03:帰り道
【1-3】
雨も止んだことだし、そろそろ自己紹介しようかな。
俺の名前は秋野白露。
2005年の9月8日生まれ。
今日で高校二年生の16歳だ。
俺は富山県にある公立、小倉高校に通っている。
富山県はある研究によってできた施設が原因で、
信じられないほど経済が成長し、今となっては完全に都会扱いされている。
さて、本題に戻そう。
最初に家族構成だ。
現在、両親はいない。
小学生になる前に事故で死んでしまったのだ。
それ以来俺は両親の遺した大きな家で一人暮らしをしている。
研究室が家にあるのは、両親ともに研究者だったことを物語っている。
幼いころから一人暮らしをしているといっても、保護者はしっかりいる。
二人の親代わり。
両者とも両親の研究者時代の友人らしい。
一人はヤトバシ、という人だ。
常に恐ろしく多忙らしく、最近ずっと連絡していない。
最後に連絡を取ったのがいつか覚えていないくらいだ。
もう一人はこの話にすでに出てきている。
断っておくが校長ではない。
クラス担任のカトミ先生だ。
教師を務めながら俺の親になってくれている。
昨年に続き今年も担任がカトミさんというのは安心だ。
二人とも本当の親みたいに俺を大事にしてくれる、俺の大事な人だ。
これまで、両親が研究者だったり教師が親がわりだったりと結構レアなケースを言ってきたが、今から言うこれが一番レアというか"変"と言うか……
おかしな話なのだが、俺には分身能力がある、のだ。
そういうものなんだ~、と思って聞いてほしい。
家に着いた。
屋根の下に自転車をとめて、乾燥のためにレインコートをかぶせる。
さて、話の続きだが。
俺は分身能力があるのだ……
これについて簡潔に言うなれば、以下の3つだ。
・分身をつくれるようになったのは5歳頃である
・分身の数の最大値は16である(自分を含める)
・これを使って俺は金(大金)を稼いでいる
さて、家に入ろうか
ポケットから取り出したカギで開錠し、ドアを開く。
「たっだいまぁ!!」
当然何の声もこちらに帰ってこない。ここの住人は俺一人なのだから。
土間に丁寧に脱ぎそろえられた、原色に近い赤い靴があった。
もちろん俺のではない。
俺はヒールを履かないからな。
言葉を失い、棒立ちになる。
「(誰かがいる……!?)」
――そう、実際に誰かいた!!
続く