03:質疑応答・上
【2-3】
俺は今、赤いワンピースを身にまとった女とテーブルで向き合って座っている。
話がある、と言われ椅子をすすめられてからずっとこのままだ。
とうとう女が口を開いた。
「えーっと そうだね。まずは自己紹介をしようかな……」
いきなり質疑応答と言うわけではないらしい。
「私は神代紅水。神の代わりで神代、紅の水で紅水。よろしくね!」
「僕は秋野白露です。
『静かなるドン』の秋野さんの秋野に、二十四節季の白露で白露。
こちらこそよろしくお願いします」
「かたいなぁ…… 君、何歳?」
「16です」
「私は18歳。2歳なんて誤差だからタメでいいよ!」
「は、はぁ。」
「白露は情報庁って知ってる?」
「あぁ、知ってるよ」
「私はその情報庁に所属していてね、今日は白露にお願いがあってきたんだ」
「お願いって何?」
「シンプルに言うよ。
シンプルに言うとね、秋野白露君。」
ゴクリと唾をのむ。
「君に世界を救ってほしいの!」
俺は椅子に座りなおす。
「……急な話だなぁ」
「うん。まともに説明したら時間がかかっちゃうから、
これから少しずつ話していくわ」
俺は彼女の話を聞いていく。
「最初はそうだね、
なんでそんなことをしなきゃいけないのか、についてかな」
「これはそういうものだと思ってそのまま呑み込んでほしいんだけど、
今年の7月18日に地球から人類は消されるわ」
「3か月後じゃないか……」
「そうなのよ、もう時間がないの」
「俺はそれを阻止すればいいってこと?」
「ええ。お願いできるかしら。 無理強いはしないから、断ってくれても大丈夫よ」
「うーん。決めるにはまだ情報が少なすぎるな。
具体的に俺はそのために何をすればいいんだ?」
「私たちの最終目標はご両親の遺したシステムを復旧することなの」
「父さんと母さんの……!?」
「今庁が使っているものが色々あって使用期限をとうに越しているの。
つまりはとても危ない状態ってことね。
そこで、庁はほとんど完成している状態の“アキノシステム”に切り替えたい、ということなの」
「つまり俺のすることは、
3か月後に世界が滅んでしまうので、新しいシステムが使えるようにそれを復元をする……であってる?」
「そうそう!」
「うーん……」
世界を救う、ねぇ。
どうしたものか……
――プルルルル!
携帯の着信音だ。俺のではないということは……
彼女はスマホを手に取って立ち上がる。
「ごめん、ちょっと席外すね」
女はリビングを出て行った。
俺は驚いていた。
別に見るつもりはなかったが、目に入ってしまった。
彼女のスマホの着信画面にあった名前……
それは、俺のよく知る人物と同じ名前だった。
それは、何年も話していない俺の“親”のひとり――
――夜渡橋 霜鵲 (やとばし そうじゃく)の名前だった。
続く