10話
「それで、結局なんで金欠になってたのさ?」
何となく理由は分かるような気がするけど。
「それは…」
「どうせ仕送りが使い込んだんでしょ」
「ドキッ!」
どうやら図星だったみたいだ。
「どうして分かったの?」
「なんとなく」
「なんとなくって…」
「まあ、月末だからいいやと思って推しにでも貢いだのかなって」
「ドキッ!」
どうやらこの予想も当たったみたいだ。
「まあ、このリビングを見れば分かるよ。でも、家に帰るのが楽しくなりそうな良い部屋だね」
この部屋の壁には女性Vtuberのタペストリーや壁紙がたくさん飾ってある。
それ以外にもショーケースがあり、その中にはアクスタや缶バッジ、フィギュアなんかが入っている。
しかし、ザ・オタク部屋という感じなのだけど、そこは女の子の部屋というか男のオタク部屋と違って可愛いらしい。
家具は白でまとまっていて清潔感があり、ピンク色のマグカップやクッションがいいアクセントとなっている。
この女子力の高そうな部屋のアウェー感に最初は圧倒されていたけど、今は女の子の粒子を感じる事が出来て気持ちいい。
なんかいい匂いがするし、もうずっとこの場所にいたいぐらいだ。
きっと女の子粒子には幸せホルモンがたくさん入っているに違いない。
これを学会で発表したらノーヘル賞も間違いなしだ。
「ふふん! いい部屋でしょー! この部屋のインテリアにはこだわったんだから!」
僕がリビングについて言うと、待ってましたと言わんばかりに瞳をキラキラさせる八神さん。
うん…
可愛すぎんか!
ドヤ! って顔で自信満々な表情なのが可愛いすぎる!
さっきまでゾンビ顔してたのにその表情はずるいでしょ! いきなりの不意打ちにビックリしたわ!
「本当にいい部屋だね。僕も住んでみたいよ」
「ふふん!」
僕に部屋を褒められて嬉しそうにドヤ顔してるのも、早く続きを話したいってソワソワしてるのも普段とのギャップと相まって可愛すぎる。
彼女のこんな笑顔が見れるならご飯なんていくらでも奢るよ。というか、なんなら奢りたいぐらいだ。
「それよりも、明日からはちゃんと生活出来るの?」
「え、うん。明日には仕送りが送られてくるはずだから」
あえて部屋の話しから話題を変えると悲しそうな顔になった。
「あれ? なんか悲しそうな顔してるけど話したいことでもあった?」
「む…以外と意地悪なところもあるのね貴方」
八神さんの色んな表情が見たくて意地悪をしてしまった。
こうやって、学校ではぶっきらぼうな彼女の様々な顔を見れるのは嬉しい。
「冗談だよ。それでこの部屋はどうやって作ったの?」
「それはね!!」
僕が質問をすれば彼女は嬉しそうに語り出す。
こうやって楽しそうに話す彼女を見ていると、本当はこう言う風に自分の好きなことを話せる相手が欲しかったのかななんて思う。
八神さんの過去に何があったのかは分からないけど、僕以外にも話せる相手が出来るといい。
もちろんは男はNGだ!
「それであのソファーの上に乗っているのがあかりちゃんのぬいぐるみで!」
「うん」
あー、美少女がニコニコと趣味について語っている姿を見てると癒されるな〜。
きっと僕の寿命は今日だけで10年は伸びたはずだ。
それに、このあと食べる八神さんの手料理も楽しみだな。




