02:始業式・下
【1-2】
長きにわたる校長の話が終わる。
還暦を迎えた禿げ頭がぺこりとお辞儀し、舞台そでに消えていった。
俺は足を少しくずして、生徒会長が出てくるまで待つ。
壇上に生徒会長が現れた。
「相変わらず目立ってんなぁ…… あの人は……」
うちの高校にはカースト制のようなものがある。
スクールカーストではない。
俗にいうスクールカーストとは――
――にぎやかな者がバラモン(貴族)、そうでない者がスードラ(奴隷)となってしまい、
前者が後者に権力行使する……
というものだ。
生徒を二分しているのは確かだが、うちのはそこまで過激ではない。
小倉高校の生徒は性格などではなく、
“その生徒が会長なのか否か”で分けられる。
会長であれば、今舞台上で偉そうに話しているあの男が着ている色が与えられる。
彼の全身は薔薇のような、高級な赤で統一されているのだ。
紅い学ランで、紅ラン。
それに対して。
そうでない俺達一般生徒は、男は学ランで女はセーラー服を着ている。
その色はやはり黒。墨のように真っ黒だ。
見事会長選で勝った者は制服がオーダーメードされるのだ。
その制服は集会の時だけでなく常に着用するものだ、とされている。
このように会長とそれ以外の間にはくっきりと線が引かれているのだ。
黒サイドにいる俺からしてみれば、生徒会長という存在が嫌いである。
集会が終わり教室に戻る。
席の周りが知らない人ばかりでその場から一刻も早く退きたくなった。
もう友達を作ったのか、教室中央で大笑いしあっている奴がいる。
「まさにスードラとバラモンだな……」
去年のクラスは同じ雰囲気の人間が多く集まったせいでカーストはなかった。
だが、ああいうのがいると今年はヤバいかもしれないな。
いや。
今年の担任も奇跡的にカトミ先生だったからきっと大丈夫だ。
学校が終わり、俺はカバンを傘にして自転車小屋へ走る。
――バシャバシャッ!!
水たまりという地雷に盛大に足を踏み入れてしまった。
水で右足が少し重くなる。
「ちいっ!!」
自分ができる最大音量の舌打ちをかまし、小屋の元に到着する。
さて、レインコートもしっかり着たことだし帰るか……
ペダルに足をかけて、ママチャリのエンジンをかける。
雨のせいで目の前に透明な膜がかかるなか、校門を出る。
自転車をこいで20分たったくらいか。
太陽こそ出なかったが、雨は止んだ。
少ししっとりとした空気に包まれる。
今日の予報は雨マークがそろっていたので、覚悟はしていたが。
「いい気分だ!!」
鼻歌を歌いながらギアを5から6に上げる。
続く、