第十一話 『記憶』
婚約の文が雪夜に届いていた。
婚約を結ぶ理由とは…?
如月 雪夜 『如月雪夜様へ
あなたに婚約を申し立てます。
この手紙が何度もあなたに届いていないのは承知しています。
ですが、此度は我が従者を立てて手紙を送らせていただきました。
天崎 清玄』
三人 ・・・・・。
龍一郎 せ、雪が!婚約!?
深夜 これはまいったな…
龍一郎 速く、夜琥弥様にご報告を…
深夜 そうだな。
何度もって書いてあるからには夜琥弥は文をもらっては
燃やしたり何だりしたんだろうが…
俺はまだお兄ちゃんと呼ばれていないのに、
妹が婚姻なんて順番がおかしい。
龍一郎 半分は納得しましたが、半分はあなたの願望でしょう…
如月 雪夜 清玄…様…
龍一郎 ?知ってるのか?
如月 雪夜 天崎の姓は知っていましたが…名の方にもなぜか聞き覚えがあって…
龍一郎 相手から婚約して欲しいって言ってるんだから
どこかであってるんじゃないのか?
深夜 そうとは限らないが…そっちの方がありえるな。
まぁ、まずは夜琥弥に話さないとな。
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如月家 茶の間
如月 夜琥弥 ………。
如月 雪夜 兄様。これは…
如月 夜琥弥 お前には、まだ婚約は早い。
如月 雪夜 そうではないんです。
天崎様はどうして私と婚約をしたいのかご存知ですか?
如月 夜琥弥 それはわからない。だが、数週間前から手紙が来ていたのは事実だ。
龍一郎 従者を立てたと書いてあるが、誰か来たのか?
如月 雪夜 えっと…雷持さんっと言う方がいらっしゃいましたが。
その方は猫に鈴を取られてしまったのですが、
猫さんが中庭に入ってしまったので少しお会いしたんです。
深夜 そいつである可能性はあるが少し低いっと言うことだな。
如月 雪夜 兄様はどうして文を私に見せてくださらなかったのですか?
如月 夜琥弥 俺はお前の保護者でもある、
お前のことについての管理もしなければならない。
如月 雪夜 確かに婚約っというものは家系に関わることです。
ですが、私はもう大人です。自分のことも自分で管理したいのです。
如月 夜琥弥 お前は医師としての管理もあるだろ。
如月 雪夜 先日、学園に行くことを承諾してくださって、
少しでも信じてくださっていると…思っていたのですが…
[雪夜が太股の上に置いていた拳に少し力を加える。]
如月 夜琥弥 !雪夜ーー
如月 雪夜 私は清玄様に会いに行って参ります。
如月 夜琥弥 !
如月 雪夜 これは私が決めたことです。
わがままをお許しください。失礼します。
[雪夜が立ち上がり自分の部屋に行く]
龍一郎 ………俺も一緒に行きます。
深夜 俺は遠慮しておこうかな。
如月 夜琥弥 ………。
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天崎家 客間
[雪夜と龍一郎が頭を下げる。]
如月 雪夜 此度は、突然のご謁見ながら承諾していただき誠にありがとうございます。
如月家長女如月雪夜と申します。こちらは付き人の龍一郎です。
天崎 清玄 面をあげてください。
[雪夜が面をあげる]
如月 雪夜 ………。
天崎 清玄 僕のこと…覚えていますか?
如月 雪夜 申し訳ありません。
天崎 清玄 …そういえば、雪夜様は記憶があまり得意ではありませんでしたね。
大丈夫ですよ。すぐに思い出せますから。
龍一郎 ?
天崎 清玄 龍一郎さんでしたね。本日はお引き取り願えますか?
雪夜様にはここに泊まっていってください。
お話もしたいですし。
龍一郎 承知いたしました。
[龍一郎が客間を出て如月家に戻る]
如月 雪夜 ……清玄様。婚約の件ですが…
天崎 清玄 断るのですね。
如月 雪夜 申し訳ありません。
天崎 清玄 謝ることはありません。わかっていたことです。
如月 雪夜 ?
天崎 清玄 僕は仕事が残っていますのでお食事の時間まで部屋でお待ちください。
如月 雪夜 ありがとうございます。
天崎 清玄 黒鬼。
黒鬼 懸侍 はい。
[部屋の外から声がした。声が聞こえる方の障子が開くとそこには一人の男がいた。
男は袴を来ていた。]
黒鬼 懸侍 ご案内いたします。
如月 雪夜 わかりました。
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天崎家 個室
黒鬼 懸侍 こちらの部屋をお使いください。
如月 雪夜 ありがとうございます。雷持様。
黒鬼 懸侍 ………いつからお気づきになられていたのですか?
如月 雪夜 部屋に案内されている途中でしょうか。
歩き方の癖が同じでしたので。
ですが、忍びだったとは思いませんでした。
黒鬼 懸侍 泰誌先生ですか?
如月 雪夜 はい。新入生の名前を聞きました。
(紅愛様の名前をお聞きしたときは驚きましたが…)
その中に黒鬼様の名前もございました。
名前、お聞きしてもよろしいいですか?
黒鬼 懸侍 黒鬼懸侍っと申します。
お食事のご用意ができましたらお呼びいたします。
如月 雪夜 はい。ありがとうございます。
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[雪夜は個室にある服に触れる]
如月 雪夜 (綺麗な服…ですが使われた痕跡がありません…)
………
天崎 清玄 気に入っていただけましたか?
如月 雪夜 はい。とても綺麗です。こちらはどなたの部屋なのですか?
天崎 清玄 …君の部屋ですよ。
如月 雪夜 ?
天崎 清玄 食事の用意ができました。今、運ばせますね。
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如月 雪夜 ………。[雪夜は運ばれてきた食事を見つめる]
天崎 清玄 どうかされましたか?
如月 雪夜 いえ。とても美味しそうでしたので。
いただきます。 [食事を食べる]
天崎 清玄 ………
如月 雪夜 ! とても美味しーー ドクンッ !
[雪夜の心臓が強く脈打つ]
如月 雪夜 クッ…
[雪夜の体が熱くなり、畳の上に倒れ込んでしまう。
息が荒く、脳も体も焼かれているようだ。]
如月 雪夜 清玄…様…
天崎 清玄 大丈夫だよ。すぐ、楽になれるから。大丈夫。
[清玄は雪夜の隣に駆け寄り、優しく声をかける]
如月 雪夜 はぁ… はぁ…
[雪夜は少し疲れてしまったのかそのまま眠ってしまった。]
天崎 清玄 ………。これでいいんだよね。
爽介 はい。これでその方はあなた様のものです。
[いつからそこにいたのか、障子の壁越しに一人の男性が立っていた。
天崎 清玄 ……やっと…思い出してくれる…小雪…
如月 雪夜 ………
黒鬼 懸侍 ………。
ーーーーーー
如月 雪夜 ………う…うん? 夜…? ここは…
黒鬼 懸侍 お目覚めになられましたか。
如月 雪夜 ……どちら様ですか?
黒鬼 懸侍 ………
如月 雪夜 私は如月雪夜と申します!
黒鬼 懸侍 黒鬼懸侍です。お体の具合はいかがですか?
如月 雪夜 元気です!
黒鬼 懸侍 そうですか。
ですが、まだ夜遅いのでお着替えになられましたらお休みください。
[懸侍は壁にかかっていた服をとって雪夜に渡し、雪夜に背を向ける]
如月 雪夜 …ここはどこなのですか?
黒鬼 懸侍 ここは天崎家の個室です。
如月 雪夜 あまざきけ?
黒鬼 懸侍 とりあえず着替えてください。
如月 雪夜 できました!
[雪夜の様子を見ようと振り返るときちんと着れておらず胸元が少し見えていた]
黒鬼 懸侍 !
[懸侍は顔を赤くしてあまり見ないようにそっぽを向きながら服を正しく着させる]
黒鬼 懸侍 できました。
如月 雪夜 ありがとうございます!
黒鬼 懸侍 では、おやすみなさいませ。
如月 雪夜 はい!おやすみなさい!
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翌日
如月 雪夜 朝です!
黒鬼 懸侍 おはようございます。如月様。
如月 雪夜 おはようございます!
黒鬼 懸侍 着替えをお持ちしました。
如月 雪夜 ありがとうございます!とても綺麗です!
黒鬼 懸侍 ………
ーーーーーー
天崎 清玄 小雪!
如月 雪夜 清玄さん!
[雪夜は突然部屋に訪れた清玄に笑顔で抱きしめる。]
天崎 清玄 ! 僕のこと覚えてるの?
如月 雪夜 ?前にあったばかりですから!当たり前です!
天崎 清玄 …
[清玄の目元には涙が溢れていた。]
如月 雪夜 ! 清玄さん。ど、どこか痛いのですか?大丈夫ですか?
天崎 清玄 ううん。嬉しいんだ。また君に会うことができて…
如月 雪夜 ? また会おうねって言ったのは清玄さんですよ?
天崎 清玄 うん。そうだったね。お腹空いたでしょ?
一緒に食べよ?
如月 雪夜 はい!
ーーーーーー
[雪夜と清玄が食事をしていると、雪夜が清玄に質問した。]
如月 雪夜 清玄さん。ここはどこなのですか?
天崎 清玄 ここは僕の家だよ。僕は貴族なんだ。
如月 雪夜 そうだったのですか!こ、これまでの無礼をお許しください!
[食事が置かれている台の隣で清玄に向かって雪夜が頭を下げる]
天崎 清玄 頭をあげて。僕はこれからも小雪と友達でいたいんだ。
如月 雪夜 本当でございますか!
天崎 清玄 うん。
如月 雪夜 ありがとうございます!
あ、でも、どうして私はここにいるのですか?
天崎 清玄 小雪は僕の家に遊びに来て、寝ちゃったんだよ。
忘れちゃった?
如月 雪夜 ?
天崎 清玄 小雪の物忘れが出ちゃったのかな?
如月 雪夜 そうかもしれません!
天崎 清玄 今日から小雪の家族の皆さん、用事があるみたいなんだ。
だからしばらくはこの家に泊まっていいよ。
如月 雪夜 そうだったんだ。ありがとうございます!
でも、どうして私の家族知ってるのですか?
天崎 清玄 小雪のお母様から頼まれたからだよ。
如月 雪夜 もしかして、清玄様。私が元貴族だということも…
天崎 清玄 うん知ってるよ。でも、僕たちの関係は変わらないよ。
如月 雪夜 本当ですか!
天崎 清玄 うん。それから…ここにいるときは小雪って呼んでもいい?
僕のことは清玄さんって呼んで。
如月 雪夜 はい。わかりました!
黒鬼 懸侍 ………
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天崎家 清玄の部屋
天崎 清玄 ここは僕の部屋だよ。
何かあったらここにおいで。
[清玄は雪夜に自分の屋敷を案内していた]
如月 雪夜 わ、分かりました。
天崎 清玄 ……そういえば、小雪って方向音痴だったけ?
如月 雪夜 !
天崎 清玄 大丈夫。黒鬼がいるから。
如月 雪夜 お、お願いします。
黒鬼 懸侍 ………ぺこ
天崎 清玄 さっ、次行こう。
[その後も天崎家の屋敷を清玄は雪夜に案内した。]
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[そして数日後]
如月 雪夜 ………。
ササ [鏡の引き出しの隙間から紙が落ちた]
如月 雪夜 ?
パサッ
如月 雪夜 『ショウリンガ』……
ドクッ!
パサッ [雪夜が紙に書いてある赤い文字を読むと心臓が跳ね上がり、強い頭痛が起こる。
雪夜は頭や胸を抑えて紙を落として倒れ込んでしまう]
如月 雪夜 うっ…
黒鬼 懸侍 !どうされたのですか!
[懸侍は雪夜のそばに駆け寄る]
如月 雪夜 頭が…痛いの…
黒鬼 懸侍 ………大丈夫です。すぐに治ります…
如月 雪夜 …はぁ はぁ…はぁ
[懸侍は上半身を自分の膝の上に乗せて楽な姿勢を探す]
黒鬼 懸侍 ………
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牢獄
黒鬼 懸侍 (そこは暗く、石の壁が冷たかった。)
幼き懸侍 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
[幼き懸侍は身体中の至る所に切り傷や火傷を負って血が流れており、
その大きな黒い瞳からは涙が溢れていた。]
黒鬼 獄侍 お前は何をしたかわかっているんだな。
幼き懸侍 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
黒鬼 獄侍 …くっ
天崎 岩隆二 何をしておる。はよぉせんか。
黒鬼 獄侍 ………はい…
幼き懸侍 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
黒鬼父 ………
シュ グジャ [獄侍が持っていた刀が懸侍の背中を斬る]
幼き懸侍 あぁぁあぁ!
[懸侍が倒れ込み懸侍の背中からは大量の血が流れていた]
黒鬼 懸侍 ………
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幼き懸侍 …うぅ…お母様…お父様…ヒック…うぅ…
怖いよ…うぅ…ヒック…
黒鬼 懸侍 ……… (親父は変わってしまった。お袋が病に倒れてしまってから。)
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如月 雪夜 ………
黒鬼 懸侍 落ち着きましたか?
如月 雪夜 はい。ありがとうございます。ごめんなさい。
黒鬼 懸侍 ………
(思い出すわけないか…)今、水を持って参ります。
如月 雪夜 ありがとうございます。
[懸侍が厨房に水を取りに行く]
如月 雪夜 (あの文字の血は多分わたしの……うっ…いたい…
何か…忘れている?………)
シュ [突然、天井の一部があき、龍一郎が降りてくる]
如月 雪夜 !
龍一郎 雪!無事でよかった。今はまだ無理だけど、必ず助けるから!
如月 雪夜 ………
龍一郎 ?雪?
如月 雪夜 …あなたは…誰ですか?
手紙の相手は天崎清玄様!
雪夜のことを小雪っと呼んでいるが一体何があったのか…




