06:み吉野病院・乙
【2-6】
午後8時半。
「お疲れ様でーす!」
「おつかれー。じゃあまた明日もよろしくな、秋野!」
アルバイトが終わり店を出る。
ドライブスルーの地面のアスファルトが濡れて、色が濃くなっている。
廃病院を目指す。
雨は止んではいたが、かわりに風がいくらか吹いていた。
そのせいかガードレールの表面には雨滴がほとんどない。
この様子だと自転車にかけておいたレインコートは乾ききっているかもしれない。
5分ほど歩いて廃病院、み吉野病院についた。
中にはもうすでに過半数がおり、壁にもたれたりして待っていた。
残りの俺も間もなく到着し、16人全員がそろった。
「さてと、じゃあ家に戻るか」
身体をまとめるのは、作った時とほとんど同じだ。
左手を出しサッと16と書く。
16人が同時にゆっくりと頭から順になくなっていく。
「ぐっ、ぐうぅぅっ……!!」
頭を押さえる。
俺の身体の中に、彼らの労働による疲労が入ってきたのだ。
筋肉痛・頭痛・関節痛……。
16人分を1人で受け持つのだ、痛みは想像を絶する。
1分もかけて16人が1人になった。
その場に背中からどさりと倒れ込む。
60を超える発熱、それによる大量の汗と蒸気が中から外へ出ていく。
着ているものがぐっしょりだ。
身体が強くなり痛みに慣れてきたというのもあって、これでも痛みに慣れてきたのだが……
身体をまとめるときは今でもためらってしまう。
痛いものは痛い!!
ボディがあった場所には吸収されなかった服が地べたに落ちている。
これも回収しなくちゃいけない。
月が雲から覗いている。雲も少ない。
「明日は晴れるかもしれないな……」
そんなことを考えて歩けるまで回復するのを待つ。
ここでひとつ余談。
体温が60度まで上がることは人間ではありえないらしい。
41度だと意識が無くなり、
42度を超えると人体のタンパク質が壊れて、死ぬらしい。
だから体温計の最高温度は42度なんだって。
中学生の時、それを知らずに体温を測って体温計を壊したのは懐かしい思い出だ。
(それ以来、体温を測るときは理科の実験で使うような“温度計”を使っている)
余談終わり。
頭痛が引いてきた、もうあと2分ぐらいで立ち上がれるだろう。
続く