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万愛雪月花   作者: 四家雪稀
1/18

第一話 『入学希望』

特別な力の血を引く少女は平穏な日々を過ごしていたが、その力が何者かに知られてしまう。

始まりは、山の奥深く。赤ん坊を抱えて山を走り降りる女性の姿があった。

「オギャー オギャー オギャー」

赤ん坊の鳴き声があたりに響きわたる。女性は息をあげていた。そして、立ち止まり涙を流しながら言葉を発した。

「ごめんね。」

すると赤ん坊の周りに薄く白い霧が広がり。赤ん坊は眠りについた。

途端に後ろから武装した男性が声を上げた。

「見つけたぞー!」

女性はその声に気づくと、また走りだそうとするが、慌てていたからか、足元の木の根に足が引っかかり転んでしまう。女性は赤ん坊から手を離してしまうが赤ん坊は苔の布団で助かったようだ。

女性は赤ん坊に手を伸ばすが、もう少しで届きそうな時に追っ手に追いつかれ首元の近くに刀が降りかかった。

「てこずらせやがって。だが、これで終わりだ。」

男性は声をあげて刀を女性の首に振り下ろそうとした瞬間だった。

キン 

刀と刀が交わった音。女性を助けに来た男性が刀を振り下ろし武装した男性に斬りかかったのだ。

刀を跳ね返し武装した男性の体にとどめをさす。

「ぐぁぁぁ!」

武装の男性は血を流し倒れた。

女性は振り返るとほっとしたのか、息をつく。だがすぐに現実に戻る。

「今のうちに逃げろ。今ならまだ間に合う。」

「ですが…」

「安心しろ。俺の実力はお前が一番わかっているだろ。」

「…はい。」

助けてくれた男性と言葉をまじわし、女性は赤ん坊を抱え再び山を降りていった。

「それでいい…」

男性は小さくそう呟いた。

「いたぞー!」

そしてまた別の追手が現れ、男性は刀を強く握りしめ追手と刀を交じわして行った。

ーーーー

 1573年 葉月

綺麗な青空の元、山を駆け回る少女。太陽の光を受け輝く茶色い髪と月のように輝く黄色の瞳を持つ少女。

如月雪夜(きさらぎ せつや)。彼女が医療忍者の子孫である。雪夜は草むらに目を移すと、何か見つけたかのように駆け寄る。

「ありましたー!」

雪夜はある方向に声をあげた。すると木々の奥に雪夜の小さい頃からの幼馴染、

龍一郎(りゅういちろう)の姿があった。

彼は白髪に少し青の影の短髪と翠色の瞳に緑色の紅葉の葉の模様がある着物を着ている。

龍一郎は雪夜の隣に腰掛けた。

「どれだ?」

「これです。」

そういい。雪夜はある薬草を指さす。

「小さいな。」

「この薬草の葉は一枚だけでもすごい薬になるんです。」

「ふぅ〜ん。」

龍一郎は薬草を採ろうと手を伸ばすが、

「あ、葉は触ってはいけません。手がかぶれてしまうので。茎の部分を持って根ごと採ってください。」

「わ、わかった。」

龍一郎はそういい、薬草の葉に触れないように茎を持ち根ごと採り、籠の中に入れた。

「これで、全部ですね。」

「そうだな。それじゃあ、そろそろ戻った方がいいな。」

「はい。」

二人は木々をつたり、地面を蹴り、かけ走ったりと山を降りていった。

ーーーー

そして、龍一郎が先に城下町が見れる崖の目的地までついた。

「よし。」

その後に雪夜もたどり着いた。

「無理してないか?」

龍一郎が雪夜の元に駆け寄り言った。

「はい。発作も起こっていません。」

雪夜は生まれつき心臓の病気を持っていた。派手に動きすぎると発作を起こす。

「そうか。さてと、ここからは早足か。」

龍一郎はほっとしてから、城下町を見た。

「仕方ないよ。見られたらだめだだから。」

「まあな。よし、行くか。」

「はい。」

そうして、二人は崖を降りていった。

ーーーー

ここは如月医院。雪夜の母親からひらいた小さな病院である。

雪夜が薬研を使って薬を作っていると、玄関の扉が開いた。

「すみません。如月先生はいらっしゃいませんか?」

玄関には怪我をしている六歳くらいの男の子とその母親らしき女性がいる。

男の子は橙色で一つ結びの髪に燃えるような橙色の瞳にぼろぼろの服。

女性は茶色のロング髪に水色の透き通った瞳に同じくぼろぼろの服を着ている。

「はい。私が如月です。」

雪夜は薬作りを止め紙に包み女性と男の子の元に駆け寄った。

「この子の怪我を見てくれませんか?」

(腕に打撲と、足に深い傷…)

「わかりました。お子さんはこちらへどうぞ。お母様はこちらでお待ちください。」

雪夜と男の子は隣の部屋へと移った。

ーーーー

雪夜は扉を閉めると男の子の方を向き側にしゃがみ込む。

「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「…怪奇(かいき)…」

「怪奇くんですね。それでは、まずはここに横になってください。痛くないように、少し眠ってもらいます。」

「うん。」

雪夜は子供を布団に誘導して横になるようにしてもらった。

「大丈夫ですよ。目を閉じて深く深呼吸をしてください。」

「すぅー はぁー」

男の子は目を閉じて深く深呼吸をした。

(《昏睡の術》。)

雪夜が心の中でそう唱えると、周りに薄く白い霧が広がった。

男の子はそれを吸うと眠るように呼吸が安定する。

雪夜は男の子が眠ったことを確認するともう一つ術を唱えた。

(《氷冷術》。)

雪夜が心の中で唱えると、男の子の腕の青いあざがひいていく。

(《回療の術》。)

今度は、男の子の足の深い傷も塞がっていった。

雪夜は傷が治ったのを確認すると、引き出しから塗り薬と包帯を取り出して

足と腕に薬を塗り、包帯を巻き、一息ついた。

「これでもう、大丈夫ですよ。ゆっくり休んでください。」

雪夜はそういうと部屋を出た。

ーーーー

隣の部屋に戻ると女性が不安そうな顔をして待っていた。

「治療は終わりました。まだ、眠っているので一緒にいてあげてください。」

雪夜は優しい声と笑顔でそう言った。

「あ、ありがとうございます。」

母親は涙目になりながら、雪夜にお礼をいい。お辞儀をして男の子のいる部屋に行った。

ーーーー

母親は部屋に入ると、呆れた顔でため息をついた。

「気はすみましたか?会長。」

「………あぁ。」

見ると、男の子が十六歳くらいの青年に姿を変えていた。

「予定通り、彼女を学園に迎え入れる。恵弥(めぐみ)は先に戻って準備をしてください。」

「わかりました。」

恵弥は少し不機嫌そうにそういうと部屋を出て行った。

「………やっと会えたね。雪夜様。」

小さな部屋の中で窓から入る光を見ながらそう小さくつぶやいた。

ーーーー

それから時はたち。戌の刻。如月家の裏庭では剣技の音がなり響いている。

雪夜が手裏剣を投げて龍一郎の足を止めようとするが、その場から龍一郎は苦無を構えて雪夜に向かって投げる。

しかし、どこからか飛んできた苦無によって弾かれた。

「そこまで。」

太く低い声の言葉に二人は動きを止める。

その声の主、泰誌亮魔(たいし りょうま)の元へ二人は集まり、

お互いに向き合って『ありがとうございました。』と礼をした。

彼は毎週三日、夜に修行をつけてくれる龍一郎のいとこで

濃藍の一つ結びの髪に青色の瞳で忍び装束を着ている。

「二人とも忍びとしてはいい感じだ。だが、妹さんは避けるか、構えるかの体制を取ること。

 龍は、苦無の速さが足りない。俺に弾かれてどうする。これからも修行、頑張るように。」

二人は『はい』と返事をし、『ありがとうございました。』といい礼をした。

すると、裏口の方から声がした。

「終わったか?」

そこには雪夜のお兄さんの如月夜琥弥(きさらぎ やくや)がいた。

「兄様!」

彼は雪夜の兄として如月医院の奥にある如月家で二人暮らしをしている。黒髪の一つ結に黒色の瞳で黒と白のぼかしに小さな四角い模様がある着物を着ている。

雪夜が夜琥弥のところに駆け寄り、夜琥弥は雪夜の頭を撫でながらいつものように褒めている。

「相変わらず、いいお兄さんぷりやがって…」

シュ

「おいおいいきなり刀を投げるなよ…」

夜琥弥は雪夜の忍び刀を亮魔に向かって投げた。だが、片手の指二本だけで止める。

「頬に擦りでもしたら許したんだが…」

「妹さんの忍刀でお前が俺を傷つけるとは思わねぇな。」

途端にどこからか声がした。

「こんばんは。」

雪夜は裏庭の柵にある出入り口まで振り返る。

そこには、今日、雪夜の病院で治療を受けた怪奇と似たような髪と瞳を持つ男性がいた。

「ど、どちら様でしょうか?」

雪夜は不安ながらも見たことのない姿であるためといただした。

「文もなく訪れてしまい申し訳ありません。

自分は月ノ宮学園、一年。生徒会会長、学園理事長の息子の宝裏怪奇(ほうり かいき)と言います。」

怪奇は丁寧に自分の自己紹介をすると雪夜を見てにこっと笑みを浮かべた。

彼は今朝とは違う赤い炎の模様がある着物を着ていた。

その怪奇の後ろには一人の人影があった。

「こちらは、自分といっしょに今日この病院に参りました

月ノ宮学園、一年。生徒会副会長、惠弥です。」

怪奇は雪夜の病院に一緒に来た女性のことを紹介した。

「そしてこちらが、月ノ宮学園、一年。生徒会副会長、夜神渉(やがみ わたる)です。」

(は?今、あいつどこから出てきた?)

龍一郎が心の中で突っ込むほどに

怪奇はどこから出てきたのかと思うほど気配や音がしない渉をそこに居たかのように紹介する。

彼は、黒髪を高い位置で結び濃い紫の瞳を持ち麻の葉模様の紫の着物を着ている。

「自分がここにきた理由と言ってはなんですが

…如月雪夜様。あなたを忍びの学園、月ノ宮学園への入学を希望します。」

怪奇は雪夜たちに聴こえるようにはっきりと言った。

長い沈黙。その中で雪夜が一言声を発した。

「……え?……」

医療忍者であることが月ノ宮学園の者に知られてしまったのだろうか?

これが全国に広まってしまえば、大変なことになってしまう。だが、生徒会と話をしていると何かが砕けた音がして…

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