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14話



 朝になり自然と目が覚める。セットしていたスマホのタイマーよりも早く起きる事が出来た。

 まだ起きたての鈍い思考のなか無意識にスマホへと手が伸びる。そしてTouTubeでVtuberの切り抜きを見る。それが朝のルーティンになりつつある。



 ルーティンをこなして覚醒してきた脳でこの後の事について考える。



 なんと言っても今日は八神さんとの映画館デートだ。彼女にはそんな認識は無いかも知れないが、男女2人で出かけるんだからデートと呼んでもいいだろう。

 だから今の僕の精神状態は楽しみと緊張が半々と言ったところだ。

 


 母さんが作ってくれた朝ごはんを食べ終わったらシャワーを浴びる。特に意味は無いがいつもよりも入念に体を洗う。

 入浴が終わったら体を拭きバスルームから出る。ドライヤーをして髪を整えたら部屋に戻って着替える。



 せっかくのデートだし服装をどうしようかと悩んだが、結局シンプルに黒色のカットソーとベージュのデニムパンツにした。

 


 最後に歯を磨いて、いつも以上に身だしなみをチェックしたらいよいよ出陣だ。

 






・・・








 ピンポーン。



「はい」



 インターフォンを押すと直ぐに八神さんからの返答があった。



「どちら様ですか?」



 いや、『どちら様ですか』ってインターフォンの画面から僕の顔見えてるでしょ。



「ブラウン管の工事に来た和田です」



「まったく、ブラウン管っていつの時代よ…」



 おお。

 玄関のドアを開けて出てきた彼女の姿を見て思わず声が漏れそうになった。

 


 彼女の服装は黒色でVネックのドロップショルダーブラウスとベージュのチノパンという格好をしていて少し大人な雰囲気を感じる。



 普段の制服姿もいいけど私服もクールビューティーっていう感じで凄くいい。

 それにトップスとボトムスの色が同じで何だかカップルみたいだ。



「何よ?」



 じっくりと何かを伺うように僕の反応を見る八神さん。



「その服似合ってるね」



 とりあえず服装を褒めてみる。こういう時にどういう対応をするのが正しいのか分からないけれど、服が似合ってるいるのは事実だ。



「軽いわね…本当にそう思ってる?」



「うん、カッコ可愛い」



 ボキャブラリーが少ないな僕。本当はもっと上手な言い回しをしたかったけど、素直な感想がそのまま出てしまった。



「何よそれ…」 



 女の子の服を褒めるのって難しいな。昨日の夜から八神さんに会ったらまずは服を褒めようと思っていたけど、セリフを何も考えてなかった。



 こんなことなら昨日のうちから考えておけば良かった。



「こんな可愛い子と映画を観に行けてラッキーってこと」



 自然と口からそんかセリフが出ていた。なにを言ってるんだ僕は。なんかチャラいし痛い。



「そう…なんかチャラいわね」



「酷い!」



 やっぱりチャラいのか。



「そんなにアタシに見惚れちゃった?」



「うん。本当に綺麗だし可愛い」



「わ、分かったから! も…もう、これ以上は褒めなくていいから…」



 自分から聞いたくせにドンドン顔が真っ赤になっていく八神さん。

 クールな格好をしている彼女が恥ずかしがっている姿は本当に可愛い。



 出発前からいいものが見れて良かった。


 

 

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