【最後のメッセージ】あなたは大丈夫?この世に残す最後のメッセージとは?
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推理ですがコメディ色が強いです。
春の推理2024参加作品になります。
よろしくお願いします
「メイ〜〜。参上したでござる〜〜。開けるでごさるよ〜〜」
同じ学生アパートの隣りの部屋に住む遠藤メイからメッセージをもらい、部屋を訪ねた高橋カンナが見たのは、キッチンに倒れ頭部が真っ赤に染まった遠藤メイの変わり果てた姿であった。
「きゃああああーーーー!誰か、誰か警察を呼んでくださいっ!」
まだ夜が明けきらぬ早朝、アパートに悲鳴が響き渡った。
ーーー 40分後 ーーー
「どうして警察に電話するまで20分もかかったんですか?」
遠藤メイが倒れているのを見つけた高橋カンナが警察に電話をするまで20分間の空白の時間があった
「その…私がメイを見つけて「誰か警察を呼んでください」って叫んだので…誰かが警察に電話してくれたと思って警察が来るのを待っていたんです。でもなかなか来ないからおかしいな?って思って…でも、あと少し待ってみようと思って…それでも来ないから、Xに「人が倒れてるの見つけて、誰か警察に電話してって言ったのに警察来ない件」って投稿したんです。したらみんなに「自分で電話しろ」って言われて…それで私が警察に電話したんで…その、時間がかかってしまいました…」
その場にいた警察官たちは手を止めずに仕事を続けたが、その背中からは一気に哀愁が漂いだした。
ちなみ10室あるアパートの住人たち、遠藤と高橋を除く8人全員が、その悲鳴を聞いたのが4:46分だと証言していた。
皆、悲鳴を聞いてすぐに携帯を取ったが、時間を確認して「まだ眠れる」とまた寝たそうだ。
「どうしてあなたはこんな早朝に遠藤の部屋を訪ねたのですか?」
「昨夜、二人でダイエットの為に朝のウォーキングをしようと話したんです。で、5時に約束していたんですが、今朝メイから部屋に来るようにってメッセージが届いて……。そしたら…メイが……メイが!!っ……」
友人の変わり果てた姿を思い出しショックなのだろう…
咄嗟に両手で顔を覆う高橋。
「…っ…っくしゅんっ!はくしゅんっ!…あー…すびばせん。最近花粉酷くないですか?…メイ、ティッシュもらうね…」
ずすーっと鼻を鳴らしながらそう言うと、テーブルの上に置いてあるティッシュを二枚取り鼻をかんだ。
「あ!ちょっと!部屋の物に触らないでください!」
その場にいた検察官が慌てて静止する。
「えっ…?あ、すみません。…じゃあ…はいこれ…」
申し訳なさそうに鼻をかんだティッシュを検察官に渡す高橋。検察官は持っていたピンセットでティッシュを受け取りビニール袋に入れた。
「昨夜10時以降にもおやつとか色々食べちゃいました。あと、ダイエットサプリも飲んじゃいました。すみません」
記憶を辿るような仕草をしながら、高橋は検察官に申告した。
「……別に…鼻水を調べる訳ではないので、何食べてても関係ないですよ……」
「あ、良かったです」
心底ホッとした顔をして胸を撫で下ろす高橋。
「…それで?遠藤さんはあなたにどんなメッセージを送ってきたか…見せてもらえますか?」
「あ、はい…」
ゴソゴソとポケットから携帯を取り出し、最後のメッセージのやり取りの画面を表示する。
「これです…」
メイ
《 おはようでござる。ダイエットの為にウォーキングに行くでござるよ。しかしその前に腹ごしらえするでござる。腹が減っては戦は出来ぬよ。 》
《 ふんどし締めて来るんじゃぞ! 》
カンナ
《 へい!御頭! 》
《 拙者ふんどしを持ってなかったでござる。かくなるうえは切腹してお詫び申す! 》
メイ
《 ぐだぐだ言っとらんで部屋に参れいっ! 》
カンナ
《 へい!がってんだ! 》
《 でもその前にかわやに行ってくるでござる。あいや待たれい 》
メイ
《 かわや〜w 》
「このメッセージのやり取りの後、遠藤の部屋に訪ねたんですね」
「はい。あ、かわやってトイレの事ですよ。まさかこれが人生最期のメッセージになるとは…メイも…思ってなかったでしょうね…………こんな…かわやが最期の……プッ笑……」
笑いたいのを堪えているのを誤魔化すように、口元を手で押さえた高橋の肩は小刻みに揺れていた。
「それで?遠藤の部屋に着いたら遠藤がケチャップをぶちまけて倒れていたんですね」
「はい。最初見た時は血と思ってびっくりしたんですけど、よく見たらケチャップでした」
「これは一応関係者に聞く質問なので気を悪くしないで欲しいのですが…あなたが殺したりしてないですよね?」
「ええ?なんで私が?まさか私、容疑者Xですか?」
「…いえ。皆さんに聞いているんです」
「それとも私、知らないうちにメイの事殺してしまったんでしょうか…?ならば大人しくお縄頂戴されますでござる…」
両手を揃えて前に出す高橋を無視して、そばにいる検察官と会話する。
「ケチャップが頭部に付くほどぶちまけているのは…」
「料理の最中だったようで…心筋梗塞の線を…」
その会話に高橋が先程までと違う幼い声色を出して割って入る。
「おじさん、おじさん。僕わかっちゃった。このおねーちゃん、フライパンでお餅を焼こうとしてたみたいだよ。お餅の上にポテトとチーズとケチャップが乗ってるよ。きっと餅ピザを作ろうと思ってお餅が焼けたからってつまみ食いしたらお餅が喉に詰まったんじゃないかなあ?それで苦しくてケチャップを握り締めたんだと思うんだけど…」
「急に変な喋り方になったな?」
「え?アニメの真似ですけど…体は大人ですが、頭脳は子供になってフレッシュな視点から事件を解決してみたんです。どうでしょう?」
そして高橋は「アニメ声での会話、メイとはよくやるんですよ」と付け加えた。
「ああ、はいはい。じゃあ、俺もじっちゃんの名にかけて頑張ります」
適当にそう返す。
「え?じっちゃんの?何ですか?それ」
真顔で質問され返答に困る。
ーーージェネレーションギャップーーー
見かねた検察官の一人が高橋に声を掛けた。
「はいはい高橋さん、今日はご協力ありがとうございました。もう部屋から出て行っていいですよ。友人を亡くしてあなたも悲しいでしょう。自室でゆっくり休んでください」
そう言って玄関を指差す。
「はいはい。わかりました。部屋に戻ります。あっ!
お巡りさん。あの…これ、毒ですよね?これ、毒ですよね?」
急にニヤニヤしながら毒とか言い出した高橋の背中を押して部屋の外に出した。
玄関のドアがパタリと閉まると、現場が安堵の雰囲気に包まれた。
しかしその直後、保管していた遠藤の携帯からピロピロと音楽が流れる。
ビニール袋に入った携帯の画面には「無念。追い出されたでござる」と表示されていた。
「すみませ〜ん、いつもの癖でついメイにメッセージ送っちゃいました〜」
ドア越しに叫ぶ高橋の声が聞こえた。
検死の結果、遠藤は心筋梗塞ではなく、餅を喉に詰まらせた事による窒息死であった。
拙い文章、最後までお読みくださりありがとうございました。