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汎用性昔話「なんちゃら太郎」

作者: でんでろ3

 昔むかし、あるところに、とてもとても善良なおじいさんとおばあさんが住んでおりました。


 おじいさんとおばあさんには子供はもちろん、他にも家族は居ませんでした。


 ある日、おじいさんだけが用事があって出かけました。


 おじいさんは、とても普通の人ならしないような、親切で正しいことをしました。


 そのことによって、おじいさんは、なにやら不思議なものを手に入れました。


 おじいさんとおばあさんは、その不思議なものを不思議だとは思いつつも、変だとは思わずに、不用意にぶった切ってみました。


 すると中から、それはそれは美しい赤ん坊が生まれました。


 おじいさんとおばあさんは、ろくに考えもせずに、大喜びして、その赤ん坊を育てることにして、ぶった切った不思議なものから、なんちゃら太郎という、とても安直あんちょくな名前を付けました。


 なんちゃら太郎は、人間とは思えない早さですくすくと育ちました。


 また、なんちゃら太郎は、村一番の強さになりました。


 村一番強いだけで、外の世界でどれだけ通用するのか測ろうともしないうちに、なんちゃら太郎は、この世の人々を苦しめているという噂だけしか知らない「鬼」を、どれだけ強いかも知らないのに、敵陣に乗り込んで退治しようと考えました。


 おじいさんとおばあさんは、悲しみますが同意し、ただの一般人のはずなのに、なんちゃら太郎に便利なものを授けました。


 なんちゃら太郎もなんちゃら太郎で、鬼への対策は、おじいさんとおばあさんにもらったものだけで、あとは通常の装備、……というより、ほとんど身ひとつで、旅に出てしまいました。


 旅の途中で戦力になる仲間を得られるのは、幸運に恵まれている方で、ほとんどの場合は、装備も人員も増強されぬまま、また、道中の苦労についても、簡単にしか触れられぬまま、たいした修行もせずに、何ひとつ強くなったとは思えない状態で、鬼についての下調べもろくにしたとは思えない早さで、鬼のもとに到着します。


 鬼の組織は、よほど手薄だったのか、たったひとりの襲撃しゅうげきで、ほぼ無傷で、なんちゃら太郎は、鬼の大将との最終決戦を迎えます。


 さすがに、鬼の大将は圧倒的に強いのですが、なんちゃら太郎が知恵を働かせて大将を上回るか、何かの幸運な突発的な偶然により、なんちゃら太郎は鬼の大将に一撃を入れます。


 すると、よほどうまい具合にその一撃が決まったのか、とても丈夫そうに見える鬼ともあろうものが、その一撃で倒されてしまいます。


 鬼の組織を壊滅かいめつ状態に追い込んだなんちゃら太郎は、鬼を皆殺しなどにはせずに、どういう保証があるのか分かりませんが、鬼たちが、もう悪いことをしないというのを信じ、財宝を差し出させ、あまつさえ、運搬用の荷車なども供出させ、しかし、鬼の財産が荷車1台に積み切るとも思えないのに、運べないからと、たったの1台で納得して、故郷に凱旋がいせんしました。


 もともと長くはなかったおじいさんとおばあさんの残りの人生を豊かに暮らすには、荷車1台の財宝でも十分だったので、とりあえず、少なくとも、おじいさんとおばあさんは一生、幸せに暮らしましたとさ。


 めでたかったことにしとけ、めでたかったことにしとけ。

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