アプリ学園都市~アプリの力を借りたいがリスクが高すぎて使い物にならないんだが~
「ふぁああ、気持ちいい朝だなぁ。よし、今日から始まる高校生活頑張ろう。」
日本で随一の広さを誇る学園都市である桜野学園に通う為に実家から引っ越してきて初めての登校だ。気を引き締めていかないと。
ここ桜野学園はいわゆる海上都市でこの学園を創設した桜野大穀が学園を作るためだけに建築された人工の島だ。広さは東京の3倍ほどらしい。でかい。
創設からまだ5年しか経っていないが、卒業生が語るにはこの世の楽園のような場所で願うならばもう一度通いたいと言うほどに魅力的な場所だというのでこれからの3年間が途轍もなく楽しみなのだ。
「制服よし!鞄よし!準備完了っ!行ってきまーす。」
「新入生諸君。入学おめでとう。これから説明することは皆知っていることだろうがよく聞いて欲しい。この学園での生活を送っていくためにはポイントが必要不可欠だ。食料を買うことや各施設を利用するために使う事はもちろん。教材を買うためにも利用していくことになる。皆はこのポイントがテストや部活動、それだけではなく普段の生活を送るだけでも貯まっていくことは理解しているだろう。しかし、注意してほしい。月に一度行われる検査でポイントが0を下回っていた者は問答無用で退学になる。このことを忘れて退学になってしまう者が毎年一定数いる。無駄使いせずに普通に生活をしてさえいればそんなことにはならないはずなのでしっかり頭に残して節度ある学園生活を送っていただきたい。
それとは別に2つ3つ話さなければいけないことが………。」
校長先生の長い話が終わり、それぞれのクラスへと移動した。
そこでは軽いホームルームが行われ、学園のみで使用可能な端末が配られた。
この端末は貯まったポイントを使用出来るようにする財布代わりだけでなく、端末同士での通話やメールも出来るようになっている。
新入生には一律で1000ポイント配られているようだ。
僕の端末にも問題なくポイントが入っていた。
あと、入試の順位に応じてもポイントが入ってるみたい。僕は57位だったので追加で100ポイント入っていた。
新入生だから今回は払う必要性が無いようだが、教材を買う為には5000ポイントも払う必要性があるらしい。ほえー、これは本当に無駄使いが出来ないぞ。
とは言ったものの、僕だって遊びたい盛りの学生だ。
初日なのだもの、目一杯遊ばないと。
どうしようかな?聞いた話だと遊園地もあるらしい。有名レストランも出店してるらしいし、どこに行こうかな。ってうわぁあ!
浮き足だってしまって周りをしっかり確認していなかった僕は前から歩いてきた人に気づかずにぶつかってしまっただけではなく、その場で尻餅をついてしまった。
「大丈夫ですか?」
「いてて…いえ、大丈夫です。ごめんなさい、僕の不注意でした。ケガは無い…ですか…」
起き上がらせてくれようとした手を掴み、謝罪しようと相手の顔を見て僕は惚けてしまった。
見つめていると吸い込まれてしまいそうなサファイアの瞳。シルクのようなきめ細やかな銀髪。お人形さんのような顔立ち。物語の世界から抜け出してきたような美しさに僕は言葉を失った。
「………本当に大丈夫ですか?」
「…っ!いえいえ、すいません。ちょっとぼーっとしちゃっただけです。」
何秒見つめてしまったのか分からないが、心配するような声が聞こえてきてはっとする。
それにしてもきれいな人だ…。腕はすらっとしてるし、身長180cmはあるんじゃないだろうか?僕の身長は150cmぐらいしかないので少し分けて欲しいぐらいだ。
「えっと…あの…お詫びと言ってはなんですが…ご飯でも奢らせてもらえませんか?」
思わずといった感じで誘ってしまった。お詫びとは言っているがその実ナンパをしているようなものだ。ほら見ろ、ちょっと困ったような表情をしているではないか。
「そこまでされることの程じゃ…いや、じゃあお言葉に甘えようかな?」
あれ?好感触?えっ!?一緒にご飯食べれるのっ!?やったー!
そうして、二人で一緒に学食に移動して食べることになった。
彼女はうどんを頼んでいたので、僕も同じ物を注文した。
「自己紹介をしましょう。私の名前は桜野吹雪よ。あなたは?」
「原田かごめです…って桜野ってあの桜野ですか!?」
桜野は学園の理事長の名字と同じだ。
つまり、桜野さんは理事長の娘なのか!?
「えぇ、あなたの想像している桜野であってるわ。だからと言ってはなんだけど名字で呼ばれるのはあまり好きじゃないの。名前で呼んで欲しいわ。」
「えと、じゃあ吹雪さん。質問なんですけど何で一緒にご飯を食べてくれたんですか?」
「それは、まぁ。父が過保護でね?あまり人と一緒に遊んだりとか食べたりとかもしたことが無かったのよ。だから学校に通う許可が出て、お友達を作りたかったんだけど、誰も話しかけてきてくれなくて、でも自分から声をかけるのも難しくて困っていた所だったのよ。」
それで僕の誘いを受けてくれたのか。でも確かに分かる。吹雪さんは綺麗すぎて近寄りがたい雰囲気をまとっているからな。
僕も彼女にぶつかることがなかったら恐れおおくて声を掛けることさえ出来なかっただろう。…吹雪さんともっと話したいし友達になりたいな。
「あの、もし良かったらだけど、この後遊びに行かない?」
「え、私と?いいの?」
「もちろんだよ。君と一緒に遊びたいんだ。」
「じゃあ、うん。一緒に行く。」
こうして僕達は一緒に遊ぶことになった。
最初に向かったのは無難にゲームセンター。
彼女が欲しそうに見ていた犬にリスのしっぽがついたキャラクターのぬいぐるみを取ってプレゼントしてあげたら、とても素敵な笑顔がいただけた。眼福です。
次に向かうのは水族館。
イルカショーが大迫力だった。思ったよりも水が客席に届いてしまって二人ともびしょ濡れになってしまった。代わりの服として色違いだけどお揃いの服を店で買った。
ついでに売店でソフトクリームも買ったのだけれど、吹雪さんが僕の食べてる味もきになったみたいなので少し分けてあげたりした。
最後は映画館。
僕が見たい映画があったので付き合わせてしまったのだけれど、失敗した。
僕が見たかった映画はホラー映画。けど、吹雪さんは怖い物が駄目だったらしい。
僕はそれに気づかずに上映が始まってしまったのだが、吹雪さんはよほど怖かったのか映画が終わるまでの間ずっと僕の手を掴んで離さなかった。一番怖い見せ場のシーンでは僕に抱きついてしまったほどだ。
…反省はしているけど、吹雪さんの可愛い所が見れて得した気分になってしまった。
そうやって二人で遊びまくった。
なんやかんやあったが、吹雪さんも楽しんでくれたみたいだ。
遅くまで遊んでしまったので送っていこうとしたのだが、吹雪さんの護衛らしき人が突然現われて彼女を連れ帰ってしまった。
でもまぁ明日も会えるだろうし、次また遊ぶ時のためにアドレスを交換したりしたので、問題はない。
次の約束までしちゃうなんて今日はいいこと尽くめだなぁ。
そうして吹雪さんのメールアドレスを眺めながらベッドで眠りについた。
pipipipipi~
「ん、朝か…。今日から通常授業だし早く行かないと…ってなんだこれ?学園からのメール?」
起きてすぐに端末を確認したのだが、学園から届いたメールが表示されていた。
「なになに…[あなたは当選しました。表示されているボタンをタッチしてアプリをインストールしてください]か…。いや、詐欺でしょ、これ。」
えー、学園を騙った詐欺メールが届いちゃったよ。
この端末貰ってまだ一日も経ってないのに…。
はぁ…。ついてないな。まぁ、こうゆうこともあるさ。気を取り直して学校へ行こう。
はぁ、今日も一日疲れたなぁ
初日ということもあってドタバタしていたので、今日は吹雪さんに会うことができなかったんだよなぁ。
まぁ、明日は落ち着くだろうし、今日はまっすぐ帰ろう。
「よぉ~、そこの兄ちゃん。ちょっといいかなぁ~。」
「な、なんですか!?」
まっすぐ帰ろうと道を歩いていると、ガラの悪そうな三人組に道を塞がれてしまった。
不良に絡まれるなんて本当に今日はついてない。
「いやぁ、ちょっとね。俺たちゲームの相手探しててさぁ。
君、新入生でしょ?一緒に遊ぼうよぉ。」
「すいません。ちょっと僕急いでるので、失礼します。」
獲物を見るような瞳だ。正直怖い。
でも、ここは大通り。警備の人らしき人も近くに見える。
手を出すと困ることになるのは不良達のほうだ。
ここは、多少強気に出てでも逃げるべきだ。
「ちっ…あぁー面倒くさいなぁ。もう始めちゃおうぜ。」
「そうだな。」
何か話しているようだが、関係ない。
今のうちに逃げよう。
「あー、対象指定。ルールは乱闘。オールオアナッシング。時間無制限。死亡でゲーム終了。
よし、ゲームスタートだ。」
「はっ、はぁ?何だここ!?」
景色が突然変わっただけでなく、そこら中にいた人達がどこにも見当たらない。
「おぉ~、ここにいたか。」
「っ!?」
振り返るとそこには先ほど声をかけてきた三人組がいた。
「俺たち運がいいなぁ。平原ステージだと隠れる所も無いからすぐ終わるぜ。」
「だな。」
「一体これはなんなですか!?あなた達は何者なんですか!?」
「あぁ?何って、ゲームだよ。ゲーム。」
ゲームって何だ。こいつらは何を言ってるんだ。
「まぁ、1年生のお前が知らないのは無理もない。この学園では様々なことでポイントが手に入るのは知っているだろう?このゲームもそれの1つでな?ゲームの勝敗によってポイントが手に入ったり入らなかったりする奴だ。俺達はこのゲームでポイントを稼いでいるんだよなぁ。まぁ、お互いの同意が無いとゲームは始められないってのがネックだが。それにこのゲームをやってる間は時間が進まねぇんだよ。理屈は知らんがな。」
「同意が無いと始められない…?僕はそんなものをするなんて一言も言ってないぞ。」
俺はこいつらから早く逃げたくて会話なんてまともにしてないぞ。
「ふふっ。ふはははっ!あぁ、そうだ。そうだよ。お前は同意なんてしちゃいない。
しかし、1つだけ同意なしでゲームが始められるんだよ。それがな。指名手配者制度だよ。」
「指名手配…?」
「あぁ、そうさ。学園内での素行が悪かったり、成績が良くない者が不利になるような制度さ。指名手配されると強制的にゲームをすることを強要されるのさ。まぁ、指名手配のランクによって賭けられるポイントの上限が決まってたり、いろんな制限があるんだけどな。
ふはっ。笑っちまうぜ。お前一体何したんだよ?お前のランクさぁ…最上級のSランクだったぜ~!!挑まれ放題、賭けるポイントの制限無し。ルール無用。いいカモじゃねぇか!」
指名手配…Sランクだって!?僕はルールを破った覚えは無いし、成績も悪くは無かったはずだ。そんなものを付けられるようなことはないはずだ。
「まぁ…、なんでもいいや。とりあえず…死んどけや。」
「あぶないっ!」
振り下ろされた刀を右に避ける。
今の攻撃…完全に僕を殺す気だった。
「し、死ぬ…っ。」
「安心しろ。死にはしねぇよ。ゲームの中で死んでも現実には何の影響も無い。
ま、負けたらポイントは全部無くなるからこの学園にいられなくなるかも知れないけどなぁあ。」
そう言いながら振り下ろされた刀を転がりながら避ける。
「おらおら、どうしたぁあ!」
「避けないと~死んじゃうよ~?」
完全に遊ばれている。すぐに殺せるだろうに少しずつ傷を付けられている。
もう駄目だ。ポイントが全部奪われて僕の学園生活は終わりなんだ。
…嫌だ。まだ、僕の学園生活は始まったばかりなんだ。終わりたくないっ!
【力が欲しいですか~?】
何だ?この声は?
【この状況を打開する力をお求めですか~?】
…何でもいい。この状況をなんとかしてくれ。
【はい、毎度あり~。お買い上げありがとうございます~!】
【アプリインストール。No.7 出張どこでもなんでもショッピング。起動です。】
「あぁ~?何だこの光?」
「やばいぜ、兄貴!早くこいつを殺さないとっ!」
【特別大サービス!トリガーを引くだけで相手全員を倒せる銃ですよ~。はい。撃っちゃいましょー3、2、1どかーんっ!】
カッ
無意識の内に銃のトリガーを引いたら、全てが終わっていた。
光が収まると辺り一面が焼け野原になっており、目の前にいたはずの男達は消え去っていた。
バトルリザルト
You Win!!
獲得ポイント:2300
どうやらゲームは終わったようだ。
死ぬような思いをして、今持ってるポイントの2倍ほどしか手に入らないのか…。
こんなゲームやるもんじゃないな。
【お客様~?サービスはご満足いただけたでしょうか~?】
そうだ。この直接脳に響いているこの声は一体なんなんだ?
いや、この声のおかげでポイントが全部無くなる事態は避けられた訳だが…。
【はい!わたくしはショッピングAIのしょっぴーと申します。本日は出張どこでもなんでもショッピングにご登録ありがとうございます。本サービスはお客様の求める物を即時にお届けします。
わたくしどもでご用意出来ない物はございません!いつでもどこでもご注文ください!】
なんでもショッピング?そんなものに登録した覚えはないんだけど?
【お客様はすでに本サービスを受ける権利を所有しておりました。
後はお客様の同意だけで契約が出来る状態でした。メールが送られていたはずですがご確認していませんでしたか?】
メール?あっ、もしかして朝の詐欺メールのことか。詐欺だと思っていたけど学園からの正式なメールだったのか。
【はい!そのメールで間違い無いと思われます。】
そうか、学園からの贈り物のおかげでなんとかなったんだな。
【ではお客様?今回のサービスの代金を頂きたいと思います。】
へ?代金?あー、ショッピングだからポイントを消費しちゃうのか。
あんなすごい威力だったし、高いんだろうなぁ。
【今回購入していただいた商品は『極大ホーミング光線銃』ですので、お値段は500ポイントになっております。】
あ、思ったよりも安い。よかった。
【……というのは通常価格の話です。】
…へ?
【お客様は残念ながら通常価格の100倍での取引になりますので、5万ポイントになります!】
は、はぁーー!?そんなの払える訳がない。というか一体なんでそんな値段になるんだ!?
【お客様はこのサービスを受けるに当たって重大な規約違反をしているからです。】
契約…違反…?
【そうです。お客様は社長の娘である吹雪様との行動で禁忌をいくつか犯してしまっているのです。】
吹雪さんと一緒に遊んだことに何か関係が…?
【はい。違反項目としては以下の通りです。
・お嬢様とペアルック
・お嬢様と間接キス
・お嬢様と2時間以上暗がりにいる
・お嬢様と手をつなぐ
・お嬢様に抱きつく
と、なっております。これらの情報を鑑みて販売価格を100倍に引き上げさせていただきました。】
た、確かに吹雪さんとそんなようなことをしたかも知れないけど事故みたいなものじゃないか。というか、5万ポイントなんて払えるわけないじゃないか。
あの不良達にポイントを全部とられた方がまだましだった。
くそ、なんでこんな事に…。
【あぁ、そうです。お客様に伝え忘れていたことがありました。】
【社長からの伝言です。娘に近寄る男は万死に値する。だ、そうです。
では、お客様?払ってくださいね?あ、マイナスになっても大丈夫です。一ヶ月以内にプラスにすれば問題ないですよ。では、またのご利用お待ちしておりまーす。】
……終わった。
所得ポイント
・入学特典 1000ポイント
・入試成績100位以内 100ポイント
消費ポイント
・うどん(2人前) 12ポイント
・UFOキャッチャー(8回分) 8ポイント
・水族館入場料(2人分) 20ポイント
・サカナTシャツ(2人分) 20ポイント
・ソフトクリーム(2人前) 4ポイント
・映画鑑賞(2人分) 20ポイント
・ポップコーンセット 8ポイント
・極大ホーミング光線銃 50000ポイント
残りポイント
-48992ポイント
主人公の取得したアプリの解説
・No7 出張どこでもなんでもショッピング
どんなものでも、どんな時でも即時に配達。
それなり価格で買えないものなどありませんがモットーのショッピングツール。
他のナンバーアプリよりも実用性が高く、高性能。
取得条件に対して得られる恩恵が大きい。
…恩恵も大きいが、それ以上のデメリットもあるらしい。
取得条件
・1日に8時間以上吹雪と行動を共にする。
・吹雪とメールアドレスを交換する。
・吹雪の最高の笑顔を引き出す。