01:風呂場
【2-1】
「おーい 誰かいるのかー?」
丸腰は嫌だったので、俺は玄関に備え付けられていた消火器を手に武装する。
考えてみると武器としての消火器は割とアリな気がする。
そのまま鈍器としてもよし、栓を抜いて中身を噴出するもよし。
俺は消火器のホースの先を前に向け、ゆっくりゆっくりと進んでいく。
廊下を十歩ほど進むとリビングだ。
ドアガラス越しに中を見るが、荒らされた様子は全くない。
……?
おかしいなぁ……
金目当てでここを見落とすとは考えられない。
もしかして、泥棒じゃないのかもしれない。
だったらなんなんだ?
誰がどんな理由でこの家に忍び込んだんだ……?
「うーん……」
考えてみると家にいる人間は間違いなく泥棒ではない。
そもそもこの家にいる人間は侵入したのではなく、“堂々と入った”のだ。
礼儀正しく玄関から!それもカギを使って!!
この家の合鍵を持っているとしたら保護者のカトミ・ヤトバシの2者だが、彼らは男だ。
でも彼らではない。
玄関の赤ヒールと矛盾するからだ。
以上をまとめると、
謎の人物は
・合鍵を持っていることから、秋野家と深く関わりがあったと考えられる
・ヒールが置かれていたので、たぶん女のヒト
・部屋が荒らされてないから物盗りではない
リビングのドアを通り越して2階に上がる階段の手すりに触れた時だった。
――シャぁぁぁぁぁぁ……
沢山ある小さな穴から水が勢いよく流れる、シャワーの水音が聞こえる。
風呂場へ慎重にひたひたと迫る。
脱衣所の引き戸を開けて相手と扉一枚になる。
――コンコン
戸を叩く。
何も反応が返ってこない。
「開けますよー?」
目に飛び込んできたのは酷く主張の強い、そしてすごい力で目を引き付ける“色”だった。
その特性で信号機の『とまれ』に使われている。
湯船が染まっていたのだ--
--真っ赤に。
「うわっ!?」
そこでの異様な光景を前にし、たまらず風呂場を飛びだす。
物音が聞こえたんだから、風呂場に誰かいる!間違いない!!
その少女はすぐに見つかった。
俺は自分の部屋のベッドに寝転がりスマホをつついていた。
あれから俺はその人をバスタブから助け出し、リビングのソファに寝かせた。
その枕元に手紙を添えて。
コンコン!
部屋の扉が叩かれる。
彼女の目が覚めたようだ。
扉を開け、彼女とフェース・トゥ・フェースになる。
「話は1階でしよう」
「……わかったわ」
続く、