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最期の楽園

私達は、森の中に入った。森の中は、本当にどこから敵が来るかわからない。そこかしこに隠れられる場所があった。でも、私がいま一番心配なのは、ルカのことだった。さっきの魔物を倒してから、明らかに様子がおかしい。幸い敵襲がないから、今のところはなんともない。でももし、今襲われたら・・・。今のルカは、戦うことができるのだろうか。本当に不安だ。

「キャッ!」

前を歩いていたルカが突然立ち止まり、彼の背中にぶつかってしまう。

「ルカ?どうし・・・」

ルカが目を瞑っている。一体、何をしているのだろうか。

「ル、ルカ?本当に大丈夫?」

なおも目をつむり続けるルカ。突如、真横から3体の魔物が飛び出して来た。

「ルカ!魔物が・・・」

気がつくと、目の前にルカは居なかった。

「ルカ!?」

「どうした?リア。」

声が横から聞こえて驚く。この一瞬で、3体の魔物すべてを倒し終わっていた。

「ルカ、本当に、大丈夫?」

「うん?何が?」

当の本人は、何事もなかったかのような顔をしている。

「ううん、なんでもない。」

「そうか。」

でも、明らかに様子がおかしかった。なにかがあったのだろうか。私には知るよしもなかった。


少し、潮の香りを感じる。なんだか、懐かしいような……。風に乗って、いろんな匂いが運ばれてくる。しばらくして森を抜ける。私達を待っていたのは、果てまで続く、大海原だった。太陽の光が水面に反射し、キラキラと光り、砕ける。

「わーあ!きれーい!」

「ああ、僕も、この世界の海は初めて見たよ。」

なにか引っかかりを覚える。

「この世界の……?」ルカの表情は変わっていない。次第にその疑問も薄れていく。目の前の景色が、私達の感情全部を吸い取っていった。しばらく二人で呆けたように海を眺める。波音だけが聞こえていた。心から思う。この瞬間が、ずっと続いていたらいいのに、と。でもそういうわけにはいかないことはわかっている。

「リア。そろそろ街が見えてくるはずだ。向かおう。」

「うん。」

ルカの言葉に従って、歩き出す。それでも最後に、もう一度振り返って、その景色を心に留めた。それから1時間ほど歩いただろうか、私達はかなり大きな街についた。城門の前に立つ。

「ルカ、ここはなんていう街?」

「名前は忘れた。でも、確か漁業で発展した街だったはずだ。さっき海があっただろ?多分、この国の中からも港で通じてるんだ。」

「海かあ!久しぶりにプールに行きたい気分になってきた。」

彼がフッと笑う。

「確かに。今日はプールに行きたい気分だ。」

「え、この世界にもプールがあるの!?」

「ないぞ。」

「え?」

「ないぞ。」

おかしいな。ならどうしてルカはプールを知っているんだろう。

「ルカ。」

「うん?」

「ルカ、プールはこの世界にないんだよね?」

「うん。」

「ルカは、なんでプールのことを知っているの?」

ピタッと、何かに行く手を阻まれたかのように、ルカが歩みを止める。

「ルカ?」

心配になって話しかけた。明らかに彼の表情が変化している。どこか、不安なような、どこか、疑問を持っているような。

「あー、今日はさかながたべれるかもなあ!」

明らかな話のそらし方。追求したくなってしまう。でも。彼は私のことを信じて、いろいろな詮索をしてきたことはない。彼にだって隠したいことの一つや2つ、あるだろう。そこに私が口を突っ込むのはフェアじゃない。

「うん、魚食べたい気分だね!」

「あ、ああ!そうとも!」

茶番のような会話を続けながら、私達は扉を通る。そして、その先にあった光景に驚愕した。

「な、何、これ・・・。」

城門の前に沢山の人が列になって拍手をしていた。

「え?王様かなにかが通るの?何この人たち!?」

一人、お年寄りの偉そうな人が、私達に近づいてくる。

「貴方がたの到着を心待ちにしておりました。我が国へようこそ、勇者様。」

「「「勇者様!万歳!」」」

老人が先頭を歩き出し、人々が道を開ける。まるで私達が一国の王様のような扱いだった。

「ど、どうなってるの、これ・・・。」

ルカは私の前を平然と歩いている。先導していた老人が振り返り、言った。

「貴方がたには、まず女王にお会いしていただきたく存じまする。」

「わかった。」

ルカが即答した。

「え、ち、ちょっと、ルカ!?わかったって、え?これはどういう状態なの!?」

色々情報が多すぎてだんだん混乱してくる。

「最後の楽園。」

ルカが、何かをボソッと呟いた。よく聞き取れなくて、聞き返す。

「ルカ?なんて言ったの?」

「リア、落ち着いて。全部後でちゃんと話すから。」

ルカの声は、不思議と人を落ち着かせる力がある。

「わ、わかった。」

人々のいる広場を抜けた私達は老人に続き、宮殿の中に入っていく。



「顔をあげてください、勇者様。」

その言葉の通り、僕は顔を上げる。ここは宮殿の中で、今はこの国の女王に謁見している最中だ。周りには多くの衛兵たちが控えている。

「お会いできて光栄です、女王陛下。」

少し先にある王座には、この国の最高権力者、女王が座っていた。女王と言っても、まだかなり若く見える。それでも、高い位置から見下ろす姿は、ただならないオーラを纏っていた。

「勇者様、長い旅、お疲れ様でした。これまで様々な困難を乗り越えてきたことでしょう。とうとうあなたは、この世界を救う、一歩手前までたどり着きました。この国では、長い歴史で何度も、勇者様をお迎えしてきました。そして、我が国に滞在された勇者様は、あなたで100人目となります。この節目となる大事な瞬間に関われていること、本当に光栄に思います。我が国、我が国民は、勇者様を全力で支援させていただきます。邪神を倒す、その日まで。どうか、この国での時間が有意義なものとなりますよう、そして、勇者様の生涯に、悔いが残らぬよう、役目を全うしてください。」

きっと、この女王様は本当にいい人なんだろう。僕がこれから立ち向かう不条理に、全力で支援をすると約束してくれる。僕は、100人目の勇者だ。これまで99人、そのすべての勇者がその役目を全うし、生涯を終えた。僕だけが逃げることは許されない。ここが僕の、最後の楽園だ。



「ぷはああ!緊張したあ。」

僕とリアは、宮殿の外に出て、広い庭を散歩していた。

「やっぱり、いくら優しそうだといっても、一国の最高権力者を前にすると、流石に緊張するね。」

「うん。本当に、私冷や汗かきっぱなしだったよ。」

二人でふーっとため息をつく。

「ねえ、ルカ。私、色々と聞きたいことがあるんだけど。」

「わかってる。」

「そっか。」

風が流れ、時が過ぎていく。僕達はただ、庭の小道に突っ立っていた。

「勇者様方。用意が整いました。こちらへ。」

衛兵の一人が、僕達のところまでやってきて、案内する。

「ルカ、私達、今からどこに行くの?」

リアが疑問を口にする。

「どこだと思う?」

「ちょっと、教えてよ。」

「さあね。僕にもわからない。」

「もう。」

リアが少し頬をふくらませる。

「まあ、もう少し行けばわかるんだし。」

一応フォローしつつ、僕達は案内についていく。歩いたのは5分ほどだったろうか。目の前に巨大な邸宅が姿を現した。

「わーあ!すっごく大きくてきれいな建物!ねえルカ、ここ、なんの建物かな?」

リアがはしゃいでいる。でも、僕にはだいたい予想はついていた。

「勇者様には、滞在期間中、この家に滞在していただきます。」やっぱりそうか。

「え?滞在?私達が?この家に?」

「そのとおりです。」

困惑しているリアに、衛兵がきちんと対応している。

「リア、ひとまず入ろう。説明はそれからだ。」

「あ、うん、わかった。」

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