2話
「面白いし可愛いよね雫。僕もよく見るし好きだよ」
「…」
とりあえず話しかけてみるもフリーズしているのか彼女からの反応は無い。
「おーい?」
「……た…?」
声が小さすぎてなんと言ったのか聞き取れない。
「なに?」
「…見た?」
「なにを?」
「さっきの」
「ああ、可愛いく独り言を呟いてたこと?」
「…」
「八神さん?」
また反応が無くなった。
なんだろう?
なんだか嫌な予感がする?
「…殺す。今すぐ、殺す…」
「怖っ!! とんでもなく物騒なんだけど!?」
思考回路が恐ろしすぎる!
「は、話し合いをしようよ? ほら、僕たちは同じ人類なんだから話し合える筈だよ!」
「うんうん。今のアタシたちに話し合いなんていらないのよ和田くん」
「分かんないよ。ほら、コミニュケーションを取ることで何かが生まれるかも? ラブ&ピース」
「大丈夫。殺すっていうのは言葉のあやだから」
「流石にそうだよね。やったら捕まるし、本気でヤるわけないよね」
冗談で良かった。
なんか雰囲気が怖かったから殺されるんじゃないかと思って焦っちゃったよ。
「ええ」
「それじゃあ話し合おっか?」
「だから変わりにこれを使うわ」
何だか凄く嫌な予感がする。
「大丈夫。これで少し眠ってもらうだけだから」
そう言って八神さんがポケットから取り出したのはスタンガンだった。
「可愛いでしょ?」
「全然可愛くないよ!」
確かに、女性用なのか色はピンクで可愛いらしいものだけれど!
「これで今見たものを忘れてもらうわ」
「もし忘れなかったら?」
「何回だって試すだけよ」
「バイオレンス!」
「大丈夫よ和田くん」
「何がかな? やっぱり全然大丈夫じゃないと思うんだけど…?」
「成功するまでやれば絶対に成功出来るわ。安心してアタシに身を委ねて欲しい」
「やっぱり全然大丈夫じゃない!」
「アタシの初めて貰ってくれると嬉しいのだけど…?」
「そんな恥ずかしそうに言ったってダメだからね!」
そのセリフはもっと別のシーンで聞きたかった。
こんな状況で聞きたくなかったし、スタンガン処女なんて貰いたくない。
「何よ。意気地なし…アタシがこんなに勇気を出して誘ってるのに…」
「さっきからなんか変な言い方してるけどスタンガンなんて絶対に食らわないからね!?」
「そう。アタシなりにコミュニケーションを取ろうと思って頑張ったけど…和田くんがそういう態度を取るならもういいわ」
「コミュニケーションどころか自分の要望を一方的に通そうとしてただけだよね!? というかスタンガンで生徒を襲ったなんて言ったら問題になるよ!?」
「大丈夫」
「何が?」
全然大丈夫じゃない予感しかしない…
「欲情した和田くんに襲われたアタシが正当防衛した事にするから」
「驚くほど真実が一つもない! そしてやっぱり大丈夫じゃなかった!」
「ついでに倒れた和田くんの手にアタシの体操着を持たしとくわ」
「怖いって! それ僕が社会的に死ぬやつ!!」
発想が恐ろしすぎる!
自分の都合で相手を気絶させて冤罪の容疑をかけるなんて!
「大丈夫」
「もうそのパターンは僕が大丈夫じゃないことを知っている!」
「そんな冤罪をかけるなんてしないから」
「本当に大丈夫だった…?」
「全ての記憶が無くなるまでスタンガンをぶつけ続けるから」
「やっぱり大丈夫じゃなかった!!」
「男ならいい加減に覚悟を決めなさい!」
「くっ…」
後ろに下がる僕をジリジリと追い詰めてくる八神さん。
その手に持つスタンガンが僕に恐怖を与えてくる。
かくなる上はアレを見せるしかない!
「コレを見て八神さん!」
そう言って僕はスマホのある画面を彼女に見せる。