16話 過去の証。
「このカップラーメン、食堂の片隅の箱に入ってるのよね。引きこもりにはうれしいことだな」
そうすると、羊さんが町田さんのベッドの下を漁っていた。
「どうかしたんですか?」
「このゴミ、町田ちゃんは出したの?」
手に持っていたのは、キャンディーの袋のゴミだった。
「いいや、私はキャンディーが苦手なんだ、ガムが好きだな」
「やっぱりそうだよねぇ」
「にしても、どうしてキャンディーのゴミがここにあるんだ?」
私は羊さんの心を読んだ、何かを隠しているかも。
「今それ言ったらだめだ、言うのは……後でだな、恐らく……町田ちゃんが死に戻りしてからかな」
「死に戻りの事、賀留多先輩にしか言っていないはず」
「多分だけど、私以外の運営側はもう自我が壊れちゃってるから分からないんだけれどね……言えるのは……死に戻りの時、私と町田ちゃんだけしか記憶が引き継がれないのかもね」
「なら、私が死に戻りをしたとき、羊さんも死んでいるってことですかね」
「いいや、町田ちゃんが死ぬとき、私は生きてるんだ、その線はないね」
私は訳も分からず相づちをうっていた。
「でも最初のゲームでは賀留多先輩が必ず死んでいた……」
「多分だけどね、歴史が変わっていってるのかなって」
「それってどういう事です?」
「知り合いの探偵が言っていたんだけど、人の行動が変わっている時、歴史は変わっていると言っていたし」
「そうなんですね……」
「今後の運営の動き方によるかな……明日はほかの参加者に茶々入れようと思うから私は寝るよ」
そうして羊さんは部屋から出ていった。
「賀留多先輩、羊の人、内通者で確定だ」
「聞いてたらわかってるよ、そんなの」
「……でもここに来てからキャンディーのゴミがあったんだ?」
「ベッドの下に何か残ってるかもね」
「動かすか」
私たちはベッドを反対側に動かした。そこにあったのは、赤黒くなった……血だ。
「うーん、おもらしした?」
「してないな、でもこれは血だな」
その日は訳も分からず、自室に戻った。
(歴史が変わっているってのは、どういう事なんだろう?それに町田さんのベッドの下にあった血、何か不自然だな……)
そして私は眠りについた。内通者の判明、そして多すぎる謎を残して私はぐっすりと眠りについた。