やかな表情を浮かべて応対しているユリシスがいた。


「ユリシス!」


クリスティナが声をかけるとユリシスはクリスティナの方を見て微笑んだ。


ザッとクリスティナの前に道ができる。


「クリスティナ、おかえり」


ユリシスがそう言うと、クリスティナはユリシスに抱きついた。


「きゃあ」と声にならない声が上がる。


「急に抱きついてきたら危ないだろう?」


「ごめんなさい」


クリスティナがぎゅっと力を入れてしがみつくと、ユリシスも優しく抱擁を返してくれた。


周囲がざわざわと騒がしくなる。


動揺が伝わってくる。


ユリシスはそんな様子を流し見ていたが、 クリスティナに優しく微笑む。


「帰ろうか」


ユリシスがゆっくり抱擁を解くとクリスティナも顔を上げた。


「うん!」


クリスティナはユリシスのエスコートを受けて馬車へ乗り込む。


「友達に挨拶しなくていいのか?」


クリスティナは振り向いた。


びくりと令嬢達が肩を震わせていた。


その中には呆気にとられるポリーンやクラリス達の姿もあった。


「大丈夫よ。私のお友達は、この中には居ないもの」

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