永遠に2人一緒
イットちゃんはまた笑いだした。でも、頬からは涙が伝う。
「あたしが必要……か。憎い人間の言葉なのに、なんでこんなに涙が溢れるんだろう? なんでこんなに嬉しいんだろう?」
「それは、君が元々人々を癒す存在だからさ! 恨み辛みじゃなく、人を笑顔にさせる存在だからさ!」
「恨みにかまけて、いつしか忘れていた。あたしの存在理由を。ありがとう、あなたのおかげで思い出せた」
「礼を言うのは俺の方だ。これからは、できればさ。お、俺の側にいてくれないか? 俺はイットちゃんとずっと一緒にいたい。それだけじゃなく、今まで癒してもらった恩返しもしたい!」
「うん、と言いたいけど。あたしがこの世に存在できてるのは、憎悪。ほら、それがなくなったからあたしは消えかけてる……」
「イットちゃん……」
「さようなら、あなたに出会えてよかったわ……」
「嫌だよ! イットちゃんが側にいてほしい!」
「ごめんね、あたしはたくさん罪を犯したから。これからはバーチャル世界で、永遠に無償で人を喜ばせるわ……」
「行かないでくれぇ!」
俺は強く願って、イットちゃんの唇をうばった! 目を丸くする彼女。だけど、目の前が真っ白になって……。
◇◇◇
あれっ、ここは? 来たことはないけど、よく知ってる飲食店だ。食べられた傷も、漫画みたいにあっさり治ってるし。そして目の前には嬉しい人が。
「バーチャル世界へようこそ。と言えばいいのかな?」
「ということは、俺もバーチャルの住人に! やった、ずっとイットちゃんと一緒だ!」
俺がイットちゃんの両手を握ったら、
「ふぇっ!? な、なにを!?」
彼女は真っ赤になってうつむいてしまったので、俺は謝った。
「ご、ごめんね……」
「ううん、えと……。でもさ、これからは永遠に無償で……」
「それでもいい、俺はイットちゃんがいれば幸せだから! さあ、みんなを癒すために何か食べてみてよ! なんなら、俺を食べてもいいぞっ! ハハッ!」
「キ、キミを……食べる! い、いいのかな? そんなことしていいのかなっ!?」
「イットちゃん、どうしたの? 」
「ひゃっ。……な、何でもないからぁ!」
「嘘ぉ、何か考えてたでしょ!?」
「し、しし知らない!」
「ハハッ、ごめんごめん! 早速動画を撮ろうか!」
永遠の罰でも、二人ならきっと耐えていけるはずだ。
ご閲覧ありがとうございました。