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間話2



「はは、雫ちゃんは可愛いーな」



 教室に誰もいないと思い込んでいるアタシは無意識に独り言を発していた。

 友達がおらず、一人暮らしをしているアタシには日常的に会話をする機会が圧倒的に不足している。

 その弊害なのか家でのアタシはなにかと独り言を連発している。



 だから後ろに人がいた時は心臓が止まるかと思った。



「面白いし可愛いよね雫。僕もよく見るし好きだよ」





「…」



 油断した!

 まさかVtuberの動画を見て独り言を言っている所を見られるなんて!


「おーい?」



「……た…?」



「なに?」



「…見た?」



 いや、まだだ。諦めるにはまだ早い。もしかしたら見られて無いかもしれないという一筋の希望にかけて問いかける。

 


「なにを?」



「さっきの」



「ああ、可愛いく独り言を呟いてたこと?」



「…」



 ああ、見られた。



 最悪だ…




「八神さん?」



 独り言を言っているところとVtuberの動画を見ていた事がバレたアタシの頭は真っ白になっていた。



「…殺す。今すぐ、殺す…」



 結果として自分の失態を隠すため、目撃者を消さなければという思いからどんどん暴走していく。



「怖っ!! とんでもなく物騒なんだけど!?」




 そしてアタシが取り出したのが護身用に持っていたスタンガン。これで気絶させて彼の記憶を無くそうとした。



「コレを見て八神さん!」



 そんなアタシに待ったをかけた和田くんが見せて来たのがTouTubeの画面。



「僕も昨日は八神さんと同じで雫の配信を見てたんだ」



 そこにはアタシが見てた切り抜きと同じ動画が映っていた。



「それだけじゃない。僕はVtuberが大好きでチャンネル登録も沢山している! だから八神さんがオタクなのをバラしたりしないし、今日見たことは全部秘密にする!」


 

 同じ趣味を持つもの同士ということが影響したのか、彼の言葉でアタシは落ち着くことが出来た。



 落ち着いたら彼に対して申し訳ない事をしたなと罪悪感を覚えた。

 流石にアタシも動揺のあまり自分が暴走してしまった事を自覚している。



「ありがとう。ついでにお願いがあるんだ」



 負い目があるアタシとしては彼がそう言い出した時に汚名返上のチャンスだと思った。



「お願い?」



 だから急にそう言われた時も変なお願いじゃなければ聞こうと思った。

 和田くんの視線が露骨にアタシの胸に行っていたから、どんなお願いをされるのか少し不安だったけれど。

 


「僕と友達になってくれない?」



 そうして彼の口から出たお願いはエロい要求ではなくて、友達になろうというものだった。



「残念だけど、それは無理な相談ね。アタシに友達はいらないわ」



 でも、そのお願いだけは聞くわけにはいかなかった。

 期待して裏切られるぐらいなら、アタシにはもう友達はいらない。



 現実はアニメの世界みたいに上手くはいかない。面倒な人間関係はもう御免だ。余計なトラブルを招くぐらいならアタシは現状維持でいい。



 バッサリと断ったから彼も諦めてくれるだろう。

 


 そう思った。



「じゃあ友達じゃなくていいから同士になろうよ! 同じ趣味を持つもの同士」



 でも彼はアタシの拒絶なんてものともせずに次の案を出してきた。



「ただ趣味の話しをするだけの関係。僕はそういう相手が欲しかったんだ。八神さんはどう? 推しの話しが出来る相手が欲しいと思ったことはない?」



 ただ趣味の話しをするだけの相手。確かにそれはアタシも欲しいと思っていた。もっと好きな事を語りたいと。



「アタシも欲しい…」



 気が付けば自然と言葉にしていた。



「そっか。じゃあ、これから同士としてよろしく」



「ええ」



 コレがアタシと和田くんの関係が始まった瞬間だった。


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