恐怖と恐怖
安い物件には要注意。安くなくても周囲の環境など、よく聞いて契約しましょう(´∀`)さもないと・・
友澤遥、24歳。マンションの自室において、彼女に深刻な事態が起こっていた。時刻は深夜2時を過ぎたころ。外から雨音が聞こえてくる。枕元から見えるのは天井からぶら下がる女。巨大フックにかけた紐が首に巻き付き、体がだらんと垂れている異様な光景。入居したてのこのマンション。2LDKで月家賃45000円。
「お客さま、運がいいですねぇ(*´∀`)」
不動産のハゲに勧められ即入居。入居時に自分以外、何かの存在を感じる違和感。それが二つ。案内された時は気付かなかったが、よく見れば天井の一部が変色している。
『事故物件だ!』
後悔先に立たず。取り合えず逃げ出したい。が、体が動かない。金縛りにあっている。何故か視線はこの女にくぎ付け。黒髪ショートヘアーで歳はさほど変わりないか。この後、いやな展開しか思い浮かばない。女は首が右に傾き目を閉じている状態。それが、ほら!目を開けた!で、体を動かす。急にそんな激しく動く?首に手をかけ、もがく女、いや幽霊。
かっ・・くかっ・・
遥の口からは言葉が出ない。出るのは呻きだけ。幽霊の動きが止まった。手足がぶら下がり、血走った視線だけが遥に向けられている。
ひっ!ひっ!
微かに動く首が拒否を示す。ホラー映画の展開通りなら、次は・・幽霊が消えた。ぶら下がった姿は、ない。が、ベットの下から這い上がる気配がある。
あ、あ、あ、あ、あ、ああ
聞こえてくる幽霊の振り絞るような声。ゆっくりとそれは遥の体を覆い被さるように這い、やがて目の前に現れた。大きく口を開け、遥を睨みつける幽霊。
ひぎっ!いぎぃ!
おぞましい姿に顔がひきつる遥。眼前には首を左右上下に動かす幽霊。
『近い!近い!』
心の内に叫ぶ遥。ごえっ!急に首に痛みが走る。幽霊の首に巻き付いている紐が遥の首に巻き付き締め上げ始めた。幽霊が眼前でうっすら笑みを浮かべる。し、死ぬ?遥の脳裏に二文字が浮かぶ。
『いや、私、あんたに何もしてないじゃん!』
理不尽な責めに苛立ちがふつふつと沸き起こる。苦しみ意識が薄れ行く中、何か枕元を動く気配があった。鳥肌が体中に広がるこの感覚。遥がこの世でもっとも嫌悪する存在。それが顔を這い鼻の上で止まった。大きさは三センチほど。黒光りするそいつの名は、クロゴキブリ!日本の家庭内において茶羽ゴキブリにつぐ勢力。
いやああああああああ!
絶叫する遥。金縛りが一瞬にして解け、幽霊が姿を消した。ゴキブリも遥の叫びに鼻から離れ、身を隠す。ベットから跳ね起き洗面所に移動し、遥は洗顔する。
ひいいいいい! ひいいいいい!
何度も何度も洗顔し、やっと我に返ると命が助かっていることに気づく。安堵の気持ちが遥を包む・・では、ない。幽霊は消えたが、幽霊よりおぞましい存在が室内に潜んでいるのだ。遥は急ぎ着替えるとマンションを飛び出し友人宅へと避難。友人に事情を説明すると一笑にふされたが、疲れがどっと出て眠りについた。
翌朝一番に不動産に駆け込んだ遥は契約を解除し、苦情を言う。
「事故物件でしょ、あれは!」
事故から概ね3年間、不動産側は契約者へ説明する義務があり、物件の事故からは2年と半年。それを怠っていたと言う過失を認め、敷金など全額返納することになった。しかし、不動産業者はほくそ笑む。事故物件は誰かが入居した後、減額措置のない通常物件となるのだ。
遥は室内を整理し、退去した。たった1日しかいないこの部屋。死んでいてもおかしくなかったと思う。ゴキブリがいるので友人たちに荷物整理を協力してもらったが、友人たち曰く、隅々くまなく探したが、ゴキブリはいなかっと言うことだ。ゴキブリは嫌い!それは変わらないが、おかげで助かった命。恐怖が恐怖を凌駕した。
『ゴキブリに対して見方を変えないとな・・』
友人たちと部屋を後にする遥。
ムリムリムリムリ!それは、ムリ!
首を激しく振って馬鹿な思いをかきけした。
誰もいなくなった室内。幽霊は次の入居者、犠牲者を今か今かと待ち受けているのだろう。見上げた天井に・・ゴキブリが張りついていた。
いかがでしたか?小説の神が急に降りてきたので書いてみました^^
ちなみに、ゴキブリの多い順。※左が多いよ。
チャバネゴキブリ→クロゴキブリ→ヤマトゴキブリ