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15話



 八神さん家からバスで移動して映画館のあるショッピングモールに着いた。

 このショッピングモールがある場所は高校の最寄り駅とは反対方向で遠いため、ウチの生徒とは合わないだろうという魂胆だ。その為にあえてバスで移動してきた。



 しかし、今日は休日という事もあり人で溢れている。



「うー、人が多い」



 そして八神さんが疲れ切っている。



「人がゴミのようだ」



「まあ、映画館がある場所なんて大体混んでそうだよね」



「映画を見るのにこんな試練があるなんて…」



「そんな大袈裟な」



「しかしアタシはこの試練を乗り越えて映画を見て見せる!」



「暖簾?」



「試練よ! 映画館に暖簾なんてないでしょ!」




「分かんないよ。もしかしたらあるかも知れない」



「映画館にあるわけないでしょ」



 こんな感じで雑談しながら歩いていると目的地に到着した。



「いい匂いだね」



「ポップコーンの匂いが凄いわね」



「映画館はポップコーンが主な売上だからね。ポップコーンの不味い映画館は存在価値が無いと言っても過言でない」



「過言よ。というか貴方はそんなにポップコーンが好きなの?」



「別に。全然食べないし、食べたいとも思わない」



「じゃあなんで言ったのよ…」



「強烈な匂いに釣られて」



「もう。いいから早くチケットを買いましょう」



「そうだね」



 さっそく発券機を待つ列に2人で並ぶ。休日という事もあって映画館も混んでいる。

 並んでいる人を見ると子供を連れた親子連れやカップルが多く、もしかしたら僕たちも周りの人から見たらカップルに見えるのかも知れない。



「えーと、席はどうする?」



 順番待ちをしている間に席をどの辺にするのか聞いておく。



「そうね。どこに座るのがいいのかしら?」



「中央の後方がいいんじゃない?」



「じゃあそうしまょう」







・・・






「映画が始まるで暇ね…」



「どうしよっか」



 映画が始まるまであと1時間。それまで2人で何をするか。



「とりあえず和田くんは案を3つ出して頂戴」



「無茶振りだ!」



 とはいえ、ここはしっかりとエスコートとして彼女に良いところを見せたい。



「ショッピング、ゲームセンター、カフェに入るのどれかでどう?」



「ゲームセンターに行きましょう」



「了解」



「ちょうど欲しいグッズがあるのよ」



「クレーンゲームでもやるの?」



「ええ」



「僕はやった事がほとんど無いんだけど、八神さんは普段からやるの?」



「たまにね」



 ゲームセンターに到着した僕たちは真っ先にお目当ての場所に向かう。



「着いたわね」



「そうだね。やっぱりゲームセンターって音が凄いね」



「もう少し静かな場所にしてほしいのだけどね」



 ゲームセンターにほとんど来ない僕からすると独特の雰囲気と音に圧倒されそうになる。



「それで、何が欲しいの?」



「あれよ」



 そう言って彼女が指したのはぬいぐるみが沢山置いてある場所だった。



「あー、雫のぬいぐるみか」



 八神さんが欲しかったのは僕たちにはお馴染みのVtuber雫の人形だった。



「今コラボしてるのよ」



「そうなんだ」



「取ってくるわね」



 さっそく八神さんは硬貨を入れてゲームをスタートさせた。慣れた手つきでレバー握った彼女はスムーズにアームを移動させていく。



「とりあえずはこれでいいわね」



 結局、八神さんは数回クレーンゲームをプレイしたところでお目当ての人形を手に入れた。

 クレーンゲーム初心者の僕には分からないけど、きっと最初の方は位置調整でもしていたんだろう。



「フフッ」



 目的のぬいぐるみを取れたから八神さんはご満悦だ。



「すぐに取れると気分がいいわね」



 彼女が満足出来たならゲームセンターに来て良かった。

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