6話
放課後。
ちゃんと八神さんとは時間をズラして目的地であるファミレスにやってきた。
このお店も僕たちが通っている高校の最寄り駅から反対側にある場所で、他の生徒に僕たちの関係がバレないように徹底している。
まあ、Vtubeが好きなオタク同士という、たいした隠し事ではないのだけれど。ただ、八神さんのイメージを考えると絶対にオタばれしたくないのかも知れないが。
「お待たせ、まった?」
「待ってないわ」
彼女に挨拶をして正面の席に座る。
「改めて自己紹介でもする?」
「しないわよ。そんなことより和田くんも注文したら?」
そう言った彼女にメニュー表を渡される。
「ありがとう。八神さんはもう注文したの?」
「ええ」
「そっか。なに頼もうかな」
ドリアも食べたいし、カルボナーラなんかもいいなと思いつつも結局はティラミスを注文した。
学校で昼ごはんを食べているし、そこまでお腹が空いているわけでは無いのでデザートをチョイスした。
あとはプラスでドリンクバーも注文した。八神さんは既にドリンクを手元に置いていたから後は僕が取りに行くだけだ。
「じゃあ、ドリンクバーを取ってくるね」
「ええ」
席を立ちドリンクバーコーナーに向かう。立地が良くないのと時間的な問題なのか僕たちの他に客はほとんどいない。
「さー、何を組み合わせようかな」
カルピスとオレンジジュースを混ぜるのいいし、野菜ジュースと炭酸水なんていうのもアリだ。
しかし、よく考えたらティラミスを注文していたのを思い出したのでコーヒーを飲むことにした。
「あの子、あんなに食べれるのかしら」
「あんなに細いのに」
席に戻る途中で店員がナニやら僕たちの席を見ながら話していた。
なんだろう? と思い席に戻るとそこには信じられない光景が広がっていた。
「あら、おかえり」
「凄い頼んだね…」
八神さんの前にはペペロンチーノにハンバーグ、ドリアにチキンとものすごい量の食べ物たちが並んでいた。
「ええ、昼ごはんを食べ損ねたから」
「そうなんだ」
いや、だとしてもその量は凄いと思うけどね。
さっきの店員も言ってたけど、その体のどこにそんな量のご飯が入るのか。
「ここは安くていいわね。遠慮なく食べられるわ」
そう言いながら彼女は口の中にパクパクと食べ物を入れていく。
「ロイゼは他のファミレスと比較しても安いよね」
「ええ。それにこの店は客が少なくていいわ」
「駅の近くにあるファミレスは混んでるもんね」
学校終わりのウチの生徒もよく居るのを見かける。
駅前のロイゼはここと違って賑やかな雰囲気なんだろう。
「人がたくさんいる店になんか入りたくないわ。賑やかな連中を見るとイライラしてくるもの」
その発言は『友達はいらない』と言っていた彼女のイメージ通りだ。
「ここは騒がしくなくていいよね」
「アタシのお気に入りよ。最低でもアタシが卒業するまでは潰れないでほしいわね」
「そんな縁起でもないことを」
確かに僕たち以外の客がほとんど居なくて心配ではあるけど。
「それで、今日はどうしたの?」
「別に。せっかく同士になったのだから趣味の話しでもしようかと思っただけよ」