あ、生まれた
トウカイテイオーちゃん推しです
あ、生まれた。
「ぉ、おおお、おおおおお……!?」
バチィと接合するような感覚。突然に頭の中を溢れかえる情報で脳がシェイクされていた。
ダムが堤防を破壊しようとするが如くの本流――まずは一つ一つ情報を刻まなければと本能が命令した。
シュルツ――俺のこと。田舎貴族。ローリエ家の六男。視界に映る緑は木々の色彩。空は青い。鳥が鳴いている。俺は生きている。
転生――転生? いや、そう、俺は転生した。日本からこの異世界へと。
転生前のこと――なぜか、思い出せない。ただ転生したという認識だけがある。
レベル――そう、この世界はレベルという概念がある。人類獣人魔族含めて最高10レベルが観測されている。
レベル――そう、そんな世界で俺のレベルは9999である。
「え?」
は? いや、マジ? 頭の中の事実が俺の精神と全くリンクしていない。
シュルツは信託の儀の時はランク:農民でレベル2だったぞ? 記憶として残っている。だが現在のシュルツはレベル9999だと頭が認識している。
「……」
恐る恐るステータス画面を開いてみた。
シュルツ・ローリエ レベル9999
HP/999999 MP/999999 SP/999999
攻撃力:999999
耐久力:999999
速度:999999
スキル:絶対攻撃 絶対防御 戦神の寵愛 運命神の抱擁
ランク:繝?え繧ケ繧ィ繧ッ繧ケ繝槭く繝
「……」
開いた口が塞がらん。ゲームのチートキャラのステータスじゃねーかこれ……。なんかランク文字化けしてるし……。
向上心のある野心家や織田信長みたいな覇道キャラなら泣いて喜ぶだろうが、いかんせん俺の心は小市民だ。いきなり『はいこれ世界を征服どころか破滅できる力だからよろしくね』と渡されても扱いに困るどころの話じゃねえ。
「おいおい…」
突然現れた核兵器ばりのステータスにクラクラして、俺はすぐ近くにあった木に手をついてもたれかかった。
バキィ!! ズザザアアア!!! メギィ……!! ドォオオオ……!
「は?」
俺は目を疑った。というより、目の前で起こった荒唐無稽な現実を全力で受け取り拒否していた。
いったいどこの誰が想像するだろう。
俺が木に触れた途端、木が根っこからめくり上がり、あまつさえミサイルのように一直線に木々を薙ぎ倒して飛んでいき、遥か数十キロは離れている山に激突したのだ。
マグナムばりに爆進した木のせいで、森は戦争でもあったんじゃないかと思うくらい破壊されていた。木が激突した山からは、マグマの噴火かと思うくらい土埃が大空目掛けてに立ち昇っていた。
「……」
俺は今度こそ絶句した。しかしどうやらこれで終わりではないようで。
ピシィ――!!
「おいおいおいィ!?」
今度は一歩動いただけで地面にヒビが走った。つま先から真っすぐ伸びるヒビの終わりは、目を凝らしても全く見えない。
「まさか……」
嫌な汗と悪寒がした。間違いなく心霊現象や他者による力ではない。
「このあたおかステータスのせいで、こうなってんのか……!?」
レベル9999から生み出されるオール999999とかいうぶっ壊れ数値は、どうやらこの世界を超越したチカラのようで。
犬をなでるように触れば木を地平線まで吹き飛ばし、トイレに行くように歩けば大地が割れるようで。
つまりは、
「俺はこれからどうやって生きていけば……?」
まともな人間の生活が絶望的になったということだった。