未知の魚と料理と酒
湖のそばまできたが、街は見当たらない。
とりあえず湖畔に沿って歩いてみる。
しばらくして釣り人?(犬のような顔立ちの種族なのかな?)を見つけた。
「こんにちわ。釣れますか?」
言葉が通じるかわからないがとりあえず声をかけてみる。
「何匹か釣れたよ。見るかい?」
どうやら言葉は通じるようだ。
釣り人はそう言ってバケツのようなものを見せてくれた。
中には数匹マスのような魚が泳いでいた。
「この辺りにお住まいですか?」
とりあえず突っ込んで聞いてみることにする。
「少し南に行ったところにある街に住んでるよ。兄ちゃんは何処からきなさった?あまり見かけない服装だが」釣り人は気さくに返してくれた。
「道に迷ってしまいましてちょっと困っております。」
今夜一晩でも泊めてもらえるとありがたいのだが。
「そりゃ大変だな。うちの母ちゃんが良いっていうんなら今晩はうちに泊まっていきな。美味い魚も釣れたし話し相手になってくれるかい」
願ってもない展開だ。
「それは助かります。自分料理人なのでよかったらその魚で美味しいもの作りますよ」
自分には料理以外の取り柄がない。
異世界で魔物と戦うなんて無理だし魔法も使えない。
ありがたいことに出張料理をしたおかげて自分の料理道具と多少の調味料などは持っている。
「それは楽しみだなぁ!母ちゃんの料理もうまいがたまにはいいかもなぁ。んじゃ早速行こうか」
釣り人は帰り支度を済ませた
「こっちだ。着いておいで」
釣り人に着いて湖畔沿いを歩いた。
小一時間くらい歩いただろうか。
夕暮れの時間ぐらいだろうか、二人は程よく賑わう街に着いた。
釣り人は街の中程にあるこじんまりとした家の扉をあけた。
「母ちゃんただいま」
そういうと中から同じような顔立ちが現れる。
「おかえりあんた。その人は誰だい?」
「釣りしてたら声かけてきたんだよ。道に迷ったそうでな今夜うちに泊めてやろうかと思ったんだが良いかい?」
「そりゃ大変だねぇ、こんなこ狭いうちでよければどうぞ」
優しいおかみさんだな。表情はよくわかんないけど見知らぬ輩を客人としてみてくれるなんてありがたい。
「お世話になります。味宮と申します。自分は料理しか取り柄がありませんのでこの御恩を先ほど釣られた魚を料理させていただければと思います」
「まぁ!どんなお料理されるか楽しみだねぇ」
「では早速。厨房をお借りします」
「ではこっちですよ」
おかみさんは味宮を厨房に案内した。
さて、とは言ったもののこの世界の魚は初めてだ。あまり変わらないと良いのだが。。
味宮はカバンから包丁と調味料をだした。
そうだなぁ、見た目はマスっぽい感じだし刺身と塩焼きとあら汁にするか。
手早く捌くとよく見るサーモンピンクの身だ。
油の刺しもきれいに入っている。
これはうまそうだ。
お皿に切り身を並べて小皿に持っていた醤油とわさびを添える。
あらを鍋で煮込み、持っていた味噌を入れる。
軽く塩をして網に乗せ直火で炙る
ちょうどカボスを数個持っていたので果汁を塩焼きにかける。
「お待たせしました。お刺身と塩焼きとあら汁です。お口にあいますでしょうか。お召し上がりください」
「おお!これは美味しそうだ」
釣り人夫婦は歓喜の声をあげる。
「この生の切り身がお刺身かい?大丈夫なのか?」
「そうですね。きれいな身でしたので自分の故郷の食べ方で、醤油とわさびでどうぞ。わさびは辛いのでつけ過ぎないでくださいね」
「なるほどなるほど。これはうまい!うっ、、、ツーーーーんときたぁ。これがわさびと言うものか。」
「辛いけどあとひくわね」
おかみさんも気に入ってくれたようだ
「塩焼きには故郷のカボスという果実の搾り汁をかけております。」
「爽やかな香りじゃな〜、さっぱりとして魚の甘味をいい具合に引き立てとるのぉ。」
「初めてだわ!食べ慣れた魚なのにとっても新鮮な感覚」
「もちろん今日釣り立てですからね」
ちょっとジョークを挟んでみたがサラッと聞き流された。
「あら汁はお刺身と塩焼きに使った以外の部分を煮込んで故郷の味噌という調味料で味付けしました」
「これはまたいい出汁がでて美味いなぁ!身体中に染み渡るようじゃ」
「いやぁお前さんいい腕してるじゃないかい。」
「ありがとうございます」
「母ちゃんとりあえず酒持っておいでよ。美味い飯には美味い酒が必要だろ?」
「あいあい、ちょっと待っとくれ」
そのあとは3人で美味い飯と酒を楽しんだ。